『吸血鬼』(1931) - Vampyr - ボローニャ復元版

ホラーの原点ここにあり

Vampyr_18

■吸血鬼 -Vampyr-■ ボローニャ復元版 1931年/ドイツ/72分
監督:カール・テオドール・ドライヤー
脚本:カール・テオドール・ドライヤー、クリステン・ジュル
製作:カール・テオドール・ドライヤー他
音楽:ウォルフガング・ツェラー
出演:ジュリアン・ウェスト(アラン・グレイ)
ジャン・ヒエロニムコ(村医師)
レナ・マンデル(ジゼル)
ジビレ・シュミッツ(レオーヌ)
ヘンリエット・ジェラルド(マルグリット・ショパン)
モーリス・シュルツ(メイナーの村長)
ジェーン・モーラ(看護師)
アルバート・ブラス(執事頭)
N・ババニニ(執事頭夫人)

解説:
デンマークの巨匠カール・テオドール・ドライヤー監督が1932年に発表し、映画史にその名を残す古典的傑作と称されるホラー作品。幻想的なモノクロームの映像が観る者を魅了する一作。
IMAGICA BSより)
『吸血鬼』は独・仏・英3ヶ国語で製作された。オリジナル・ネガは失われたが、現存する独・仏の全長版に基づき映画の復元が行われた。この新しい独語版は、1998年にボローニャのシネマテークとベルリンのドイツ・キネマテークの共同作業により製作された。

あらすじ:
Vampyr_06アラン・グレイは、悪魔信仰や吸血鬼迷信の研究に没頭するあまり夢想家となり、現実と超自然の境界が付かなくなってしまった。これはそんな彼の不思議な体験の物語である。
不可思議なものを探し、あてどもなくさまよった彼はある夜、川辺の淋しい旅籠にたどり着く。
その村の名は‘クルタンピエール’。
その昔、一人の吸血鬼に滅ぼされたとの言い伝えがある村だ。
旅籠の部屋に通されたその時から彼は、呪文を唱えるような声、奇形の小男、場にそぐわない紳士など、不思議なものを見るようになる-


DonJuanPoster2まだ無声映画の時代、同期音声を付けた長編映画として世界初となるのが1926年の『ドン・ファン』(ワーナー・ブラザーズ)である(サウンドトラックには音楽と効果音が含まれているが台詞は録音されていない。)。その後の技術の発展により、1927年頃からは有声映画が主流となっていく。

公開当時の『ドン・ファン』ポスター

1931年製作のこの『吸血鬼』は、ヴァイオリンが奏でるメロディーにのって台詞が交わされるモノクロ作品。巨匠カール・テオドール・ドライヤー監督の傑作で、映画史にその名を残す古典作品だ。

アートフィルムであるこの作品は、短い会話とストーリーで構成されており、光と影の効果的な使用で今日まで賞賛されてきた。 ドライヤーはこういった特殊効果を生み出すのに、カメラのレンズの前に上質なガーゼのフィルターをかけて登場人物や大小道具をぼやけさせ、観客を夢の中にいるような気分にさせた。 1933年に公開されたこの初期のトーキー作品は、英語・フランス語・ドイツ語の3カ国の言語が収録された。
様々な長さのものやシーンのアレンジ版が残っており、『Vampyr: Der Traum des Allan Grey (The Dream of Allan Grey)』などといったタイトルで残っているものもある。(Wiki)

Vampyr_11Wikiに「アートフィルム」とあるように、この作品はどのシーンをとっても背景、人、物全ての配置が完璧で美しく、モノクロの陰影をより際だたせ一枚の絵のように見せる。大きな場面転換も無く、大きな音もほとんど無い。音楽に乗せて流れるように繋がっていく各シーンは、まるで動く挿絵が付いている小説を読むようだ。

それは旅籠の屋根に停まる風見鶏であったり、川の向こう岸を小躍りするように進んでいくパン(ギリシア神話の牧羊神)であったり、大きな鎌を持つ人であったりする。
Vampyr_02 Vampyr_07 Vampyr_03

Vampyr_12吸血鬼の僕となってしまった村の医師の屋敷は、古びた廃屋のようでいて、中はまるで迷路(ラビリンス)のように複雑だ。部屋にはドクロが飾られ、窓辺には赤んぼの骸骨が立っている。

吸血鬼ショパン夫人は、昨今のおどろおどろしいものではなく、中世の肖像画から抜け出てきたような老女だ。胸には時代がかった首飾りをかけており、それがなぜか恐ろしい。
吸血鬼の僕となってしまったのは、死刑執行された犯罪者。それらはこの世に実体はなく、「影」として現れる。壁や地面に写るそれら僕達は影絵のように動き、踊る。まるで操り人形のように。
Vampyr_08 Vampyr_09 Vampyr_10

そして吸血鬼ショパン夫人に血を吸われてしまった娘を助けるため、青年アランは身体から抜け出た魂の姿で奔走する。疲れ切ったアランがベンチに座りこんでうたた寝をしてしまい、はっと気づいて立ち上がった時、振り返って自分の身体を見下ろす場面は、思わずこちらがはっとなった。

これらあらゆるシーンに既視感を感じるのは、実はこの作品のあらゆるシーンを踏襲している映画がいかに多いか、ということだろう。それはホラー作品に限らない。あの『刑事ジョン・ブック』で最後に粉ひき小屋で上から落ちてくる穀物に埋まって悪者をやっつけるシーン。この方法は本作で既に使われている(穀物ではなく小麦粉で)。
これらはこの『吸血鬼』が「映画史にその名を残す古典的傑作と称される」証明と言えるだろう。
人を怖がらせ、不思議の世界に連れて行くのに、音も、台詞も、派手な効果も、色さえも不要だということを、この作品は語っている。

ではまた

  
■主な吸血鬼映画

1922
吸血鬼ノスフェラトゥ (Nosferatu: Eine Symphonie Des Grauens)
1931
1932
吸血鬼 (Vampyr)
1943
夜の悪魔 (Son of Dracula)
1958
吸血鬼ドラキュラ (Dracula)
1958
吸血鬼ドラキュラの花嫁 (The Brides of Dracula)
1960
血とバラ (Et mourir de plaisir)
伊・仏
1964
地球最後の男 (The Last Man on Earth)
米・伊
1967
吸血鬼 (The Fearless Vampire Killers)
米・英
1968
吸血鬼ゴケミドロ
1970
幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形
 
ドラキュラ復活・血のエクソシズム (Scars of Dracula)
1971
呪いの館 血を吸う眼
1974
新ドラキュラ/悪魔の儀式 (The Satanic Rites of Dracula)
1978
ノスフェラトゥ (Nosferatu: Phantom Der Nacht)
独・仏
1979
ドラキュラ (Dracula)
1983
ハンガー (The Hunger)
1985
1986
ティーンバンパイヤ (My Best Friend Is a Vampire)
1987
ニア・ダーク月夜の出来事 (Near Dark)
1992
ドラキュラ (Bram Stoker’s Dracula)
米・英・ルーマニア
 
1994
 
インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
 (Interview With The Vampire: The Vampire Chronicles)
1995
ヴァンパイア・イン・ブルックリン (Vampire In Brooklyn)
1996
フロム・ダスク・ティル・ドーン (From Dusk Till Dawn)
1998
ヴァンパイア/最期の聖戦 (John Carpenter’s Vampires)
2002
クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア (Queen Of The Damned)
2003
アンダーワールド (Underworld)
2004
ヴァン・ヘルシング (Van Helsing)
 
ナイト・ウォッチ (Night Watch)
2007
30デイズ・ナイト (30 Days Of Night)
2008
トワイライト~初恋~ (Twilight)
 
ぼくのエリ200歳の少女 (Låt den rätte komma in)
 
デイブレーカー (Daybreakers) →このブログの記事はこちら
2010
モールス (Let Me In)