死後の世界へと続く道
絶えず死者の魂が通り過ぎていく
■クライヴ・バーカー 血の本 -BOOK OF BLOOD-■
2009年/アメリカ/101分
監督:ジョン・ハリソン
原作:クライヴ・バーカー
脚本:ジョン・ハリソン、ダリン・シルヴァーマン
製作:クライヴ・バーカー他
製作総指揮:ジョー・デイリー他
音楽:ガイ・ファーレイ
出演:
ジョナス・アームストロング(サイモン)
ソフィー・ウォード(メアリー)
ポール・ブレア
クライヴ・ラッセル
ロマーナ・アバクロンビー
サイモン・バムフォード
ジェームズ・ワトソン
■あらすじ
ヨーロッパのとある街。
超常心理学者のメアリーは、少女が惨殺され幽霊屋敷となってしまった1900年代初期の建物「トーリントンの屋敷」で霊界の存在を証明するために実験を行う。千里眼の能力を持つ男子学生サイモンを同行させるが、実験が進むうちサイモンの皮膚が避け、死者の言葉が血文字となって浮かび上がる-
『ヘル・レイザー』のクライヴ・バーカー原作、製作。
しっかりと『ヘル・レイザー』1・2の世界観を受け継いでいる。作りは80年代の映画のようにフィルムチックに見せており、CG、CGしていないところが好ましく、怖い。
『ヘル・レイザー』のテーマは「快楽の源となる苦痛、拘束と恐怖の下での道徳性」であったが、こちらの作品でも死者の世界に魅了されたメアリーのそれが主題になっている。しかし犠牲にするのは自らの肉体ではない。
モダン・ホラーの巨匠スティーヴン・キングもお気に入りというクライヴ・バーカーとは、どんな人?
クライヴ・バーカーの世界
イギリスの小説家、脚本家、映画監督。 1952年リヴァプール生まれ。
ホラーとダーク・ファンタジーの書き手として知られる。ホラー小説から始まったキャリアは初期を代表する短編集『血の本』(Books of blood)シリーズとして結実し、これによって世界幻想文学大賞と英国幻想文学大賞を受賞した。
バーカーの作品は、「私たち自身のなかにも存在するファンタジー的な世界(これについては同世代のニール・ゲイマンと共通の思想を持つ)」や「超自然的な性の役割」「複雑に絡み合った神話学の構造」などへの描写を特徴としている。
14、5歳のころ、ヒッチコックの監督作品『サイコ』とジョージ・パルの監督作品『宇宙戦争』の2本立て上映を鑑賞、ホラー小説を書きたいと考え始める。著名なホラー小説家であるラムゼイ・キャンベルの講演を聴いたことも、この思いに拍車をかけた。Wikiより
彼の広げるホラーの世界は、昨今の音や映像でびっくりさせる系ではない。
「ホラー」とは「恐怖」の意味だが、その恐怖は目や耳から入ってくる外から与えられるもの(例えば幽霊)だけでは無いことを彼は語る。
それは自身の内面にある、誰にも言えないモノをも指しており、彼の作品に触れる事によって引きずり出され、自身の中にあるそれの存在を認めざるを得ない状況になる。
それが怖いのだ。
夜中、電気が消えてしまった先にある「階段の上」や「屋根裏部屋」、「トイレ」。どうして見ずにいられないのか?どうして確認せずにはいられないのか?
注)これについてはこちらの『ヘルレイザー3 怖いもの見たさとは!?』の記事をご参照ください。
そんないらいら、じわじわと来る怖さの表現は今作でも随所に散りばめられており、ストーリーは平凡ながらも面白い作品になっている。特に物語最後に姿を現すあらゆる国の、あらゆる時代の、無言のゴースト達は、昔観た古い映画のそれのようで秀逸だ。作品途中で観るのやめようかな、とたとえ思ってもテレビを消すのはもったいない。がんばって最後まで観よう。
■主な作品_______
小説
1987
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血の本 (Books of Blood)シリーズ
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ミッドナイト・ミートトレイン
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ジャクリーン・エス
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セルロイドの息子
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ゴースト・モーテル
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マドンナ
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ラスト・ショウ
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1988
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魔道士(後にヘルバウンド・ハートと改題) –The Hellbound Heart
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死都伝説 –Cabal(The Nightbread)
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1989
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ウィーヴワールド -Weaveworld
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1991
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不滅の愛 –The Great and Secret Show
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ダムネーション・ゲーム –The Damnation Game
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1995
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イマジカ -Imajica
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2002
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アバラット -Abarat
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2003
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冷たい心の谷 –Coldheart Canyon:A Hollywood Ghost Story
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2004
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アバラット2 –Abarat Days of Magic, Nights of War
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映画
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『ヘルレイザー』シリーズ
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1987
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ヘル・レイザー -Hellraiser
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監督・脚本・原案
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1988
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ヘルレイザー2 –Hellbound: HellraiserⅡ
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製作総指揮・原案
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1992
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ヘルレイザー3 – HellraiserⅢ: Hell on Earth
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〃
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1996
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ヘルレイザー4 – Hellraiser: Bloodline
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〃
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2000
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ヘルレイザー ゲート・オブ・インフェルノ
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キャラクター原案
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2002
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ヘルレイザー リターン・オブ・ナイトメア
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〃
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2005
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ヘルレイザー ワールド・オブ・ペイン
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〃
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ヘルレイザー ヘルワールド
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〃
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2010
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ヘルレイザー レベレーション
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1973
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サロメ -Salome
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監督・脚本・原案
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1987
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アンダーワールド -Transmutations
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脚本・原案
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1990
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ミディアン -Nightbreed
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監督・脚本・原案
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1992
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キャンディマン -Candyman
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製作総指揮・原案
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1995
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ロード・オブ・イリュージョン –Lord of Illusions
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監督・脚本・原案
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1997
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クイックシルバー –Quicksilver Highway(TV)
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出演・脚本・原案
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1998
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ゴッド・アンド・モンスター –Gods and monsters
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製作総指揮
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2006
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ヘルゾンビ –The Plague
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〃
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2008
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ミッドナイト・ミート・トレイン –The Midnight Meet Train
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〃
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そんなバーカーの今回の被害者はこちら
ジョナス・アームストロング(サイモン)
たっぷり苦痛を味わわせられた彼。
そんな彼にはたして快楽はあったのか?
そして自分の世界を見つけてしまった
ソフィー・ウォード(メアリー)
それでは、たっぷりとクライヴ・バーカーの世界をご堪能ください。
![]() 死後の世界へと続く道 絶えず死者の魂が通り過ぎていく 時に死者の残虐な行為は クラック音となり生きる者の耳に入る その道には標識や交差点も存在する 交差点では死者同士が交わり 時折、この世に迷い込むのだ byメアリー |