てっきり男女若者グループが地方のキャンプ場で次々に襲われる系のよくあるホラーだとばっかり思ってた『キャンディマン』。そういえば本作前日譚となる1992年の『キャンディマン』は観たことなかったわ…。
■ キャンディマン – Candyman – ■
2021年/アメリカ/91分
監督:ニア・ダコスタ
脚本:ジョーダン・ピール他
原作:バーナード・ローズ「キャンディマン」
クライヴ・バーカー「禁じられた場所」
製作:イアン・クーパー他
制作総指揮:デヴィッド・カーン他
撮影:ジョン・ガレセリアン
音楽:ロバート・アイキ・オーブリー・ロウ
出演:
ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世(アンソニー)
テヨナ・パリス(ブリアナ)
ネイサン・スチュワート=ジャレット(トロイ)
コールマン・ドミンゴ(ウィリアム)
カイル・カミンスキー(グレイディ)
レベッカ・スペンス(フィンリー)
マイケル・ハーグローヴ(シャーマン・フィールズ/キャンディマン)
ヴァネッサ・ウィリアムズ(アン=マリー・マッコイ)
ヴァージニア・マドセン(ヘレン・ライル声)
トニー・トッド(ダニエル・ロビテイル/キャンディマン)
■解説:
1992年に公開された同名の映画の精神的続編であり、『キャンディマン2』(1995年)、『キャンディマン3(英語版)』(1999年)に続く「キャンディマン」映画シリーズ(英語版)の第4作目。Wikipedia
よくあるホラーのリメイクだとばっかり思ってたから、前作『キャンディマン』1作目を観てなくて失敗したー(-“-)
というのも本作冒頭に「キャンディマン」って何?みたいな話を交えてトロイ(主人公アンソニーの彼女の弟)がきちんと怪談話で説明してはくれる。けれど、まさかその話に出てくるヘレン・ライルが1作目の主人公だったとは…。
Contents
2021年『キャンディマン』あらすじ
シカゴ、カブリーニ・グリーン地区。公営の集合住宅が立ち並ぶこの地域には、昔から鏡に向かってその名を5回唱えると、かぎ爪の殺人鬼キャンディマンが現れて殺されるという都市伝説が囁かれていた。その公営住宅も取り壊され、高層マンション街になりつつあるこの地域に、画家アンソニーと恋人ブリアナが越してきた。創作に行き詰っていたアンソニーは、ある時、昔の集合住宅に住んでいたという老人に出会いキャンディマンが実在していたことを知る。そしてキャンディマンについて調べるうち、しだいにキャンディマンの世界に囚われ、現実と怪談の境が曖昧になっていくのだった ─
見どころと感想
このあらすじだけだと、まだまだ普通の殺人鬼ホラーみたいだね。
どうせ、5回唱えて呼び出しちゃうんだよねー、みたいに思ってるでしょ。ま、それもあるんだけど、本作は主な登場人物は全員黒人の人で、なんと珍しくも殺人鬼キャンディマンも黒人。『キャンディマン』について全く知らなかったから、今流行りのアレか~なんて思いながら観ていた。まさか、こんな方向にいくなんて思いもせず ─
都市伝説キャンディマン
鏡に向かってその名を5回唱えると、どこからともなく現れた殺人鬼キャンディマンに、そのかぎ爪で殺されるというもの。キャンディマンはシャーマン・フィールズという名で実在した。右腕の先がかぎ爪ではあったが近所の子どもたちに飴をあげるだけのカブリーニ・グリーン地区に住む普通の男性だった。だがある時、殺人事件の犯人と間違われて警官に射殺されてしまう。冤罪であったために、復讐鬼となり蘇えるという都市伝説が生まれたのだった。
1992年のキャンディマン
キャンディマン伝説は他にもある。それが1作目『キャンディマン』だ。
主人公は都市伝説を研究する学生ヘレン・ライル。その彼女が研究対象に選んだのがキャンディマンだった。20件以上も起きているカブリーニ・グリーン地区の殺人事件は彼によるものだと地域の住人たちは恐れていた。ヘレンがキャンディマンについて調べていくうち、19世紀に生きた黒人の画家に行き当たる。
キャンディマンは奴隷の息子として1800年代後半に生まれ、長じて裕福な白人の肖像画を手掛ける高名な人気画家となった。だが、そうした白人家庭の娘と恋に落ち、子どもをもうけると、娘の父親は彼を私刑にしようと群衆を仕向けた。群衆は彼を捕えるや、右手を切り落とし、養蜂場から持ち出した蜂の巣を塗りつけたので、集まった大量の蜂に刺されて死亡した。その亡骸は薪の山で焼かれ、遺灰はのちにカブリニ・グリーン住宅が建つことになる土地に撒き散らされた。
Wikipedia
ヘレンさえもキャンディマンに襲われ、集合住宅に住む地域の女性アン=マリーの幼い息子がキャンディマンに攫われる。ヘレンは息子を助けるためかがり火に向かい、息子を母親の手に渡した後、キャンディマンと共に焼死した。
2019年のキャンディマン
いくつもあるキャンディマンの伝説。
ただのキャンプ場ホラーとは全く違って、キャンディマンたちは皆、黒人男性だ。そして皆、人種差別を受け、いわれのない罪をでっち上げられ、無惨に殺され捨て置かれた。19世紀の、画家だった恐らく最初のキャンディマンは大事な右腕を切り落とされ、かぎ爪を差し込まれ、蜂に刺されながら死んでいった。だから21世紀の今も、キャンディマンは蜂と共に現れる。
本作の主人公アンソニーは画家であり、黒人だ。そして調べに行った今は立ち入り禁止になっている集合住宅の地区で蜂に右手を刺される。右手はひどく腫れ上がり徐々に顔まで広がっていく。そして次第に腫れている箇所はまるで火傷の跡ケロイドのようになっていき、その頃には、アンソニーはアンソニーでなくなっている。
ラスト(ネタバレあり)
キャンディマンを受け継いだアンソニー。もはや彼は人ではなく復讐鬼キャンディマンだ。5回唱えられた名前と共に現れ、人を殺す。もはや対象は全ての人間だ。ただ一人の伝承者を除いて ─
私は不吉なる前兆
道に流された甘美な血の香り
路地に響き渡るハチの音
私が罪なき者を殺すと人は言う
お前は無実とは程遠いが裁かれない
それが問題だ
原作者:クライヴ・バーカー
イギリスの小説家、脚本家、映画監督であるクライヴ・バーカーは、あの『ヘルレイザー』の生みの親でもある。本作『キャンディマン』は「禁じられた場所」(「Books of Blood」に収録されている「The Forbidden」)を映画化したものだ。
「血の本 – Books of Blood」シリーズでは他にも映画化されているものがあり、いずれもクライヴ・バーカーが関わっており独特の世界観が繰り広げられている。詳しくは下記『クライヴ・バーカー 血の本』で。
『クライヴ・バーカー 血の本』(2009) - BOOK OF BLOOD –
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