ちょくちょく挟まる70年代ホラーシリーズ。時々拾い物があるけれど、これはどうかな(-.-)? 一人ぽっちになってしまった10代のヒロインと、その周りにうごめく私利私欲にまみれた大人たちと殺人鬼。けれども一番のワルはどいつだ?というお話でラストが一番の見ものかもしれない。ネタバレありです(‘ω’)
■ 未亡人館の惨劇 - Blood and Lace – ■
1971年/アメリカ/86分
監督:フィリップ・ギルバート
脚本:ギル・ラスキー
製作:エド・カーリン他
出演:
メロディ・パターソン(エリー)
グロリア・グレアム(未亡人)
デニス・クリストファー
ミルトン・セルツァー
レン・レッサー
ヴィク・タイバック
■解説:
キネマ旬報社
『ドクター・ゾンビ』のメロディ・パターソン主演によるスプラッターホラー。「地上最大のショウ」などでお馴染みのグロリア・グレアムが世にも恐ろしい未亡人を演じる。
■あらすじ:
ある夜、金槌を持つ殺人鬼に母親を惨殺され孤児となったエリーは、養護施設に預けられることになった。その施設は、ある未亡人が大きな屋敷を使って経営している施設であったが、郡の補助金目当てで経営しており、脱走する子どもには手荒な罰が待っていたのだった ─
主人公エリーは18歳。母親は自宅で娼婦商売をしており、それを憎むエリーは名前も知らない父親に会う事だけを夢見ていた。そんなある夜、母親と客の男が眠っているところに金槌を持つ殺人鬼が侵入。二人を滅多打ちにしたうえ、家に火をつけた。エリーは助かったものの、保護者がいなくなり養護施設へ入れられることに。大人を信用していない彼女は、父親を探す旅に出ようと移動の道中に逃げ出すも、母親の事件の捜査を手伝っている探偵カラサーズに連れ戻され、しぶしぶ施設に入ったのだった。
その養護施設は、ある未亡人が夫から相続した立派な屋敷を使って経営している場所だ。だが経営は厳しく、子どもたちの頭数が一つ減っただけでも立ち行かなくなるほどひっ迫している。定期的に査察が入るものの、未亡人の色香やたわ言で経営状態や子供たちの様子を説明して、何とか追及をかわして乗り切っている有り様だ。というのも、今まで何人もの子どもが脱走を企て、下男のトムが追いかけ捕まえてくるものの、必ずしも命がある状態で連れ戻せるとは限らなかったからだ。
じゃあ、どうするか?
初っ端のオープニングを飾る金槌殺人鬼とは別に、この養護施設にも恐ろしい輩がいる。何といっても邦題である『未亡人館の惨劇』を起こしているのは、この施設の輩なのである。オープニングの金槌は、また別の話で、よくある他のサイコホラーっぽく始めてみただけのまやかし。とは言え、全く関係ないわけでもないんだけれど・・・
では、この施設の「輩」とは
まぁ、だいたい予想の通りなのですが、上の未亡人と下男トムがその輩。確かにお金にも困っているのだろう。それなら施設など運営せずとも、さっさと屋敷を始末してそれなりの生活を始めればいいのだが、未亡人にはこの屋敷に居続けなくてはならない理由があった(トムの理由は「楽しいから」ぐらいのものだが…)。
その理由とは、亡くなった夫をいつか蘇らせること。今は地下の冷凍室に入れているが、そのうち、蘇らせる術が出来るだろうと、それまで補助金目当てでこの屋敷を持ち続ける必要があったのだ。それだけなら、まだ可哀そうな未亡人くらいの話だったのだが、何があっても施設を経営し続けるために脱走した子どもを捕まえるのに殺してしまった後は、夫がいる地下の冷凍室にぶら下げて保存。査察の際には風邪をひいて寝込んでいるなどの理由を付けて保健室のベッドに寝かせ(査察時にはちょうどいい感じに冷凍具合がとけているよう下準備にも抜かりがない)、青白い顔だけをのぞかせる。
こんな所業を繰り返し、冷凍子どもの数は3体となった。4人目の脱走者の少女は命があるまま捕縛できたので、屋根裏部屋に繋いで放ってある。5人目の少年は、トムが追いかける途中で手首を切り落とされたまま藪に隠れ、見つからなくなってしまったために本当に行方不明に。査察時にそれの追及が始まった。
などなど、悪事を重ねる未亡人と下男。それを知ってか知らずか、未亡人の色香に惑わされ査察をいい加減に続けてきた病院長も登場し、エリーの周りには悪い大人ばかり。
そのうえ、悪事の一部に感づいた利口なエリーがチラチラと調べ始めたのと並行して、ちょっと忘れていた初っ端の金槌殺人鬼もこの屋敷に再登場。探偵は「殺人鬼の唯一の目撃者エリーを狙っている」とエリーを心配する。まともな大人は探偵だけなのか。終盤にはトムと殺人鬼の大格闘まで起きる有り様。
なんか、、どうやって収集が付くんだろう…と思っている矢先、一人倒れ、また一人倒れて最後に残るはエリーと金槌。逃げるエリーを追いかける金槌。そして捕まり、あわやエリーの顔に金槌が振り下ろされるかと思った瞬間…!
ここからはラストのネタバレが
未見の方はご注意を
金槌がマスクを自らはがすと、そこには探偵カラサーズが。
では探偵がエリーの母親殺しだったのか?と思えばそれは違う。じゃあ誰が?もう一人しかいませんね。それは母親を憎んでいた少女の犯行だったのだ。探偵はそれを脅しに使ってエリーに結婚を迫る。もう全く出てくる大人、出てくる大人、みなヒトじゃない。ついでにエリーも真っ当な人間じゃない。母親を殺した時は思い余ってという状態であったかもだが、その後の行動はあまりに普通で、普通過ぎて、この娘もサイコな特質を持っていると言わざるを得ない。
そしてオチがまだあるのだ。最大のラストが。
エリーは最後に最大の秘密を聞かされ、気が動転したのか大笑いが止まらなくなる。内容はある程度予測がつくものであったが、エリーの最後の高笑いが見事で、このために、これを見せつけるために、この作品はあったのか、と思ったほどだ。
あの高笑いはどういった感情なのだろうか。どうあっても幸せが来ない自分への嘲笑か?それともあれほど夢見た父親が、やはり人間の屑だったのを知ったことのあきらめの笑いなのか。
うまいよ、メロディ・パターソン。
Contents
70年代の代表的なホラー映画
- 血みどろの入江(1971年) – マリオ・バーヴァ監督
- 鮮血の美学(1972年) – ウェス・クレイヴン監督
- ゾンビ特急”地獄”行(1972年) – ユージニオ・マーティン監督
- ウィッカーマン(1973年) – ロビン・ハーディ監督
- エクソシストシリーズ(1974年) – ウィリアム・フリードキン監督/ウィリアム・ピーター・ブラッティ(原作)
- 悪魔のいけにえシリーズ(1974年) – トビー・フーパー監督
- 拷問の魔人館(1974年) – ピート・ウォーカー監督
- フライトメア(1974年) – ピート・ウォーカー監督
- 暗闇にベルが鳴る(1974年) – ボブ・クラーク監督
- ロッキー・ホラー・ショー(1975年) – ジム・シャーマン監督
- ジョーズシリーズ(1975年) – スティーヴン・スピルバーグ監督/ピーター・ベンチリー(原作)
- 家(1976年) – ダン・カーティス監督
- オーメンシリーズ(1976年) – リチャード・ドナー監督
- ザ・チャイルド(1976年) – ナルシソ・イバニェス・セラドール監督
- 悪魔のしたたり(1976年) – ジョエル・M・リード監督
- スナッフ/SNUFF(1976年) – マイケル・フィンドレイ、ロベルタ・フィンドレイ監督
- キャリー(1976年) – ブライアン・デ・パルマ監督/スティーヴン・キング(原作)
- サスペリア(1977年) – ダリオ・アルジェント監督/トマス・ド・クインシー(原作)
- ラビッド(1977年) – デヴィッド・クローネンバーグ監督
- イレイザーヘッド(1977年) – デヴィッド・リンチ監督
- ハロウィンシリーズ(1978年) – ジョン・カーペンター監督
- エイリアンシリーズ(1979年) – リドリー・スコット監督
このブログの70年代ホラー
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『悪魔の赤ちゃん』(1974) - It’s Alive! –
まだ観てなかったシリーズ続きますー。これ『悪魔の赤ちゃん』は、ホラーというよりサスペンス・ドラマですね。可愛い息子が罪を犯してしまった。その時、両親はどう対… -
凶暴生物パニック巨編2作品! 『燃える昆虫軍団(1975)』 『猛獣大脱走(1983)』
ビックリしたのが、どちらもホンモノを使っているのでは?と言うほどの臨場感、ホンモノ感があること。というよりも、1970年代と80年代の作品だからCGはあり得なくてホンモノを使っているとしか思えない。それで、、、 -
『ブラッディナイト 聖し血の夜』(1974) - Silent Night, Bloody Night –
なんかふざけたタイトルからサンタ殺人鬼みたいなモノを想像していたら、全く違いましたよ、お客さん(また)。この作品は不遇な取り扱いをされていたらしくて、傷だらけのフィルムをとにかく助けるためにDVD化されたサスペンス・ホラー作品。もの悲しい内容にフィルムの傷が似合っているとも言えて、独特の雰囲気を醸し出している。