女子なら誰でも祈りに近い「痩せたい」という思い。スペインの女の子サラに自身を置き換え身につまされる思いに苦しくなる人も多いのでは。今回のこのお話はそんな世界中のサラに訴えかけると同時にサラの周囲にいるその他の女子にも警告する物語。思い当たる人はぜひ観てみて(‘Д’)
■ PIGGY ピギー ■
– CERDITA –
2022年/スペイン/99分
監督:カルロタ・ペレダ
脚本:カルロタ・ペレダ
原作:
原案:
製作:メリー・コロメル
製作総指揮:ピラール・ベニト
撮影:リタ・ノリエガ
音楽:オリビエ・アルソン
出演:
- ラウラ・ガラン(サラ)
- カルメン・マチ(サラの母)
- リチャード・ホームズ
- イレーネ・フェレイロ
- カミーユ・アギラル
- ピラール・カストロ
- クラウディア・サラス
■解説:
テレビ業界でキャリアを積んだカルロタ・ペレダ監督が、ゴヤ賞を受賞した2018年制作の短編映画「Cerdita」を自らのメガホンで長編映画化した。「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」のラウラ・ガランが主人公サラを演じ、ゴヤ賞で最優秀新人女優賞を受賞。映画.com
Contents
あらすじ
スペインの田舎町に暮らす女子高生サラ。身体が大きいことでクラスメイトから虐められ悩んでいるが、家族を含めその悩みを分かり助けてくれる人はいない。ある夏の暑い日、近所のプールに一人で出かけたサラは虐めっこ女子グループに鉢合わせ、いつもよりひどい執拗な虐めに合うが、それを黙って見ている不気味な謎の男がいた ─
見どころと感想
両親ともにふくよかな肉屋の娘。
それだけで弄られキャラになるのは必然と言える…(-.-) それでもここが都会なら個性だ、多様性だとなってここまで虐められることはなかっただろう。でも悲しいことにサラの住む田舎町には若者が時間をつぶす楽しみが究極的に少ない。絶対的に少ない。ほとんど無いといっても過言ではない。で彼らの時間潰しの一つとして、自分よりも弱いものを虐める=弱い者イジメが横行する。サラも当然その被害者に。
にしても、近所に住み幼い頃は仲良かった友達だったのに、彼女らの虐めは執拗でえげつない。やっていいことと悪いことがまるで分っていない。けれど観ているこちらからしたら、あか抜けない田舎の女の子たちが、よりあか抜けない子を虐めているに過ぎなく見えてしまうのだが… 特にイジメグループのリーダー格には彼氏もいなくて面白くない毎日に苛立って八つ当たりしているようにしか見えない。
イジメターゲットのサラはというと、やはり面白くない毎日にイジメが重なりストレスマックス。分かってくれる人はなく、相談する友達も家族もいない。それらを一時でも忘れるために大好きな甘いおやつを食べるしかなく全てが悪循環。
田舎町に暮らす彼らはイジメの加害者、被害者に関わらず、あまり大きな差はなくてとにかく毎日に退屈して苛立っているのだ。
そんな田舎町のプールに“死体”が出る。
ここから物語の方向性は大きく変わっていく。
この事件により強かったらしい者は悪事が暴かれ弱い立場に。踏みにじられていた者には理解者が現れ強い立場に取って代わる。人は大きく転機が訪れた時にこそ本来の人間性がにじみ出てくる。サラにとって今までの屈辱に対する復讐に必要なものは「自分にとって味方かどうか」の存在のみ。あれこれ考えることはない。リベンジに突き進め、と考えるのは観ているこちらも同じなのだが、本作の作り手は上手に彼女らの親を使ってくる。
今まで知らなかったけど、これからは力になるよとサラの母親。いじめっ子であってもその娘を心配する母親がいるんだよ、と警察におしかける親たち。
特にうまいのはラスト近くの銃の使い方。そしてラストのバイクまで続くサラの表情だ。自分で考え、どうするかの道を選択したサラだからこそのラストがある。「つかまって」と言われたが、心地よい風の中で人につかまらなくても生きていける自信のようなものが彼女には満ち溢れている。他の娘たちとは180度違ったラストとなった。
多くの殺人とホラーじみた内容で進んできた本作をここまで観て感じたのは「サラのある夏の日」というような、どこかほっこりしたもの。
きっとそれは間違っていると思うけれど ─
このブログのスパニッシュ・ホラー
割と過激なものが多いスペイン産ホラー。お話が凝ったものも多く気に入っている。