イマジカBS「吸血鬼映画特集」で放送されていた1本。吸血鬼映画としてはこの作品『魔人ドラキュラ』が史上2本目となるらしい。確かに“吸血鬼”と聞いたらまず想像されるお姿をしておられる。ここから来ていたんですねー。
■魔人ドラキュラ - Dracula -■
1931年/アメリカ/75分
監督:トッド・ブラウニング、カール・フロイント
脚本:ギャレット・フォート
製作:トッド・ブラウニング 他
撮影:カール・フロイント
1931年/アメリカ/75分
監督:トッド・ブラウニング、カール・フロイント
脚本:ギャレット・フォート
製作:トッド・ブラウニング 他
撮影:カール・フロイント
出演:
ベラ・ルゴシ(ドラキュラ伯爵)
ヘレン・チャンドラー(ミナ)
デヴィッド・マナーズ(ジョン・ハーカー)
ドワイト・フライ(レンフィールド)
エドワード・ヴァン・スローン(ヴァン・ヘルシング教授)
■解説:
ドラキュラ伯爵とヴァン・ヘルシング教授の闘いを描いた、ユニヴァーサル版の吸血鬼もの。英ハマー・フィルム製のクリスファー・リーが演じたドラキュラも貴族然としていたが、こちらはもっと重厚。(allcinema)
■あらすじ:
イギリスの弁護士レンフィールドはロンドンに建つ豪邸の売買契約を結ぶため、トランシルヴァニアの貴族ドラキュラ伯爵の元へ。巨大で不気味な城に住む伯爵は村の人々から忌み恐れられており、到着したレンフィールドはその夜には伯爵の魔力により下僕にされ、そのまま一緒にロンドンへ。ほどなくレンフィールドは精神科病院に隔離されるが、突如ロンドンの社交界に現れた伯爵は、東欧の貴族として女性達の噂の的に ―
ヨーロッパの中でも異国情緒が漂うルーマニアの、それも辺境の地トランシルヴァニアからの来訪者。その上、貴族で城持ちとくれば噂になるのも仕方ない。秘密のヴェールを纏いながらも溢れ出す高貴な雰囲気。ミナの友人ルーシーはすっかりのぼせ上がってしまう。
1931年製作『魔人ドラキュラ』のお話は、レンフィールドの位置づけ以外、ほぼ1992年コッポラ監督『ドラキュラ』と同じ(『魔人ドラキュラ』のレンフィールドは物語冒頭でドラキュラ伯爵の元へ向かう弁護士として登場しているが、その後、伯爵をマスターと呼び、狂人となることは同じ)。
ただし、ドラキュラその人についてはあまり語られず、人となりの魅力も伝わりにくい。反対に他の登場人物はよく語り、行動するため、そちらから話は進められていく。映画全体として舞台のような演出が多く、美しいシーンも多い。とりわけトランシルヴァニアに建つドラキュラの居城は全てが大きく広く時代がかっている(が蜘蛛の巣だらけ)。
驚いたのはホラーとしながらも、ドラキュラによる吸血シーンは一切なく、「血液」の描写も無く、「牙」も無い。ドラキュラ伯爵が人間では無いという確かな描写は何も無い。確かに大きなコウモリがミナの周りを飛び回ったりの不気味シーンはあるものの、コウモリ変身シーンがあるわけではないし、吸血シーンがあるわけではないし、棺の隙間から出てくる手は映っても、蓋が開いて幽霊のようにスーッと起き上がるシーンさえ無いんですよ。手が映った後はもう棺の横に立っている。
唯一恐怖を煽っているのは、ドラキュラ伯爵の目元に光が差してキメ顔しているところかな(でも、その光が微妙にズレてる)。
彼が吸血鬼だというのは、我らがヒーロー“ヴァン・ヘルシング”により説明され、鏡に映らない伯爵を発見したのも彼だった。どの作品においてもヴァン・ヘルシングは頼りになる人で、本作でも大活躍。長年、研究してきた成果を遺憾なく発揮している(吸血鬼がトリカブトに弱いというのは初めて知った)。
じゃあ、全然怖くなかったか?というとそうでもなくて、管理人の苦手とするシーンが一つ。
ドラキュラと一緒に住む3人の女吸血鬼。
長いドレス(の何か)をスーッと引きずりながら滑るように歩くシーンは、美しく絵のようで、と同時にひどくゾッとした。他作品ではお色気モード全開な役柄が多い中、こちらは台詞もほとんど無く、ご主人の伯爵には従順。
同じく1931年に製作されたデンマークのドライヤー監督『吸血鬼』という作品があり、これも以前イマジカで放送されたものを観たことがある。
同年代に作られているものの、こちらはより古い映画のように感じられ、さらに情緒的なうえ、吸血鬼映画というのも何か違うような内容だ。けれども、当時のレビュー記事にも書いているとおり、色々なホラー要素の原点が凝縮され、本作よりもさらに美術的、絵画的なものになっている。
ホラーの原点がドライヤー監督『吸血鬼』とすれば、本作は吸血鬼ビジュアルの原点とも言えるだろう。
『吸血鬼』(1931) - Vampyr - ボローニャ復元版
人を怖がらせ、不思議の世界に連れて行くのに、音も、台詞も、派手な効果も、色さえも不要だということを、この作品は語っている。
吸血鬼映画一覧も掲載してます
それでも公開当時は、この観念的でも情緒的でも想像でも無いドラキュラ本人が実在するとしてロンドンに現れたことが、とてもホラーだったんだろう。特に自宅の寝室で眠る未婚の女性のそばに現れる、ということが。
コメント
コメント一覧 (5件)
確かにベラ・ルゴシは「顔力」がありますよね。
貴族然とした落ち着きと堂々とした態度だけでたじたじとはなりそうです^^;
ヴァン・ヘルシングが本当に退治出来たのかはさておき、この映画のセットなのかロケなのか、伯爵城の大階段などの美術には恐れ入りました。あの手摺りの無い階段を朦朧とした様子で降りていく女優さんはさぞ怖かったのではないでしょうか。
ラストなんかも、杭で刺す場面は無かったので、果たしてヴァン・ヘルシングは本当に退治できたのだろうか?まさか!? という意味が現代の感覚なら発生しますので、怖いですね。
ベラ・ルゴシは怖いですよ。普通に背広ネクタイ姿で微笑む写真を見たことありますが、あんなんが回覧板もってドアの外で立ってたら、息を潜めて居留守します。
魔人ドラキュラ 【映画】
「魔人ドラキュラ」です。
ドラキュラ映画は沢山あって、
さすがに私もすべて見ていません。
大体、簡単に手に入らないモノが多いんだよね。
なので、私が見た代表的なドラキュラ映画をチロッと紹介。
なんと言っても「魔人ドラキュラ」でしょうなぁ。
たぶん一番、ドラキュラらしいドラキュラの映画です。
実は「吸血鬼ノスフェラトゥ」というとってもナイスな吸血鬼映画があ…
ゆっくりした運び、役者のアップ及び決め顔、おどろおどろしいバックミュージック。舞台を観ているかのようでした。
ホントに意外だったのが首筋に噛み付くようなショックシーンが一切無かったことです。何か規制があったのか、元々そういうものが無くてもホラーとして成り立っていた時代だったのか、製作者側の意図なのか、、。
当然あるものと思っていたので驚きました。
今回のイマジカの特集は仰るとおり幅広いですねー。
最近の「血の伯爵夫人」は観たことがあるんですが、もう1本のほう(なんだったか、、)も楽しみです。もう録れているかなー
こんばんは。
私も今どんどんレコーダーに録画しまくっております。これだけの本数のしかも各時代時代にやっていた吸血鬼映画を一堂に会した特集は珍しいと思いました(贅沢ですけどどうせならC・リーのハマープロ版をもう何本か入れてくれるともっと嬉しかったのですが)
全部録画してから一気に見てやろうと思っていたのですが、この「魔人ドラキュラ」は今日か明日にでも再見しようと思っています。もう何年(何十年?)前か忘れたんですが、ユニバーサルのホラーシリーズが(「フランケンシュタイン」や「狼男」なんかと一緒に)初めてビデオになったとき見て以来でしたのでどれくらい印象変わったか確認したい気分になっています。今回は自分の記憶の中にある"舞台調のオーバーアクト"がホントだったかどうかを(^_^;)見直してみたいですね。
他にも「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」もけっこう好きだったし、「血の伯爵夫人」は初見なんでそちらもかなり楽しみにしています。また以前録画したカール・ドライヤーの「吸血鬼」(その節はご紹介ありがとうございました_(._.)_)を一緒に見ておくのも良いかもと思いましたねー。