『暗闇にベルが鳴る』(1974) - Black Christmas –

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『エクソシスト』『悪魔のいけにえ』『ジョーズ』なんかと同じ頃に公開されたサスペンス・ホラー映画。有名なこれらの作品と比べてもひけをとらない内容で、ホラーと言うよりサスペンス寄りの殺人鬼もの。これを観て思いだしたのは『サイコ(1960)』かなー。

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■ 暗闇にベルが鳴る - Black Christmas – ■
1974年/カナダ/98分
監督・製作:ボブ・クラーク
脚本:ロイ・ムーア
製作総指揮:フィンドレイ・クイン
撮影:レジナルド・モリス
音楽:カール・ジットラー

出演:
オリヴィア・ハッセー(ジェス)
キア・デュリア(ピーター)
マーゴット・キダー(バーブ)
ジョン・サクソン(フラー警部)
アンドレア・マーティン(フィル)
マリアン・ウォルドマン(マック寮母)
アート・ヒンドル(クリス)
リン・グリフィン(クレア)

解説:
クリスマス前後の女子学生寮を舞台に、奇怪なイタズラ電話に端を発した猟奇殺人を描いた恐怖映画。雪降るカナダの森閑とした風景と、O・ハッセーの恐怖におののく姿のみが印象に残る作品で、犯人に関する説明を一切省いた手法をどう受け取るかで評価は大きく分かれるだろう。
(allcinema)

あらすじ:
以前から気持ちの悪いイタズラ電話に悩んでいた女子学生寮で今年もクリスマスパーティが行われていた。だがその翌日、実家に戻るため父親と待ち合わせていたクレアが行方不明になったことを皮切りに、電話が頻繁にかかるようになったうえ、とうとう近所で女子中学生の遺体が発見される。警察は捜査に乗り出すが、寮では一人、また一人と正体の知れない男に学生達が殺されていき ―


Black_Christmas_14女子寮を舞台にしたワン・シチュエーション・スリラーというわけでも無いんです。寮の女子学生達は監禁されているわけでもなく自由に動き回れる。パーティの真っ最中から事件は起き始め、それでいて“一夜の恐怖”というのとも違っていて、一人の女学生行方不明から始まる数日間の恐怖を描いている。
多種多様な登場人物達の人となりや毎日を説明しつつ、同時に進行する寮での凶行。

どちらかと言うと、この女子寮を標的にすることで閉じ込められているとも言えるのは殺人鬼の側。この女子寮にどんな理由があってか、とても執着する。リメイク版『ファイナル・デッドコール 暗闇にベルが鳴る(2006)』では犯人は、寮として使われる前のこの建物の元住人という設定で過去の惨劇を絡めているが、こちらの犯人は正体不明。顔も映らない。

Black_Christmas_18唯一手がかりとなるのは女子寮へかける電話の内容で、これが結構、今見てみても最近のホラーに負けず劣らず気持ち悪い。その内容は卑猥なイタズラ電話に止まらず、どんどん中身は異常な方向にエスカレート。
「ギャー、ギャー」と叫ぶ女性の声。これは警察によると犯人が声を使い分けているという事だが、とてもそう思えないほど女性の声で別人だ。続いて「アグネス、私はビリーだ」と一人語りが始まる。「ビリー、お前が悪いんだ」。女学生を殺した後は「私を助けて、私を助けて・・・」
殺した女学生の遺体を潜んでいる屋根裏部屋で大事に保管し、縫いぐるみなんかを抱かせて歌いながら揺り椅子を揺らしてやる。

これらから考えられるのが、この殺人鬼は多重人格者で精神の破綻を起こしている、ということ。人格の中の“ビリー”が殺人鬼なのか、“アグネス”は誰なのか、“私”が基本的人格の人なのか、説明は一切無い。顔が映らない代わりに彼目線で動くカメラと彼の息づかいや独り言が、この謎の殺人鬼の不気味さを一層増していく。
この「犯人が多重人格」と「揺り椅子に遺体」という点が『サイコ』を彷彿とさせる。

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反対にカメラの前で殺人鬼に怯える女学生達はたっぷり堪能出来る。その中でも果敢に犯人と対峙したのがジェス(オリヴィア・ハッセー)。最初は酒浸りでアクの強いバーブ(マーゴット・キダー)がこの事件を解決していくのかと思っていたけど、その役回りは沈着冷静なジェスに(でもこれが、ホントの意味で解決したのかは分からないラストになっているんですけどね)。

Black_Christmas_29アクの強い登場人物はバーブの他にも、同じく酒飲み寮母マック夫人がいる。厚い本をくり抜いた中やトイレのタンク、クローゼットの奥などにウィスキーの瓶を隠し持ち、前を通る度に一口飲んでいく陽気な婦人。後は警察署で受付をしているお間抜けな巡査などユーモア担当がいたり、ジェスの神経質な恋人、行方不明になったクレアの父親、男気のあるクレアの恋人、しっかり者のメガネの女学生、有能な警部などなど個性豊かな登場人物が顔を揃え、この手の作品にありがちな怯える女性グループや男女グループだけのお話では無くて良質なサスペンス劇になっている。

本作がカナダ製作と知って驚いたが、思えばカナダ産のホラーは案外多い。

カナダのホラー・サスペンス映画
ラビッド(1977)
・プロムナイト(1980)
チェンジリング(1980)
・スキャナーズ(1981)
・血のバレンタイン(1981)
・ビデオドローム(1982)
戦慄の絆(1988)
・キューブ(1997)
・11:46(2006)
・UNDERWORLD ラスト・セクト(2006)
・ファイブ・ガールズ 呪われた制服(2006)
SHOCKER ショッカー(2007)
・ゾンビーノ(2007)
サベイランス(2008)
・デビル・リベンジャー 復讐の殺人者(2008)
・噛む女(2008/OV)
SUCK /ヴァンパイア・サック(2009)
アポロ18(2011)
グレイヴ・エンカウンターズ(2011)
388(2011)
恐怖ノ黒洋館(2012)
チェインド(2012)
・コロニー5(2013)
デッド/エンド(2013)
そのネズミ、凶暴につき(2013)

他国との合作も合わせたら有名どころ(マーターズサイレントヒルなど)がもっとたくさん。特にフランスとの合作は最高
このブログのカナダ関連作品


本作はアメリカやカナダでは非常に有名な都市伝説“The Babysitter and the Man Upstairs”がモチーフということだが、きっとアレですね。日本にもある都市伝説「ベッドの下の男」。これには色んなバージョンが各国に。

一例:逆探知
ある女性宛のイタズラ電話が次第に過激化していき、ついには殺人を仄めかすようになる。怖くなった女性が電話で警察に相談すると「次に掛かってきた時に逆探知をする。しっかり施錠をして誰も家に入れるな。家にいる限りは安心だ」と言う。女性が電話を切ると、すぐまた殺人予告の電話が掛かってきた。女性がその電話を切ると、今度は警察から先ほどとは打って変わって焦った口調の電話が。「早く家から出て!犯人はお宅の二階から電話を掛けています!」
(Wiki:都市伝説)

1970年代の作品ではあるけれど古さをあまり感じないのもこんなところから来ているのかもしれない。

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