『チューブ 死の脱出』(2020) -Meandre-

『CUBE』の管(TUBE)版じゃないの~(-.-)?って思った方。違います。私もそう考えながら観始めましたが、違います(‘Д’)!そんなものに、あの“タランティーノ監督が認めた気鋭監督最新作”なんて文字が躍るはずがない!これは時々世に出てくる“設定がどんどん変化していく”作品で、ラストはあーなるヤツです。今回の記事は後半、基本ネタバレてますので「あーなる」のを知りたい人は最後まで、そうじゃない人は途中までお読みください。

■ TUBE チューブ 死の脱出  – Meandre – ■

Meandre

2020年/フランス/91分
監督:マチュー・テュリ
脚本:マチュー・テュリ
製作:エリック・ジャンダルム他
撮影:アラン・デュプランティエ
音楽:フレデリック・ポワリエ

出演:
ガイア・ワイス(リザ)
ペーテル・フランツェーン(アダム)
ロマーヌ・リベール(ニナ)

■解説:
謎のチューブに閉じ込められた女性の決死の脱出劇を描いたフランス製SFサスペンススリラー。出演は「スクランブル」のガイア・ワイス、「旅人は夢を奏でる」のペーテル・フランツェーン。監督・脚本は「HOSTILE ホスティル」のマチュー・テュリ。「未体験ゾーンの映画たち2022」上映作品。

映画.com


よく見ると(よく見ないまでも)字面(CUBEとTUBE)まで似てるね(‘ω’)。確かに目が覚めたら、訳の分からない金属質な部屋に閉じ込められていたという点が同じ。けれど本作『TUBE』には、そこまでの前振りがあり、その前振りでまず騙される。だから最初から最後まで集中力を発揮して、しっかり観ていってほしい。じゃないと、場面転換についていけないかも。というのも舞台のほとんどは「TUBE」なんだけど、それはただのTUBEじゃなくて様々な仕掛けがどんどん襲い来る待ったなしの死のTUBEだからね(-ω-)/

Contents

■あらすじ:

少し前に可愛いさかりの娘ニナを事故で亡くしたリザ。自暴自棄になった彼女は死に場所を求め、ある男の車に乗り込む。ラジオでは最近起きている連続殺人について報道されており、その殺人犯の手首には十字のタトゥがあると告げている。車の男の手首にそのタトゥを発見したリザ。だが、それと同時に急ブレーキをかけられ意識を失ってしまう。

Meandre

次に目覚めた時、リザは見覚えの無いスーツを着せられ、狭い無機質な部屋に閉じ込められていることに気が付く。どうあっても脱出できなさそうな造りに絶望しかけた時、いきなり壁のドアが開き思わず移動を開始する。だが、そこはどこまでも続く様々な形の狭い通路(チューブ)。彼女は終わりの見えない迷路のようなチューブから脱出しようと、希望を持って先に進んで行くが ─

見どころと感想

田舎道に寝そべって車に轢かれるのを待っている娘。思春期をこじらせた家出少女かフウテン(古い)少女かと思いきや、9歳の娘がいる女性リザ。まずはそこでえっ(”ω”)となった管理人momorex。なんか訳ありなんだな、と観ていくと乗った車の男が思っていた通りの連続殺人鬼。そして急ブレーキ。次は閉じ込められている。

こうきたら、この殺人鬼の男に閉じ込められたと思うのが筋。閉じ込められ、監禁され、凌辱されたあげく殺され、道端に捨てられる。ほら、さっきまで盛んにテレビやラジオで報道していたじゃやない、無惨な遺体と非道な殺人鬼について…

─ にしても、この閉じ込められている場所というか連なったチューブと空間が大きすぎる。また手首にはタイムリミットが表示され、周辺を照らす灯りが装備された腕輪が固定されている。

Meandre

そのうえここチューブはエジプトのピラミッドよろしく、通路が広がったり狭まったり自由に組み替えられつつ、いきなり落ちてくる行く手を阻む鉄格子、襲い来る猛火などなど、様々なトラップが仕掛けられている。そのトラップはチューブを移動する人間の動きを見計らって正確に攻撃を開始しており、とても大事(おおごと)で壮大な造りなのだ。ここは誰かが監視し、何かの目的を持って運営しているに違いない。

いったい誰が?一人の殺人鬼がこれほどのモノを用意するとも思えない。ニュースの無惨な遺体は何かの実験の結果なのか?それを隠すために連続殺人を装っているのか?

などと考えているうち、一つの謎が解明される ─

ここからはネタバレが

未見の方はお気を付けください

車の男

誰もいない孤独なチューブ空間。空間といっても広いわけじゃない。ただただ長い。
ただし残されていた腐乱死体があったことから、ここに閉じ込められ、這いずりながら脱出を試みた人間は自分一人じゃないことがわかったリザ。そして、とうとう遠くから泣き叫ぶ男の声が聞こえてくる。やっとの思いで近くまで寄ってみると「車の男アダム」だった。

アダムの髪が伸びていることから、自分よりも長い時間ここに閉じ込められ、這いずり回り、絶望の雄たけびを上げていることが分かる。
だがリザは?
自分が目覚め移動を開始してから、アダムに比べてそんなに時間は経っていない。なぜだ。記憶は車の急ブレーキ後に襲い来るアダムと争ったところで途絶えている。アダムと自分のチューブでのタイムラグ。この時間差の間、
リザはどこかで眠らされていたのか?

人じゃない何か

Meandre

後ろからリザを追いかけ捕まえようと襲ってくる黒こげの人じゃない“何か”。ソレはさっき、火あぶりにあったアダムのなれの果てなのか、他の何かなのか。だがこの真っ黒な状態で生きているとは思えない。正体は分からない。ただ分かるのはリザへのむき出しの敵意のみ。

あともう一つ。リザが怪我を負った時にどこからともなく現れる医療ロボットのような生き物(らしきもの)。これはリザの立場に立って身体的、精神的に治療を施そうと近づいてくる。人間の言葉も分かる。だがいったい誰が、何のために?
こんな地獄の餓鬼のようなものが蠢き、天国の医者のようなモノが徘徊するこのチューブとはいったい、何の場所なのか?
どこの世界なのか ─?

記憶の回廊

Meandre

最後近くにあるチューブは高さがあり、明るく美しい。何より両の壁にはそこにいる人間の過去の記憶が次々に映し出される。脳の記憶をそのまま投影するその場所は“記憶の回廊”ともいうべき場所だ。リザは自分の少女時代や家族、亡くした娘の映像に目が離せなくなる。だが一体誰がこんな奇跡を起こせるのか?
神の御業ともいうべきこんな奇跡を ─?

子宮の内側 ─胎内

Meandre

記号を読み解きリザが辿り着いた場所。そこは今までの無機質な金属チューブとは打って変わって、まるで人の胎内のような有機物に満ちた場所だ。透けて見える外側には胎内の自分を観察しているかのように動く複数の生物がいる。これまでのチューブでの経験から、なぜか彼らが敵ではないことが分かる。さんざんチューブ内で命を脅かされたにも関わらず、彼らは自分に「生きなさい」と語りかけてくる。
己の持つ体力、知力、忍耐力と最後までやり遂げるという気力。これらを持つこのチューブの先にたどり着けた者だけが胎内から生れ落ち生きる権利があるかのように ─

ラスト

神の光に包まれて(もしくは宇宙人のアダプテーション時に包まれるという光に吸い上げられて)、浮かび上がっていくリザが次に目覚めたのは、大自然の中。そこには亡くなったはずの娘ニナもいて話しかけてくる。

自分は助かったのか?それとも死んだのか?

問いかけるリザに娘の形をした何かが答える。

肉体はとっくに何度も死んだ。
─ 生きなさい

それを聞いてにっこり微笑むリザ。
空に大きく浮かぶ惑星が見えるこの星。ここが元居た地球、もしくは元居た時代、もしくは元居た世界とは違うことは分かる。他の惑星なのか、それとも天国なのか。もしかしたら地獄なのか。

だが、ここは「死の概念」が違う世界。それは「生の概念」が違うとも言えるのだが、一つだけはっきりしていることがある。ここがどこであろうと、自分の命を粗末にしない、自己を自分で守ることが出来た者だけが到達できる場所なのだ。だからここがどんな場所であろうと、彼女は生きていく。
決してあきらめないのだ、自分の人生を ─

Meandre

さいごに

さぁて、『CUBE』で始まった本編が、最後には壮大な神がかった(もしくは宇宙人がかった)物語に化けましたよ。けれど本作が言いたいのはそういった超常現象的な話ではないのです。娘を亡くしたことで独りぼっちになったと思ってしまうほど、他に精神的な支えになる人がいないと思えるほど不幸な女性が、力強くこれからも生きていく自信を獲得する物語。
それは「自分を信頼する」ことが出来るようになったということであり、自分を信頼できるからこそ、他人を信頼でき繋がることが出来るようになったということ。

この生きていくうえでの根源的な力というものは場所を選ばないのだ。そこが大きな家でも、みすぼらしい掘っ立て小屋でも、例え他の惑星が近くに見える宇宙の果ての見知らぬ星でも ─

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