「これを観たら死ぬ」系作品にしては、全く怖くはないのだけど割と面白かったかもしれない。雰囲気は70年代作品という程なので当時の色々な雰囲気映画のテイストが盛り込まれている。それが気に入った理由なのかも。全体的にネタバレてます。
■ 『アントラム 史上最も呪われた映画』
– Antrum: The Deadliest Film Ever Made – ■
2018年/カナダ/94分
監督:マイケル・ライシーニ、デビッド・アミト
脚本:デビッド・アミト
原作:デビッド・アミト、マイケル・ライシーニ
製作:マイケル・ライシーニ、デビッド・アミト
製作総指揮:エリック・サーティーン他
撮影:マクシミリアン・ミルチャルチク
音楽:アリシア・フリッカー
出演:
ニコール・トンプキン(オラリー)
ローワン・スミス(ネイサン)
サーカス=サレフスキ
ダン・イストラーテ
シュウ・サキモト
クリステル・エリング
■解説:
40年近く封印されてきたという呪われた映画にかかわった人々の顛末を描いたホラー。映画.com
Contents
■あらすじ:
70年代にアメリカで制作されたホラー映画『アントラム』は“観たら死ぬ”“呪われる”などの噂が立ち、なかなか上映されなかったものの1988年にハンガリー、ブタペストのある映画館で上映。だが映画が始まってすぐに映画館の建物から出火、56名が亡くなる大惨事となった。その後、各種映画祭に出品されたが、作品を観た映画祭関係者に不審な死亡者が複数出たため1993年の上映を最後にフィルムは紛失したはずだった。
だが、この作品に興味のある者がオークションに出ていたフィルムを発見、落札。これの何が“呪われる”のかを検証するため各界の科学者、研究者、専門家にフィルムを持ち込み鑑定してもらったが ー
上記あらすじは、紛失していた『アントラム』フィルムがある団体によって見つけられ、“呪われる”とは何なのかを調査したよ、のドキュメンタリー部分。この後、このドキュメンタリーは本編『アントラム』を流して、視聴者を全員研究対象に。もちろん「ほんとにあった呪いのビデオ」と同じく“これを観て何かあっても自己責任で”と流れる。ご丁寧に終わった後も“これであなたは『アントラム』本編を全て観終わったことになります”とまで。
本編前に専門家の検証インタービューや結果がきちんと流され、今から本編を観る者を安心させてくれたか、というとどうだろう…。こういった呪いの噂や都市伝説、例えば「ピラミッドの呪い」的なやつは、ドキュメンタリー作品だけでは何を、どっちを信じていいのかわからないため、結局は自分で判断、決めることになる。全ては自己責任なのだ(-.-)
ー みたいな前置きが終わった後、ようやく本編『アントラム』が始まる。さぁ、皆さん用意はいいでしょうか…?
『アントラム』
本編あらすじ
可愛がっていた飼い犬が飼い主に噛み付いたため、やむなく殺処分になり悲しんでいる少年ネイサン。姉のオラリーは犬の魂を連れ戻すため、ある書物を参考にネイサンを誘って二人で深い森に入っていく。その森には天国を追放されたある悪魔が降り立った場所がある。その場所は地獄に繋がっていると言われており、そこを深く深く掘り進むと囚われた魂が見つかるというのだ。二人の母親は飼い犬は悪いことをしたから天国には行けないと言った。そのことで深く傷ついたネイサンを見て姉が考えた計画だった。
無事にその場所に到着し、さっそく儀式の後、穴を掘り進める二人。地獄に近づくに連れて第一層、第二層と呼ばれる場所に順に到達するが深い森に夜の闇が訪れた。テントに入った二人の周囲には不気味な影が踊り、大きな音が鳴る。二人は無事に愛する飼い犬の魂を救うことが出来るのだろうか ー
本編『アントラム』の見どころと感想
オープニングを見てすぐ感じたのは、これは古めホラーの雰囲気を出して盛りたてている雰囲気作品なのかな?って思ったこと。オープニングの女性のハミングのような歌はまるで『ローズマリーの赤ちゃん』だし、続いてバックに映る金髪の少年や美しい姉の様子は『ピクニックatハンギング・ロック』や『エコール』(これは2000年代)を思い出す。
そしてこれは比較的新しい作品なのだが、忘れてはならないのが『ババドック 暗闇の魔物』。やっちゃだめな所でいきなり高周波で叫び出す様子はまったくそっくり。顔も似ている(本作の方が少しまし)。
何故にこのキャーーーっと泣き叫ばれるとイライラするのは少年なんだろう。少女なら反対にそこまでうるさく感じない。男の子だからこその絶対的に止まらない頑固さみたいなものが感じられ、いつまで続くんだ(-_-)…となってしまう(これは差別か(・・?)。
そんな感じで始まった本編は既視感ありありで、“呪われる”だの、“絶対死ぬ”などは全く忘れてにやにやしながら観ていくことになる。そして案外この姉弟の一生懸命さ、犬を愛していた心、弟思いの姉、小さいのに頑張って穴を掘っている弟などに情が湧いてくる。この呪われたとかいう作品にいつの間にか入っていっている自分を発見することになる。
そして2人の気持ちに寄り添いつつ気になってくるのは、本当にこの森は悪魔が降り立ったのか、弟があちらこちらで見つける不気味な影や血の跡は何なのか。姉の持つ書物は案外良くできていて、その書物に沿って地獄への第1層、第2層〜第5層までをこの姉弟は体験していく。
- 第1層
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トランペットが聞こえてくるはずと弟。近くにリスが現れるがどうして不気味な作り物?この森は自殺者が多く、近くにミイラがあったり、自殺をしようとしている日本人にも出くわす。
- 第2層
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引っかかれたネイサン。悪魔のせいだと言うが。
- 第3層
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3層に行き当たった時、大きくラッパのような音が鳴る。時に悪魔は楽器の大きな音とともに現れると言う。それと同時に空に暗雲が立ち込め、慌ててその場所を離れた二人を待ち受けていたものとは。
- 第4層
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森に巣食うのはそれだけじゃない。何しろホラー界の最終決定事項は「一番怖いのは人間」なのだ。恐ろしく悪魔のような人間が二人を襲いくる。本当に彼らは人なのか?
- 第5層
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このあたりから本編『アントラム』は俄然面白くなってくる。二人が本当の危機に直面したこともあるが、いろいろ起きた不可解な現象の種明かしも見つけることになる弟。
だが、本編『アントラム』の本当の恐怖はラストに待っていた。この結末は映像化されていない。
この恐怖を描くのに“呪われた”“絶対死ぬ”などと煽って他に注意を向け、ドキュメンタリーチックに仕上げた本作は、案外やりおる作品だった。古い70年代風に仕上げられた傷だらけの映像さえ、もう既に気にならない。ニヤニヤしていた顔をグイッと180度後ろに向けられたほどの衝撃がラストに襲ってくる。
これが本編を観た感想。
観終わって3時間ほど経つけれど今はまだ無事です。ー 明日はわからないけどね
専門家による検証結果
悪魔について
本編内のトランペットとともに現れるという悪魔は、前に調べたことのある「ペイモン」のことかと思ったけれど、本編の後のドキュメンタリー部分で「アスタロト」と明かされていた。
アスタロト(Astaroth)は、ヨーロッパの伝承に伝わる悪魔の一人。種々の魔術や悪魔学の文献において高位の悪魔として扱われる。
Wikipedia
ヴァイヤーの『悪魔の偽王国』(1577年)によると、アスタロトは40の悪魔の軍団を率いる強壮な大公爵である。72人の悪魔たちの性質を記したグリモワール『ゴエティア』でも29番目に紹介されており、同様の記述が見られる。
巨大なドラゴン、あるいはドラゴンに似た獣にまたがり、右手に毒蛇を持った天使の姿をとる。口からは毒の息または耐え難い悪臭を吐き出すため、間近に寄らせるのは危険とされる。蝿の王ベルゼブブのそばに、ロバの姿で現れることもあるという。『真正奥義書』によれば、黒白の色をした人間の姿で現れることもある。
「ペイモン」については下記レビュー記事へ
『ヘレディタリー/継承』(2018) - Hereditary
この世で絶対逃げることが出来ないものの筆頭にあるのが「遺伝子」。血液を全部入れ替えようが、身体の一部をロボットにしようが、脳が残っている限り、脈々と受け継が…
作品の細工について
『アントラム』には気分がハイになる、不安を煽る、神経衰弱に陥らせる作用のある「両耳性うなり」の音が混ぜ込まれている。また元のフィルムには薄いシートが被せられており、それには人間の精神に影響を及ぼす記号である三角形を元にした五芒星が170個以上印刷されていた。
元来、三角形は「三位一体」を表す図形であり、西洋では「父と子と聖霊」、東洋では「兆候や光」、オカルト界では「召喚のシンボル」と言われている(本編より)。
ここに来て、怪しいホラーからそれなりのサスペンスモノに様変わりしていた『アントラム』に、また最後怪しい「悪魔召喚説」が浮上してきた。それも検証してくれた学者や専門家によって。
全く、この映画は最後まで気が抜けない。結局はあなた次第ということか ー
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