スペインの狂気ピエロ作品と言えば『気狂いピエロの決闘(2010)』。その同じ監督が今度はイタリアを舞台にピエロの狂気を描いたと聞いてぜひ観てみたい!と思っていた本作『ベネシアフレニア』(ベネチアの狂気みたいな意味)。さぁ、どうだったでしょうか(‘ω’)

■ ベネシアフレニア  – Veneciafrenia – ■

Veneciafrenia

2021年制作/スペイン/99分
監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
脚本:ホルヘ・ゲリカエチェバリア他
製作:カロリーナ・バング他
製作総指揮:カロリーナ・バング他
撮影:パブロ・ロッソ
音楽:ロケ・バニョス

出演:
イングリッド・ガルシア・ヨンソン
シルビア・アロンソ
ゴイセ・ブランコ
ニコラス・イロロ
アルベルト・バング
コジモ・ファスコ
エンリコ・ロー・ベルソ
カテリーナ・ムリーノ
アルマンド・デ・ラッツァ
ニコ・ロメロ

■解説:
「気狂いピエロの決闘」で第67回ベネチア国際映画祭の監督賞・脚本賞を受賞したスペインの鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシアが、近年社会問題化している「オーバーツーリズム」を背景に連続殺人鬼が引き起こす惨劇を、イタリアのジャーロ(ジャッロ)映画へのオマージュを散りばめながら描いたホラー映画。

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Contents

あらすじ

結婚を間近に控えたイサを含む男女5人のスペイン人グループが、年に一度のお祭りカーニヴァルに沸くイタリア・ベネツィアを訪れる。ホテルに荷物を置きカーニヴァル衣装に身を包んだ一行は、さっそく街に繰り出し羽目を外して異国の地を楽しんでいく。
だが立ち寄った一軒の酒場でペスト医師に扮した見知らぬ男に秘密のパーティーに誘われたことから、彼らは不気味な事件に巻き込まれることに ─

Veneciafrenia

見どころと感想

登場グループは一組のカップルを含む男性2人、女性3人の5人(やはりなぜか奇数)。アメリカ映画なら10代の若者グループなことが多いが、ヨーロッパホラーでは20代も後半くらいの落ち着いているはずの年代が主人公。その中でも考え方がまじめで結婚も間近なイサが中心人物となる。

ここまではよくあるホラーの冒頭部分なのだけど、時々挟まる街の人々の観光客を見る目つきのうさん臭さ。あ~これはベネチアという大きな街でありながらも、街そのものがいかんやつの類かな?でもあんな目つきで見られても仕方ない素行の悪さな主人公たち。でもだからと言って何をされてもいいわけじゃない。いったいこれからどうなっていくのか?

と興味津々に観ていっていたのだが、早々にピエロさんにはがっかりさせられ、続くペスト医師のうんちくには共感できず、仕事できる風の警部さんには??が飛び交い、ずっと一緒の船長さんの意味がいまいちわからず。その割にというか、だからこそなのか、どんくさい弟にうんざりし、ちゃらちゃら男はあまりその人となりがわからないままエライ目にあい、やかましいお姉さんAはやはりやかましく…

こんなうんざりの間にはさまる見どころは、ゴシックなルネサンス様式風衣装や化粧。もともとピエロが好きというのもあるしベネツィアを闊歩するゴシックな人々には目を奪われる。ゴシックにあまり興味のない人はそういった見どころさえないかもだけど…

早々に詰まんないやつになり果てる今回のピエロさんはルネサンス宮廷道化師風で想像するピエロよりもっとおどろおどろしく重厚な感じで怖い。
けれどピエロの仕事は周囲の人を楽しませることであり、目上の人間にも無礼な振る舞いが許された唯一の存在。こういった多重的な面を持つピエロだからこそ秘密のある、何を考えているのかわからない、なぜか恐怖心をあおってくる存在でもあり、嫌いな人も多いのではないかな。

ちなみに赤い丸鼻にだぶだぶの白い衣装のピエロはアメリカ映画によく出てくるけれど、あれは17世紀後半のフランスが起源らしい。

court-jester

さて、ピエロホラーを観始めたはずなのに血まみれになりながらも、なぜか社会派サスペンスになっていく本作。主題は他所の国にきて騒ぐだけ騒いで街を汚していく観光客に対する不満と、そうやって観光客を呼んで外貨を稼いで街を維持していくしかない政治のやり方への不服を描いていく。記事冒頭で「さぁ、どうだったでしょうか?」って来た場合、だいたいはいまいち(-.-)な感想が多いこのブログだけど、これで本作の雰囲気はおおよそわかっていただけたでしょうか(‘ω’)

ベネチア、ピエロ、連続殺人…で思い出したのは『赤い影』(1973)やずばり本作監督作『気狂いピエロの決闘』(2010)。この2作はいろんな意味で怖くておすすめです。

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