徹底的に究極の快楽を追い求めた1作目以降、数々のピンヘッド様物語が創られてきたものの、どれもいまいちな出来としか言いようがなかった「ヘルレイザー」界隈。だがここにきて、ようやく納得できる『ヘル・レイザー』2022年リブート版が登場した。私は宣言する。彼らの世界にまた戻ることを ─”(-“”-)”
■ ヘル・レイザー ■
– Hellraiser –
2022年/アメリカ/120分
監督:デイヴィッド・ブルックナー
脚本:ベン・コリンズ他
原作:クライブ・バーカー
製作:デビッド・S・ゴイヤー、クライブ・バーカー他
撮影:イーライ・ボーン
音楽:ベン・ラヴェット
出演:
【人間界】
- オデッサ・アジオン(ライリー)
- ジェイミー・クレイトン(ピンヘッド)
- アダム・フェイソン(コリン)
- ドリュー・スターキー(トレバー)
- ブランドン・フリン(マット)
- イーファ・ハインズ(ノラ)
- ジェイソン・ライルズ(チャタラー/うるさい口)
- インカ・オロルニフェ(ウィーパー/泣く人)
- セリーナ・ロー(ギャスプ/喘ぎ)
- ザカリー・ヒン(アスフィクシア/窒息)
- ヴカシン・ヨヴァノヴィッチ(マスク/見せかけ)
- ゴルシア・レゴディック(マザー/母)
- キット・クラーク(ジョーイ)
- ゴラン・ヴィシュニック(ヴォイト)
- ヒアム・アッバス(メナケル)
【セノバイト(魔導士)】
- ジェイミー・クレイトン(ピンヘッド)
- ジェイソン・ライルズ(チャタラー/うるさい口)
- インカ・オロルニフェ(ウィーパー/泣く人)
- セリーナ・ロー(ギャスプ/喘ぎ)
- ザカリー・ヒン(アスフィクシア/窒息)
- ヴカシン・ヨヴァノヴィッチ(マスク/見せかけ)
- ゴルシア・レゴディック(マザー/母)
■解説:
「ダークナイト」シリーズの原案などで知られるデヴィッド・S・ゴイヤーが製作・脚本を担当。ジェイミー クレイトンが演じる女性ピンヘッドがシリーズ初登場。U-NEXT
Contents
ヘル・レイザーの世界
私が魔導士ピンヘッドに求めるもの。
神々しく光り輝く異世界から突如として現れ、無駄口はたたかず、自分たちを必要とする人間を徹底的に究極の世界に引き入れ、引きずり込み、いたぶり、「楽しいだろう?」と言わんばかりにこの世で最高の快楽を与えること。与え続けること。
それは人間自身が求めたものなのだから何をわめこうが、やめてくれと懇願しようが関係ない。彼らセノバイト(魔導士)が現れたら最後、この世で最高の快楽=地獄を味わうことになる。
それを体現してくれるのがピンヘッドたち魔導士だ。
この究極の快楽の世界を第三者的に垣間見ることが出来るのが『ヘル・レイザー』作品なのである。垣間見るための案内者によって、ちょっと違う方向に行ってしまっていた時期もあるが、1987年の第1回目のご案内から35年。ここにきてようやく正しい案内に導かれたであろう作品が登場した。それが2022年リブート版『ヘル・レイザー』だ。
変なサブタイトルは付かず、ヘルとレイザーの間の“・”も復活。私にはこの“・”の存在がなぜかとても意味あるもののように思われる(気のせいかもしれないが(-.-)。ピンヘッド様が女性になる2022年のリブート版の噂を知った時、私の顔は”(-“”-)” こんな表情になっていたに違いない(言いたいことを読み取ると“どうせ、あれでしょ?現代風になって今の解釈になって、結局つまんないんでしょ?”)。
そしてようやく2023年10月サブスク配信にお目見えになった時にも、すぐには手を付けなかった。お気に入りに入れるだけで。
だが11月2日の夜。明日から3連休だし寝る前に観てみようかね、どうせアレだろうけど、などと考えつつ観始めた2022年リブート版『ヘル・レイザー』。
まず主人公ライリーが、ライリーの髪型が1作目ヒロイン・カースティーみたいにフワフワだった。それに不満なのか期待なのかわからないが、常に全く今の状態に満足していないとでも言いたげな口元がとてもいい。
さて、この彼女が主役になって繰り広げられる今回の悪夢は ─
あらすじ
薬物依存から立ち直ろうと苦しんでいるライリーは盗みに入った倉庫で古いパズルボックスを手に入れる。いじっているうちにパズルが解かれ、目の前に異次元の世界が現れるが薬の幻覚と勘違いする彼女にはそれの持つ意味がわからないままだった。だがそのせいで面倒をみてくれていた弟が失踪し、パズルボックスに何らかの力があると考えた彼女はボックスの持ち主を探し当てる。だが、それが本当の地獄への扉を開けることになるとはまだ気が付いていなかった ─
見どころと感想
さて今回の物語。
ヒロイン・ライリーがまるで1作目カースティーのように世にも恐ろしい魔導士たちを相手に単に戦うだけでなく取引を持ち掛けることさえしながら、自分にとっての要・不要(大切なもの・そうでないもの)の究極の選択をしていく。そこに暴かれるのは人間の本性であり、本来の生き様なのだ。
ピンヘッドら魔導士たちの物語というのは、綺麗ごとに飾られていない人の本性を魔導士たちのいうところの“快楽”によってさらけ出す物語。ターゲットは魔導士たちが選ぶのではなく、人間自らがパズルボックスを解くことによって足を踏み込む。その鍵であるパズルボックスはたまたまその人間の手に渡ったのではない。渡るべくしてその鍵を手にすることになるのだ。それがその人間の運命であり罪の贖いの第一歩となる。
今回の人間界の登場人物はライリーとその仲間の他、多数いるものの、本当の主人公はヴォルトというパズルボックスの持つ意味を知っていた金持ちの男だ。この男は金にものを言わせパズルボックスの効果を他人で試し、自分の快楽とパワーを手に入れるためだけに生きている。2作目『ヘルレイザー2(1988)』に登場したチャナード医師もそんなとんでもない輩だったが、もちろんピンヘッドらにお仕置きをされることになった。
ライリーたちはそのヴォルトによって苦しめられることになるのだが、彼女にも魔導士に目を付けられる理由があるため苦しいところだ。
今回のライリーの活躍は見どころの一つだが、これはいつものヘルレイザーと言ってもよい範囲。それよりも上の男ヴォルトの行く末が今までにない、いったいこれからどうなるのか?すごいものになったのか?もしかしてラストボスとはこの男なのか?などと今後を楽しみにさせてくれる展開となっている。
2作目感想にも書いた通り、魔導士たちは元はパズルボックスを開けた人間だ。ヴォルトはこうして魔導士になったということなのだろうか?それとも?偉大なるリヴァイアサンとは?
女性ピンヘッド
本作を観るまでは、どうなんだろーなーと思っていた女性版ピンヘッド。けれど彼女はとてもよい“ピンヘッド”だった。
無駄な動きはせず無駄口はたたかず、必要なことだけをしっかり伝え、静かに厳かに佇んでいる、その神々しさは過去のダグ・ブラッドレイ版ピンヘッド様を髣髴とさせると言っても過言ではない。
ダグ・ブラッドレイ版を過去に葬ることは、あれから35年経った今いたしかたない。同時に間に起きた悲劇のピンヘッド団をも一緒に葬り、この女性版ピンヘッド様に頭を切り替えてもいい時期なのではないだろうか。
魔導士たち
本作のピンヘッド様お付きの者は全5名。彼らの名前とその持つ意味は上 の出演者を見ていただくとして、今回もいつものようにどのキャラクターも色々な“痛み”を表現している。
1作目も出演したチャタラーは今回も登場したが、ちょっと雰囲気が変わっている。1作目お気に入りのバターボールはいなかった。
どの名前がどれだか分かってないこともあるので(-.-)、もう一回見て確かめようと思う。とにかくいつものように暗いんだよね、彼らの登場時は、ほんと
ついでに書くと今回のパズルボックスはいつものパズルボックスとは一味も二味も違いますよ、お客さん。ただの開いてる、開いてないだけの箱じゃない。彼ら魔導士たちの数と同じ6つの形態を持ち、6つの意味を持っているんです。
- ライフ
- 知識
- 愛
- センセーション
- 復活
- 強さ(リヴァイアサン)
上から順に形を変え、最終形態はリヴァイアサン(パワー)になるという、今回のパズルボックス。
本作の最終勝者はいったい誰だったのか。ピンヘッドたち魔導士もただの使い魔に過ぎないのか…(嫌だそんなの)。
その答えはきっと続くだろう次作で明かされると信じて楽しみに待つことにしよう。
究極の快楽 ヘルレイザーの世界
彼らが案内するのは単なる地獄でなく痛みによる「究極の快楽」の世界と拘束された中での「道徳」の世界。それを「地獄」と感じるか「至福」と感じるかは本人次第。それにより悪魔にも天使にもなる。
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『ヘルレイザー2』(1988) -Hellbound: Hellraiser II-完璧な続編となる2作目。 精神病院に入院させられているカースティを中心に我らが魔道士達の活躍が今作も描かれている。
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『ヘルレイザー3』(1992) -Hellraiser III: Hell on Earth-大都会ニューヨークに現れた魔道士たち。人間の欲望の渦がうごめく街にピンヘッドは何をもたらすのか ■ヘル・レイザーⅢ - Hell on Earth-■1992年/アメリカ/93分監督:…
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『ヘルレイザー4』(1996) - Hellraiser IV: Bloodline –宇宙ステーションというSFの舞台にゴシックな魔道士達が登場し、なかなかシュールな『ヘルレイザー4』。だが、割と違和感は無い。 博士にとことん愚弄されたピンヘッドと、そのつぶやきのような台詞が一番の見所となっている。笑えます。
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『ヘルレイザー ゲート・オブ・インフェルノ』(2000)20世紀最後の年に公開された「ヘルレイザー」シリーズ第5作。主人公は刑事ジョーで、魔導士たちは彼が破滅へ向かうお手伝いをするに過ぎない。物語はしっかり作られてい…
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アメリカでは米huluにて2022年10月7日配信。日本での配信は2023年10月から各サブスクで始まった。
そしてこんなのも
ドラマ情報は2020年のもの。けれど米HBOってところにとっても期待できる。上の映画版はリブート、このドラマ版は過去作品を継続・拡大させる内容に。どちらにせよ、あのヘルレイザーの世界観(特に1作目)がそのまま蘇ることを願います!(°▽°)!