クライヴ・バーカーの「血の本」は2009年にも映画化されていて、今回の2020年版と内容がダブるところがあるものの、本作では3章仕立てになっており少し別の物語となっている。とにかく登場するのは全て悪い奴。ラストまでに罰が当たる者もいるが、そうでは無い者も。これが所謂クライヴ・バーカーの描く世界。
■ 血の本 – Books of Blood – ■
2020年/アメリカ/107分
監督:ブラノン・ブラーガ
脚本:ブラノン・ブラーガ他
原作:クライヴ・バーカー
撮影:マイケル・ダラトーレ
音楽:ジョエル・J・リチャード他
出演:
ブリット・ロバートソン(ジェナ)
ラフィ・ガブロン(サイモン)
フリーダ・フォー・シェン
ペイジ・ターコー
■解説:
時空を超えて絡み合う3つの物語が織りなす未知の世界への旅。Disney+
- ちなみに2009年版の英題は「Book of Blood」、本作2020年版は「Books of Blood」。確かに本作には3つの物語が含まれる。
本作『血の本』もディズニープラスで配信中。すっごく楽しみにしてたんだー(‘Д’)
ではいつものように3つの物語それぞれのあらすじと感想を。ただしこれらの物語は絡み合い、ラストに収束していくつくりとなっている。
Contents
ジェナ
あらすじ
幼い時から精神的に不安定なジェナは精神科病院の入退院を繰り返していたものの大学に入学、恋人もでき楽しく暮らしていた。が、ある事件からまたしても精神的に落ち着かなくなり、持病のミソフォニア(音嫌悪症または音恐怖症)も酷くなって、母親に強制入院を迫られる寸前に。慌てて家を飛び出した彼女はロサンジェルスに向かう途中でバスを降り、ある一軒の民宿に立ち寄る ─
見どころと感想
このジェナの物語が一番長い。
精神的に不安定、母親からは薬を飲め、薬と散々言われている、咀嚼音が苦手な持病もある彼女が家を飛び出してからは、(持病は仕方ないとしても)他人と会話して他の街に移動、急に降りたバスからの宿泊先を見つけて宿を確保、宿の主人夫婦や同年代の男子大学生とのやり取りなど、案外普通に出来ているところにちょっと違和感が。そのうえ彼女はずっとつけらているような気がする男や、この民宿での出来事に対処してうまく生き延びていく。
この「ジェナ」のもう一つの主人公は民宿を経営している老夫婦。見かけは若者に親切な宿の主人だが、それだけで済まないのは分かっている。そしてジェナ本人も割とおしゃべりなくせに最後まで言葉を濁す大学で起きたらしい「ある事件」。ここにジェナの本当の姿が隠れているのは間違いない。
マイルス
あらすじ
幼い息子を白血病で亡くしたばかりの超常心理学者のメアリーは、自らを死者と交信できる霊媒者だというサイモンと知り合い、その力を目の前で見せつけられる。彼とその現象の研究のため資金を集め始めたメアリーだったが、恋人となったサイモンの浮気現場に遭遇、彼の本当の姿を知ることに ─
見どころと感想
マイルスとはわずか7才で亡くなったメアリーの息子の名前。悲しみに打ちひしがれ仕事に専念しようとしていたメアリーの前に現れたサイモン。そして実験で見せつけられた彼がいう自分の天命とは、「死者の言葉を代弁する」力だった。
このお話は2009年版『クライヴ・バーカー 血の本』とベースが同じではあるのだが、2009年版には“悪い奴”は出てこなかったと思う(観たのがだいぶん前でちょっと忘れている…(-.-)。だが今回は悪い奴だらけ。というより悪い奴しか出てこない。ということはサイモンは?メアリーは?となるのだけれど、それを書いては面白くないのでここでは伏せておきますね。
ただ、やっぱりバチって当たるもんですね。このお話の途中からラストにかけては2009年版『クライヴ・バーカー 血の本』と、同じくクライヴ・バーカー原作『ヘル・レイザー』のようなお話に変わっていきますから。と言ってもご本人たちは楽しそうだけど。
ベネット
あらすじ
組織の仕事の関りで図書館員から金になる本があると聞きつけたベネット(右)とその相棒は、早速その本を所蔵する者が住んでいる、ある住所へと車を走らせる。だがそこに着くまでに奇妙な出来事に怖がらせられたあげく、ようやくたどり着いた住所に住む本の持ち主は「これがその本だ」と到底理解できないことを話し出し ─
見どころと感想
見どころというか、このベネットこそ本作初っ端に図書館員を散々怖がらせたあげく、命と引き換えに金になる情報をもらったあの男の片割れだ。その本のタイトル「血の本」の意味を考えもせず、ただひたすら金のために脅して奪おうと車を走らせた結果が、この話の結末だ。というより唯一こういった結末を迎える図書館員と悪党の二人はただのその他大勢(というほどいないが)の一人でしかなく、彼らの仕事は「血の本」の存在を知らしめただけにすぎない。
「血の本」の存在を証明したのはメアリーとマイルス、サイモンであり、やはり彼らが「血の本」の中心人物。2009年版に通じるところだ。ジェナや老夫婦もたくさん活躍したものの、「血の本」周りに出没する悪役でしかない(かなり悪魔めいてはいるが)。
じゃあ「血の本」って?本作ラストに説明されるけど こんなもんじゃない。
物語を伝えたがっている死者の言葉を代弁する。
最初にサイモンが言っていたが、その代弁方法がクライヴ・バーカーらしく“痛い”のだ。サイモンの周りには有象無象の死者が現れる。残念ながらこの場面は2009年版の方が断然いい(怖いという意味で)。ぜひ2009年版も観てほしい。
ラストのジェナの行為について
あれは自分のやったことへの贖罪とみた。事故で死にかけ失くした記憶が正しく戻ってきたことで、精神的な病気があるからとそれに逃げずに自分のやったことに真っ直ぐ立ち向かった結果だろうと。ある意味、民宿の老夫婦は彼らが言っていたようにジェナ(-“-)を幸福に導いたと言える。
ま、犯罪は彼氏の父親ともども有耶無耶になりましたがね(-“-)
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