『ライトハウス』(2019)~霧笛がもたらす終わりのない悪夢

悪夢系がまた出た…(-“-) 孤島に閉じ込められた灯台守の二人の男。はがされていくのは仮面なのか、本心なのか。タイトルの『ライトハウス』から感じられるような暖かみは本編内には一切無く、エンディングの男たちの歌にあるのみ。最後まで観させられていいたのは何だったんだろう・・?

■ ライトハウス  The Lighthouse – ■

The Lighthouse

2019年/アメリカ・ブラジル/109分
監督:ロバート・エガース
脚本:ロバート・エガース他
製作:ユーリー・ヘンレイ他
撮影:ジェアリン・ブラシュケ
音楽:マーク・コーヴェン

出演:
ロバート・パティンソン(イーフレイム・ウィンズロー/トーマス・ハワード)
ウィレム・デフォー(トーマス・ウェイク)
ワレリヤ・カラマン(人魚)
ローガン・ホークス(イーフレイム・ウィンズロー)

■解説:
「ウィッチ」のロバート・エガース監督が、「TENET テネット」のロバート・パティンソンと名優ウィレム・デフォーを主演に迎え、実話をベースに手がけたスリラー。外界と遮断された灯台を舞台に、登場人物はほぼ2人の灯台守だけで、彼らが徐々に狂気と幻想に侵されていく様を美しいモノクロームの映像で描いた。

映画.com


楽しみにしていたロバート・エガース監督の新作『ライトハウス』。『ウィッチ』に続く2作目ということだから、ただモノではないと予想はしていたけれど、まさかここまでただモノではないとは…(-“-)。 映画館に観に行こうとしていたものの、結局は観に行けなくて残念な思いで今まで待っていたけれど、行かなくてよかったかもしれない。だって映画館では2回続けて観ることはできないものね、それも、ところどころ一時停止しながら…

Contents

あらすじ

あらすじは上の解説にある通り。4週間の灯台守の仕事のはずが、嵐のせいで迎えの船が来れなくなり、日を追うごとに狂気に陥っていく二人の男の物語。

と思うでしょ?違うね、違うと思いますね。
狂気は最初から宿っていた。だって、これ見て。この島に到着したばかりの男のこの表情を

The-Lighthouse

どっちが普通じゃないか一目瞭然。答えはこの最初のカットに既に書かれていた。

左の年長の男はヴェテランの灯台守。右の若い男は経験が無い。二人揃って船で来たというのに名乗りもせずこの仏頂面。だからヴェテランはここの方針、自分のやり方を口うるさく説明する。経験の無い者はまずは雑用からと当然決まっている。一番大事な灯台てっぺんの灯りの仕事は初心者には任せられない。いずれ教えるにしてもまずは雑用。なんにせよ4週間しかないんだから、教えるまでいくはずもない。

けれどこの若者は不満顔。上に上がらせることさえしない老人に「なんだよ、やらせろよ。」「いいもの隠してるんじゃないのか」と思いつつも、雑用仕事は案外しっかり黙々とこなしていく。でも心の底にお互い不満があるから、会話もうまくかみ合わない。そこに被せるように海の言い伝えや呪いの言葉を聞かせる老人。
昔から世代の違いというものは存在する。

でも問題はそんなことじゃなかった。
老人の放屁やいびき、げっぷにうんざりしながらも、この海の男に魅力を感じていたのは確かだ。何日も経ってようやくお互いの名前を知らせた二人。ようやく名前の付いた二人の間には「嫌悪」と「魅力」の感情が行き来する。だが感じているのは若い男ウィンズローだけだ。彼は親元を離れ頼る者もなく生きている。今目の前にいる、父親と同じかそれより上のヴェテランの男トムと親しくなりたいのが本心だと思われる。だが何かがそれを邪魔する。

“何か”とは?

この後からネタバレがあるかも】
未見の方はご注意を

感想と解説

The-Lighthouse

それはウィンズローの過去。
そのやり直すことができない過去が彼の見るもの、聞こえるものに被さり幻想となる。彼は自分のせいではない、事故だったと説明するが、違う。そこまでの話の中で「ぽつんと座っている」「後頭部」「自分は立っていた」など、どうあっても事故ではなく事件であったと自らばらしていた。誰が聴いても分かることなのに、彼は罪から逃げようとしている。

その罪を暴こうと彼につきまとうのが、カモメであり、人魚であり、トムなのだ。

カモメは彼に執拗につきまとう(ように思い込んでいる)。自分に訴えるようにうるさく泣き叫ぶ。まるで彼の起こした罪を見ていたかのように。人魚は彼の慰めになる場合もあるが、結局は恐ろしい理解不能の生き物であり、彼を怯えさせる。全てが罪の意識からくる幻影だと彼は気づいていない。

そして相棒トーマス・ウェイク。
彼はごく普通の灯台守だ。年齢を重ね、酒を飲んではうるさく新人に説教をし、半分作り話のような昔の話をしたりする。自分の仕事の邪魔をするのも許さない。色々言うが一晩寝たら忘れてる。だがウィンズローは自分の罪をこのヴェテランの灯台守に投影する。時には彼も罪を犯したかのように、時には自分を罰する神として。
特に彼の話す伝承のような話は罪の意識に苛まれているウィンズローの心をえぐり、悪夢のような幻影として目の前に繰り広げられる。そして罰せられるのだ、こっぴどく。

The-Lighthouse


無惨にもカモメをたたき殺し、またもや罪を重ねたちょうどその時、風向きが変わり嵐がやって来る。もちろん、カモメのせいで嵐が来たわけでは無いだろう。けれど、海や山など大自然の中には人間なんかには考えも及ばない未知なる大いなる力が宿っている。自然の中で生きる男たちがそれを信じるのも頷けることなのだ。そうやって空を見、地平線を見、大海原を見て生きてきたのだから。

そして罪ある男はさらに罪を重ね、この島に閉じ込められる。海の男トムに「海鳥殺しは不吉だ」と言われたことで信じ込んでしまい、そしてさらに罪を犯すことになる ─

The-Lighthouse

モノクロで進められる本作は、嵐でない時でもきつい波が絶えず岸壁に打ち付け、ウィンズローに襲い掛かる。それを観ているこちらも常に濡れているような感覚を味わうことになり、ひどく不快な気分になる。そこに被さるように聞こえてくる灯台の霧笛。船上で通りすがりに何度か聞こえる霧笛は情緒のあるものかもしれないが、ずっと耳元で鳴っているかのような音は、ウィンズローが理性を失くしていく時にさらに大きく鳴り響く。

不快で落ち着かない背景の上に、「嫌悪と魅了」、「憎しみと信頼」、「異常とまとも」というような相反する感情が絶えずウィンズローを襲い、観ているこちらをも襲ってくる。いつしかこちらも何が事実で、何が妄想なのかわからなくなってくる。そしてラストに ─

ラストの意味

ラストの意味は、「罪ある者は永遠に罰を受け続ける」という地獄。決して罪を贖い終わらせることはない、出来ない。永遠に続く贖罪なのか(でもウィンズローが「贖罪」だと分かっているのかは疑問だけれど)。
トムはウィンズローにプロメテウスやデイヴィ・ジョーンズ、トリトンなどの大いなる力を持つ神の話をしては怖がらせた。 ウィンズローはプロメテウスの最後を自分に重ね、彼はその想像の中で死んでいったのかもしれない。

プロメテウス

Prometheus

ゼウスによって火を取り上げられた人間を哀れに思い、火を再度人間に与えたプロメテウスはゼウスの怒りをかい、カウカーソス山の山頂に磔にされたうえ、毎日肝臓を巨大な鷲についばまれるという責め苦を強いられた。プロメテウスは不死であるため食べられた肝臓は毎日再生されてはついばまれるという事が刑期の3万年続いた。

ところで、本作は実話を元にしていて、前にも映画化されているんだそう。

スモールズ灯台の悲劇

灯台を管理した2人のチームであるトーマスハウエルとトーマスグリフィスは、喧嘩することで公に知られていました。グリフィスが異常な事故で亡くなったとき、ハウエルは、彼が死体を海に捨てた場合、当局が彼を殺人で非難するかもしれないと恐れました。グリフィスの体が腐敗し始めたとき、ハウエルは死体のためにその場しのぎの棺を作り、それを外の棚に打ち付けた。強風が箱を吹き飛ばし、体の腕が小屋の窓から見えるようになりました。風が吹くと、突風が腕をつかみ、付属品が手招きしているように見えるように腕を動かします。彼の前のパートナーの腐敗した死体と灯台だけで働いていたにもかかわらず、ハウエルは家のランプを点灯し続けることができました。ハウエルがついに職務から解放されたとき、状況の影響は非常に感情的に負担がかかり、彼の友人は彼を認識しませんでした。その結果、統治機関は灯台の方針を変更し、灯台チームを3人の名簿にするようにしました。

Wikipedia
The_Lighthouse_2016
『灯台』(2016)
The-Lighthouse

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