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2014年ゴールデンウィークの一番のお楽しみはこれ!ジェニファー・リンチ監督作『チェインド』。2008年の『サベイランス』も最後のどんでん返しが面白かったけれど、ドノフリオ主演のこちらも負けてない。が、また一歩、普通のサスペンスもの映画に近付いてしまった印象(リンチ好きの自分的には悪い意味)。

■チェインド - Chained -■

Chained

2012年/カナダ/94分
監督:ジェニファー・リンチ
脚本:ダミアン・オドネル、ジェニファー・リンチ
製作:デヴィッド・ビューロウ 他
撮影:シェーン・デイリー
音楽:クライマックス・ゴールデン・ツインズ

出演:
ヴィンセント・ドノフリオ(ボブ)
エイモン・ファーレン(ラビット)
エヴァン・バード(ティム)
ジーナ・フィリップス(マリエ)
ジェイク・ウェバー(ブラッド)
ジュリア・オーモンド(サラ)
コナー・レスリー(アンジー)


解説:
「ボクシング・ヘレナ」「サベイランス」のジェニファー・リンチ監督が贈る猟奇スリラー。タクシードライバーの連続殺人鬼に母を殺され、監禁飼育される少年を待ち受ける衝撃の運命を描く。出演は殺人鬼役にヴィンセント・ドノフリオ、彼に監禁され育った青年にエイモン・ファーレン。〈未体験ゾーンの映画たち 2014〉にて上映。
(allcinema)

あらすじ:
映画館の帰りに乗ったタクシーで拉致され、母親を惨殺された9歳の少年ティム。彼はそのまま犯人の自宅に監禁され、奴隷のような状態で成長する。その間にも犯人ボブは女性を連れてきては惨殺、遺体を地下に埋めることを続けるが ―


女性を拉致してきては自宅で暴行、惨殺。家の地下には石灰を振って埋められた被害者達の墓が墓地のように並ぶ・・。彼女たちの持ち物は綺麗に整理され、処分され、IDカードが小さな木の箱に収められる。後日、新聞に掲載された行方不明者の記事までスクラップ。全てが記憶と共に記録される。
連続殺人鬼はタクシー運転手ボブ。

Chained

被害者は彼の御眼鏡に適った普通の女子大生やバーの客。タクシーに乗せた客をそのまま拉致する場合もある。自宅は野中の一軒家で出入りはガレージから。窓には鉄板が貼られ、中からはドアがどこかさえ分からない。一人暮らしの彼は堂々と女性を連れ込み、彼女らの叫び声は誰にも気付かれない。

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ある日、ここに連れてこられてしまった母親サラと息子ティム9歳。ガレージに入れられたタクシーに閉じ込められたティムは母親が家の中に連れて行かれるのを泣きながら見送った。次に姿を現したボブは血だらけで、母親に何が起きたか分かってしまうティムと観ている者..。それに追い討ちをかけるように「母親とは会えない。二度と」と宣告するボブ。
ティムは殺されずにすんだ。が、彼はこの後9年間、家の外に出られなくなる。ボブはこうも彼に伝えた。
「これからは、俺とお前と死体だけだ」

この非情な殺人鬼が何故、手間のかかる少年を殺さずに手元に置いたのか?
木箱のIDカードはゆうに15枚は超えている。小さな少年など簡単に命を絶てたはず。家の掃除をして欲しかった?食事を作って欲しかった?逃げ出すリスクを抱えても必要だったとは思えない。現に、ボブに“ラビット”と名付けられた少年は一度逃げ出しかけた。屋根の上で右往左往している彼を、全てお見通しだと言わんばかりのボブは、石を投げつけながらこう言う。

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「やってみろよ。根性を見せてみろ。じゃないと死ぬまでこの家の中だぞ」
ボブの言葉は冷たく響く。
この事から足を長い鎖で繋がれたラビット。家の用事と死体の後始末が彼の仕事となる。そして9年が経つ。

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この9年の間に少しずつ積み重ねられ出来上がる二人の関係が説明される。同時に、連続殺人鬼となったボブの過去がフラッシュバックとなって彼を苦しめる。彼は常に苦しめられている。親から受けた虐待に。

9年経った頃にはラビットはボブにこんな事を尋ねられるような関係にもなっていた。
「どうして、こんな生き方を選んだの?」
「俺が選んだんじゃない。女どもが俺にやらせるんだ!」
ボブの過去やこんな言葉から、何故彼がラビットを生かしたのか、その理由が垣間見えてくる。ボブにとって“少年”は彼の憎しみの対象では無かった。ボブはラビットの父親であるかのような錯覚さえ覚えていた。

だが、これらは全てボブ一人の自己中心的な理屈だ。“ティム”には何の関係もない。母親を殺され、父親と離されて鎖に繋がれている。ティムはこれらを受け入れる事が出来るのだろうか。被害者の墓に遺品をそっと置くような彼に。

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この後、どうなるのか。
よくある結末であれば、ティムはボブを殺して外に出る。またはボブの後継者になる。けれどもこの作品はそう単純じゃ無かった。そして本当の結末は、エンドロールに乗せて「音」だけで説明される。ドアを開け閉めする音。歩き回る音。ガレージを開ける音・・。
本当の結末は想像するしかない。

――ヒントは“血”だ。
〈未体験ゾーンの映画たち 2014〉上映された作品一覧
『アタック・オブ・ザ・50フィート・チアリーダー』 (Attack of the 50 ft Cheerleader)
『アウトロー』 (Black’s Game)
『アウトレイジ・ギャング』 (BLOOD OF REDEMPTION)
『チェインド』 (CHAINED)
スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』 (CONTRACTED)
『悪魔の秘め事』 (DEVIL YOU KNOW)
ザ・ドア 交差する世界』 (THE DOOR)
『母なる復讐』 (DON’T CRY MOMMY)
『ガンズ・アンド・ストレンジャー』 (EL GRINGO)
『ガンズ・アンド・ギャンブラー』 (GUNS,GIRLS&GAMBLING)
ハウンター』 (HAUNTER)
『デスリベンジ ラストミッション』 (In the Name of the King III)
『アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ2』 (I SPIT ON YOUR GRAVE 2)
『ブロークン・アイデンティティ』 (THE LAST DEATH)
MUD -マッド-』 (MUD)
パイオニア』 (Pioneer/Pionér)
『サファリ』 (Safari)
フィンランド式残酷ショッピング・ツアー』 (Shopping Tour)
スキンウォーカー・プロジェクト』 (SKINWALKER RANCH)
『ミッドナイトチェイス』 (TAPED)
『N.Y.結婚狂騒曲』 (The Accidental Husband)
『ザ・ハリウッド』 (THE CANYONS)
『ポール・ヴァーホーヴェン/トリック』 (Tricked)
『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』 (White Tiger (Belyy tigr))
『ミスティック・アイズ』 (Wreckers)
『最強ゾンビ・ハンター』 (Zombie Hunter)
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