『ミッドナイト・ミート・トレイン』(2008) - The Midnight Meat Train –

乗ったら最後。絶対に降りられない。生きたままでは…

The Midnight Meat Train_11

The Midnight Meat Train_2008
■ミッドナイト・ミート・トレイン - The Midnight Meat Train -■
2008年/アメリカ/100分
監督:北村 龍平
脚本:ジェフ・ブーラー
原作:クライヴ・バーカー
「ミッドナイト・ミート・トレイン」
製作:クライヴ・バーカー 他
製作総指揮:ジョー・デイリー 他
音楽:ヨハネス・コビルケ 他
撮影:ジョナサン・セラ

出演
ブラッドリー・クーパー(レオン)
ヴィニー・ジョーンズ(マホガニー)
レスリー・ビブ(マヤ)
トニー・カラン(運転士)
ブルック・シールズ(画商スーザン・ホフ)
ロジャー・バート(ジャーギス)
バーバラ・イヴ・ハリス(リン・ハドレー刑事)
ピーター・ジェイコブソン(オットー)
テッド・ライミ
クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン

解説:
『ゴジラ FINAL WARS』『あずみ』『VERSUS ヴァーサス』で、その比類なき才能を見せつけ、日本国内外で高い評価を受けてきた北村龍平監督が、クライヴ・バーカーの原作で、鮮烈なハリウッドデビューを飾る!
 (amazon)

あらすじ:
The Midnight Meat Train_04ニューヨークに恋人と住む写真家レオン。
ある晩、チンピラに絡まれていた女性を助けたが、翌日の新聞でその女性が行方不明になっていることを知る。その晩撮った写真を確認して怪しい男が写っているのに気づいた彼は、恋人マヤの止めるのも聞かず、取り付かれたように男を追跡する-

クライヴ・バーカー原作「ミッドナイト・ミート・トレイン」を日本人監督が映画化。
クライヴ・バーカー独特の、じめっとした泥臭さが無いなぁ、珍しいと思って調べてみると、脚本改稿過程で北村監督とかなり意見の相違があってやり合ったらしい。結局は北村監督が意見を押し通した形になったということで、本作はクライヴ・バーカー原作ベース、北村龍平監督の『ミッドナイト・ミート・トレイン』となります。

クライヴ・バーカーについてはこちらの記事を『クライヴ・バーカー 血の本


The Midnight Meat Train_09レオンはニューヨークの街を被写体に、人に訴えかける何かを模索している、まだ芽の出る前のカメラマン。小さなアパートで理解のある恋人マヤと暮らしており、スクープ写真などを雑誌社に売りながら生活している。
共通の友人であるジャーギスに画商を紹介してもらい、もっと人に訴えかける唯一無二の写真が欲しいと言われたレオンは、その夜、被写体を探しに夜の街に一人出た。そしてたまたま、地下鉄へと延びる階段で、チンピラに絡まれて困っていた女性を助けたのである。礼を言い、地下鉄へと消えた女性。しかし翌日の新聞には、そのモデルである女性が行方不明になったと報じられていた。
あのチンピラ達が犯人ではないかと警察に通報するも相手にされず、自宅に戻ったレオンは撮影した写真を調べ、地下鉄に乗り込む女性と一緒に写っている一人の怪しい男を見つける。
この地下鉄では昔から人が消えるという都市伝説があった。

The Midnight Meat Train_13以上のように、話は一人のカメラマンが巻き込まれるサスペンスとして進行していくが、同時にこの都市伝説の実体が、これでもかと映像にされ、この作品がホラーであったことを思い知らされる(それもゴア)。
レオンとマヤのアパートや、マヤの勤め先であるレストランがとても暖かみのある内装であるのに対し、怪しい男マホガニーが勤める食肉解体工場や、殺戮が行われる地下鉄の様子は、ライトに光る冷たいメタルの質感で非常に対照的だ。
マホガニーがどうして次々と人を惨殺していくのかは、まだレオンには分からない。人の少ない深夜の地下鉄を選び乗り込むマホガニー。犠牲者はたまたま乗り合わせた乗客だ。いきなり近づいたかと思うと重量感のあるハンマーで力任せに滅多打ちにして殺戮していく様子は圧巻。
自分で自分を守ることが出来ない都会人に同情を禁じ得ない…。
メタルな車内に飛び散り、流れ出す血は、まるで生きている物質のようで、北村監督を血液の魔術師と呼ぼうと思う。

The Midnight Meat Train_19他にも、食肉解体工場の肉がたくさん吊り下げられている大きな冷蔵室の中での、息をつかせぬかくれんぼや、マホガニーが乗り込む電車を上品に座ってホームで待つシーンなど目を見張るものがある。
そして、思わずのけぞるのが、タイトルにもなっているミッドナイト・ミート・トレイン。直訳するなら、真夜中の食肉列車
あぁー、そのままだ。この画像はあえて載せませぬ。本作を観た人だけがこれを観るのを許される(ことにしよう)。

警察に任せておけばよかったのに、ついついこの怪しい男を尾行し、その隠されたものを発見してしまったレオン。恋人や友人まで巻き込んでミッドナイト・ミート・トレインの洗礼を受けることになる。さぁ、彼は、彼らは助かるのか!?そしてこの男マホガニーはどうして地下鉄で殺戮を犯しているのか
どうしてバレないの!?誰が掃除を!?そして遺体はどこに!?

 icon-film 監督 北村龍平
DGA(全米映画TV監督組合)に所属する日本人映画監督。大阪府生まれ。
現在はロサンゼルスに在住。
大阪の高校中退後、17歳でオーストラリアへ渡り、スクール・ オブ・ビジュアル・アーツ映画科に入学。卒業制作の短編映画『EXIT -イグジット-』が高い評価を受け、年間最優秀監督賞を受賞する。
自主制作映画『DOWN TO HELL』が第1回インディーズムービー・フェスティバルでグランプリを受賞し、渡部篤郎主演で『ヒート・アフター・ダーク』を製作し監督デビューする。
『VERSUS -ヴァーサス-』でローマ国際ファンタスティック映画祭監督賞、『荒神』でブリュッセル国際ファンタスティック映画祭監督賞、『あずみ』でフィラデルフィア国際映画祭観客賞を受賞。

本作は製作時に原作者クライブ・バーカーともめたという以外にも、完成後(2007年11月)、配給会社ライオンズゲートの事情か何かで公開時にもケチが付き、一時はDVDスルー作品となるところだった。それをクライブ・バーカー自身による後押し等の力でようやく2008年8月1日に全米102館で限定公開。製作費1,500万ドルに対し、総興収73,548ドルの結果に終わっている。日本でも未公開だ。
自分としては、クライブ・バーカーらしさが抜けているとしても、かなり完成度が高い作品と思っているので、どうしてこうなったのか不思議でならない。


大人の事情はさておき、
歯を抜き、爪を剥がし、目玉を取り出し、髪を剃る徹底した解体ぶりと、「あー、どうしてそうするかな!?」というホラーに必ず必要な残念なシーンがきっちり納められている本作。
日本人監督のスタイリッシュなゴアホラーを是非、お楽しみ下さい。

The Midnight Meat Train_14

30秒で読めるお気楽レビューはこちらfacebookで
Momoな毎日 | Facebookページも宣伝

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

コメント

コメント一覧 (4件)

  • かなぶんさま
    コメントありがとうございます。
     
    やっぱり原作があるものは、大体が映画より原作の方が勝ちっという感じが多いですねー。
    特にホラーは一人で想像しながら読むのがいいのでしょうか。
    この原作は私は読んでいなかったので、単純に楽しめました。
    しかし、かなぶんさん。中学生自分にクライブ・バーカーですか[絵文字:e-451]
    なかなかなお子様時代ですね(笑

  •  momorex様
     初めてコメントします、かなぶんです。
     
     中学の時に原作は既に読んでいたんですが、映画の方は「よくも悪くも北村臭が強いな~」という印象でした[絵文字:i-229]無意味に派手なカメラワークと言い…。ラストのインパクトは、個人的には原作の方がやっぱり上ですかね~。
     
     関係ないけど、この前のブラジルフェスで、肉の塊が串刺しになっているのを見て、本作を思い出した…というのは嘘です(笑)
     
     また遊びに来ます!

  • こんばんは。早々にコメントをありがとうございます。
    レーザー・ディスク!私は持っていないのですが、まだ(すみません)売っているんですねー。それも貴重な作品が。
    『ミディアン』調べました。観ることは、かないそうもないですね..。残念です。
    私にとってホラーは一服の清涼剤なので、まだまだどんなホラーも見逃せません。
    (変わってるってよく言われます)

  • こんばんは、また遊びに来ました。
    1年ぐらい前に見たかなぁ。
    日本人監督がアメリカでホラーを撮ったらこんな感じ、良い意味でも悪い意味でも丁寧だなぁ、と言うのが印象的でした。
    原作は、30年ぐらい前に読みました。
    こっちは衝撃的でした。
    当時、キングにハマっていたんですが、この短編は凄かったです。
    それから、監督業にも乗り出して、『ヘル・レイザー』はもちろん、DVDになっていない『ミディアン』と言う不思議ホラーも、レーザー・ディスクで、ついこの間買い足しました。(¥500!)
    最近は、スプラッター切り株系はあまり見ないようになって来ました。
    ま、歳を取った、と言う事なんでしょうね。

Contents