M・ナイト・シャマラン監督作品の中で一番のお気に入り『サイン』がとうとうこのブログに…。この作品はスリラー味たっぷりのSFホラーなんだけど、ラストは何度観てもウルっとくる家族の再生物語でもある。さぁ、久しぶりの人も初めての人も一緒に感動いたしましょう(‘ω’)

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■ サイン  – Signs – ■
2002年/アメリカ/106分
監督:M・ナイト・シャマラン
脚本:M・ナイト・シャマラン
製作:M・ナイト・シャマラン他
撮影:タク・フジモト
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

出演:
メル・ギブソン(グラハム・ヘス)
ホアキン・フェニックス(メリル)
ローリー・カルキン(モーガン)
アビゲイル・ブレスリン(ボー)
チェリー・ジョーンズ(パスキー)
パトリシア・カレンバー(コリーン)
M・ナイト・シャマラン(レイ)

■解説:
「シックス・センス」のM.ナイト・シャラマン監督が主演にメル・ギブソンを迎えて贈る戦慄のミステリームービー。ペンシルバニア州バックス郡を舞台に、不慮の事故で妻を失ったことを皮切りに、平凡な家庭で次々と起こる超常現象の恐怖を描く。

Oricon

■あらすじ:

フィラデルフィア郊外に暮らすグラハム・ヘスとその家族。妻のコリーンが半年前に事故死し、それまで牧師だったグラハムは信仰を失ってしまい失意の中、幼い子どもモーガンとボー、自分の弟メリルと暮らしている。
そんなある朝、グラハムのトウモロコシ畑にミステリーサークルが出現。最初は近所の悪ガキたちのいたずらかと思われたものの、数日後には世界中の各地でミステリーサークルが次々と出現していることが判明。同時に、グラハムの畑や家の周りで不気味な人影のようなものが現れるようになる ─

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初っ端からして不安をあおる弦楽器の旋律が奏でられ、クラシックなタイトルバックと共にまるでヒッチコック『サイコ』のようなオープニング。これはただならぬ物語が始まるんだな、とこちらの緊張感を高めてくる。

一家の母親が事故で亡くなり、お互いどこかギクシャクしているように見受けられるヘス家族。子どもたちがまだ幼いというのもあるが、兄のモーガンは思いのほかしっかりしている。子どもたちに弱音をはけない父親であるグラハムは、けれど牧師をやめてしまったことから、どういった心境なのかは子どもたちが幼くても感じ取ることは出来るだろう。そんな父親にモーガンは信頼関係を築けないでいる。
子どもたちの叔父メリルの存在が親子3人の潤滑油のようになっており、危なっかしいながらも一家は日々を過ごしている。

そんなある日に起きるのだ。第一のサイン(兆候)が ─

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最近はあまり騒がれなくなった【ミステリーサークル】であるが、1970年代から80年代にかけて世界中に出現し、大いにテレビを賑わせていた(実話)。いったい、誰が、何のために、どうやって出来たのか?当時も色々な説が出ていたが、その中の一つ。最もそれらしく一番夢と謎があるように思われたのが「UFO」によるものだ。確かUFOの着陸跡だとか、UFOが地球に来る時のための目印だとか言われていた。【ナスカの地上絵】も目印ではないかと言われていたな、そういえば…。

そして、グラハムのトウモロコシ畑に一晩で出現した巨大なミステリーサークルは、警察に相談なんかをしている数日の間に世界中に広まることになる。そしてそのままUFOの出現へ。

本作『サイン』は、ここからUFOやエイリアンとの交流や戦いの話にはなっていかない。グラハムの家族がどうやって対処していくか。特に父親がどれだけ家族をまとめていけるか、が主題となっている。そして家族をまとめるのは父親だけの仕事ではないことが分かってくる。家族のそれぞれが、その立場に立って、どう協力していくか、団結していくかが大事であり、家族それぞれには役割がきちんとあるものなのだ、ということがはっきりしてくる。

グラハムの家族にもそれぞれの役割があった。
それは今回のUFO騒ぎが起きるもっと以前から小さなサインとなって現れていた。そういった小さな兆候というものは、最初の内は誰しも見落とすものなのだ。いったいそれが何なのか分からず見過ごすことが多いもの。人の毎日、日々の暮らし、人生の転換期。もしかしたらそれらは小さなサインに埋め尽くされているかもしれない。何年も何十年も後になって人生を振り返るとき、初めてそこに何かが見えてくるかもしれない。

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グラハムと弟のメリルは、案外しっかり話し合える兄弟だ。
そんな中、グラハムは言う。 人には二種類ある。

  • 何が起ころうと助けてくれる誰ががきっといる。その幸運に神のサインや奇跡を信じる者。
  • しょせん人間は独りで生きている。誰からも守られやしない。幸運はただの幸運。

グラハムはずっと奇跡を信じ、信仰の心を持って牧師の職についていた。だが、事故で妻を亡くした時に信仰心を失ってしまい、神は何も守ってくれないと断定してしまう。それを見ていたメリルは胸が痛かった。モーガンは父を信じることが出来なくなっていた。だがそれすらもサインの流れの中の一つだったのだ。

天使のような赤ちゃんだったボー、喘息を患っているモーガン、バットをおお振りすることが得意で野球をやっていたメリル。牧師をやめていたからこそ事件の時に家族のためだけに行動できたグラハム。彼らや町の人々は基本的に善意の人だ。だからこそ事故の張本人レイから電話を受けた時、何かを感じ取ってすぐに彼の家をグラハムは訪れた。そこで事件後初めて二人は対峙して何か一つ、振り落とすことができたのだ。

そして終盤、天使のようなボーがあちらこちらに置きっぱなしにしていたグラスに意味があることが分かった時、メリルと一緒に観ているこちらは全ての謎が解けたように感じられ、ようやく重苦しかったヘス家に太陽が差し込むのが見える。その後もきっと心配ないと分かるのだ。それらも全てサインの連なり、「運命」なのかもしれない。

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サインを受け止め運命へと流れ込んでいくには、善意でできた素直な心が必要であるのは間違いない。

それにしても本作のアビゲイル・ブレスリンの可愛いこと。特にボーのファッションセンスは最高で、この作品を観た当時はいつか自分の娘にもこんな服を着せたいと思ったものだった(‘ω’) まだ若くきれいな心のホアキン・フェニックスもいい。このホアキンが20年後に狂気の反社会連続殺人鬼になるとはとても思えない。これに関してはサインは無かったように思うが、、そういうと『グラディエーター』にちょっと表われていたかもしれない…。
本作のメル・ギブソンも、実は『マッドマックス』の次にいいと思ってる。あまりしゃべらず、表情だけで子どもや弟を思う気持ちがよく表れている。

ラストの雪が舞う景色から、時が経ち、子どもたちの笑い声が聞こえる中で仕事に行く準備をしているグラハムの姿を見る頃にはじ~んと感動し、これがホラーだったことなど忘れているはず。
素直な心を思い出したい時、綺麗な心を取り戻したい時。私はこの『サイン』をお勧めする。

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