イギリス風の軽快なテンポと小気味の良さ、大勢の多彩な役者たち。それら雑多なモノたちを一つの出来事を中心にまとめあげ見せるガイ・リッチーが帰ってきました、この映画『ジェントルメン』で。前回はブラッド・ピットが奇妙なパイキー役を演って大当たり。今回は誰が何を演るのかな~
■ ジェントルメン – The Gentlemen – ■
2020年/イギリス・アメリカ/113分
監督:ガイ・リッチー
脚本:ガイ・リッチー
製作:ガイ・リッチー他
製作総指揮:ロバート・シモンズ他
撮影:アラン・スチュワート
音楽:クリストファー・ベンステッド
出演:
マシュー・マコノヒー(ミッキー・ピアソン)
チャーリー・ハナム(レイモンド・スミス)
ミシェル・ドッカリー(ロザリンド)
ヘンリー・ゴールディング(ドライ・アイ)
ジェレミー・ストロング(マシュー・バーガー)
コリン・ファレル(コーチ)
ヒュー・グラント(フレッチャー)
エディ・マーサン(ビッグ・デイヴ)
チディ・アジュフォ(バニー)
ジェイソン・ウォン(フック)
サミュエル・ウェスト(プレスフィールド卿)
トム・ウー(ジョージ卿)
■解説:
「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」「スナッチ」のガイ・リッチー監督によるクライムサスペンス。莫大な利権をめぐり、紳士の顔をした強欲な奴らによる、裏の裏をかくスリリングな駆け引きが展開する。
■あらすじ:
イギリス・ロンドンの暗黒街に、一代で大麻王国を築き上げたマリファナ・キングのミッキーが、総額500億円にも相当するといわれる大麻ビジネスのすべてを売却して引退するという噂が駆け巡った。その噂を耳にした強欲なユダヤ人大富豪、ゴシップ紙の編集長、ゲスな私立探偵、チャイニーズ・マフィア、ロシアン・マフィア、下町のチーマーといったワルたちが一気に動き出す ─映画.com
ま、パイキー役で大当たりって思ったのは管理人なんですけど、、。
『スナッチ』が大好きで何度も観ている管理人momorex。本作のあらすじを読んで、あ、もしかしたら…?あの時のガイ・リッチー監督が帰って来たのか?って、早速本作を借りてみた。
『スナッチ』には少し足りないけれど、紳士見せかけワル、根っからのワル、ごつい身体で紳士的なワル、チャイニーズ・ワル、ロシアン・ワル、地元のワル、老獪なワル、チンピラ・ワル、黒人、パイキー(ジプシー)。各界、各世代の色々なワルたちが知ってか、知らずか、巨額の金に釣られて大集合している感じは『スナッチ』そのもの。
一般人は一切巻き込まず(窓から落ちた人もアレだったし)、ワルたちだけで切ったハッタの世界の中で銃口を向け合っている感じも『スナッチ』で罪が無い。ミッキーが扱っているのが国によっちゃ合法な大麻というのも良い点と言える。
では、どんなお話かと言うと ─
アメリカ人ミッキー・ピアソンは奨学金でオックスフォード大学に在学中、金持ち学生相手にマリファナを売る商売を始めたことから、そのビジネスにのめり込み、大学を辞めて裏の世界に足を踏み入れた。元からいる競合相手を潰しながらのし上がり、ロンドンの裏社会を牛耳るまでになったミッキー。だが彼は平穏な暮らしを求め引退を決意、アメリカの富豪マシュー・バーガーに事業買取を提案する。
だが、ミッキーのビジネスが4億ポンド(1ポンド=約156円)の値が付くとなるや、裏社会の男たちが一斉に動き出し、彼は命さえ狙われる羽目になる。そのうえ、大勢の貴族たちの前でミッキーに恥をかかされ激怒したタブロイド紙の編集長ビッグ・デイブはミッキーの足をすくうため、探偵フレッチャーを雇い調査開始。だがそのフレッチャーさえもバラされては困るであろうミッキー関連ネタを調べ上げ、ミッキーの腹心レイモンドのところに強請に訪れるのだった ─
話の大筋はこんなもんで、しっかりとした絆で結ばれ信用できるのは、ミッキー夫妻と腹心のレイモンドの3人だけ。後は、我欲のために集まっては消え、集まってはバラされていく男たち。
ミッキーとビジネスの買取額を決めながら、なんとか下げる手立てがないかと知恵を絞るバーガー、その横から少しでも安く脅し文句でけりを付けようとする若いドライ・アイ、その後ろで糸をひいているかのようなチャイニーズ・マフィア、ビジネス価値を下げるのが目的なのか、ミッキーの大麻農場に強盗に入った地元チーマー、などなど。誰がどう関わって、誰と誰が手を結び、誰が得して誰が損するのか、複雑な因子が絡み合う。
けれど、ガイ・リッチーらしく、実は単純という(‘ω’)
これらの絡み合いのストーリーを語っていくのが、久しぶりに見たヒュー・グラント。
実は若い頃の ヒュー・グラント はにやけた感じがあまり好きじゃなくて彼の出演作はほとんど観ていないんだけど、いつのまにか、ちょっと背のあるアル・パチーノみたいになってた… 。それも、なんとも嫌らしい自分を利口だと勘違いしてマフィアを強請に来る探偵役とは!ぃゃ、実際この役はアル・パチーノでも良かった気はする(が、そこは半分イギリス映画だしね)。
ま、その探偵が強請のネタをミッキー腹心のレイモンドに説明する話こそが、本作の物語の進め方。良くも悪くもフレッチャーは(も)、重要な役どころ。
そしてそれを、時に茶々を入れ、時に反論しながら聞いているのがレイモンド・スミス( チャーリー・ハナム)。
チャーリー・ハナムと言えばなんといっても「サンズ・オブ・アナーキー」と『パシフィック・リム』でしょ。バイク・ギャングと地球を救うヒーローという真逆の役どころだけど、どちらも素直で一直線的な彼の良さが出てとても(かっこ)よかった(*’ω’*)
『パシフィック・リム』(2013) - Pacific Rim –
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で、本作のレイモンドはどうかというと、ギャングのボスに本音で話しつつも忠実な腹心に徹底していて、ボスから信頼されている利口で静かな大人の男の感じ。これがまたよく似合ってた。作品の半分くらいは腹の立つフレッチャーの話を静かに聞いているだけだから、最初は、なんだ、あまり活躍しないのか…チェッ(-.-)みたいに思って観ていたんだけど、ぃゃいや後半あたりから大活躍するよ。さすがチャーリー。動き出すと止まらない。
特にチンピラ複数人の部屋に行って、チンピラに話を聞かせている場面なんて、タランティーノの『パルプ・フィクション』を彷彿。どういった面白い展開になるのかとワクワクしたわ。
次にご紹介するのが、地元のボクシング・チームのややこしいチョイワル集団と、それを束ねるその名も“コーチ”。管理人はチェッカーズって呼んでる。
『スナッチ』では3人のおとぼけ黒人チームが何も考えずに強盗に入ってえらい目にあっていたけれど、今回はこのチェッカーズがミッキーの大麻農場に強盗に入って、それを知ったコーチが落とし前代わりにレイモンドのお手伝いをすることになる。でもね、こんな感じで、どこから見てもおとぼけなんだけど(なんでチェック?)、なかなかできる仕事さばき。肝心なところで肝心な動きをして、レイモンドを助けるよ。以前の黒人チームよりも見どころはある。
コーチ役は我らがコリン・ファレル。
あ、コリン・ファレルも好きだったんです、一時。魔法ものとかディズニーものとかに出て丸い感じになってからは、あんまり見なくなったんだけど、ようやく2022年に公開される予定の『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のペンギンにはちょっと期待してる。まだビジュアルもあまり出てなくて想像できないんだけど、ダニー・デヴィートのペンギンとはまた違った感じなのかな?次のバットマンも何か重々しい感じだから、コミカルにはならないようには思うけど。
登場人物は他にも地元のいきったワル少年や、チャイニーズ・マフィア。チャイニーズは『スナッチ』には出てこなかったなー。でもラストは、最後を盛り上げるのはやっぱりロシアン・マフィア。怖くて笑える存在なのは本作でも同じ。ラストをピリッと引き締めるよ。
ということで、『スナッチ』好きならぜひお勧めしたい本作『ジェントルメン』。ついでに『ファイト・クラブ』も押しとこっと。
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