『エクソシスト』 (1973)のラストを飾るキンダーマン警部とダイアー神父。この二人の何気ない会話が当時、悪魔祓いに疲れた者たちを癒したのだった。彼らはその後も親交をあたため、17年経った今も連れだって映画館に足を運んでいた。そう、この事件が起きるまでは ─
■ エクソシスト3 – The Exorcist III – ■
1990年/アメリカ/110分
監督:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
脚本:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
原作:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
製作:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
製作総指揮:ジョー・ロス他
撮影:ジェリー・フィッシャー
音楽:バリー・デ・ヴォーゾン
出演:
ジョージ・C・スコット(キンダーマン警)
エド・フランダース(ダイアー神父)
ブラッド・ドゥーリフ(双子座殺人鬼)
ジェイソン・ミラー(患者X)
ニコール・ウィリアムソン(モーニング神父)
スコット・ウィルソン(医師テンプル)
ナンシー・フィッシュ(看護婦アラートン)
ジョージ・ディセンゾ(ステッドマン刑事)
ドン・ゴードン(ライアン刑事)
リー・リチャードソン(学長)
メアリー・ジャクソン(クレリア婦人)
ヴィヴェカ・リンドフォース(ナースX)
■解説:
『エクソシスト』の原作者であるウィリアム・ピーター・ブラッティが、最も気に入っていたキャラクターのキンダーマン警部を主人公にした物語を構想し、続編として『Legion』を書き上げ、自ら映画化した作品。『エクソシスト2』の出来に不満を持ったブラッティが1作目『エクソシスト』の正当続編として作ったものである。Wikipedia
驚いたことにこの『エクソシスト3』は今まで観たことがなかった。おそらく2を観てがっかりし、3など観ない方がいいと心に決めたのだろうと思われる。最近になって解説に「2に不満を持った『エクソシスト』原作者が監督した正当な続編」というのを見つけ、もしかしたら自分は大間違いを犯していたのでは…(-.-)と恐怖した昨日。
その通りだった。間違っていた。
これほどに「悪魔」を恐ろしく、分かりやすく描写した作品が他にあっただろうか?『エクソシスト』でリーガンに憑りついたパズズと思われる悪魔は、 私が心配した通りカラス神父と共に滅びはしなかった。
今回、このパズズに対峙するのは1作目の事件を捜査していたキンダーマン警部。どうか負けないで、警部…

あらすじ
1990年、ワシントン州ジョージタウン。
ある朝、ポトマック河畔に少年の遺体が発見される。左手の中指と首を切り落とされ、首の代わりにピエロのメイクが施されたキリスト像が置かれているという残忍かつ異常な事件だ。右手に双子座のマークが彫り込まれているのを発見したキンダーマン警部は、15年前の「双子座殺人事件」を思い出す。だがこの事件は既に解決済み、犯人も処刑されていたのだった。
捜査が難航する中、第二の事件が起きる。
今度の被害者はカナバン神父。あろうことか教会の告解室で遺体が発見された。状態はポトマック河畔の少年と酷似しており同一犯かと思われたものの、残されていた指紋が違う。捜査が行き詰まる中、第三の事件が。今度の被害者も神父、それもキンダーマン警部の友人、ダイアー神父だった。

ダイアー神父は検査のために入院していた病室で、血管にチューブを差し込まれ血液を全て抜き取られるという悲惨な殺され方だった。そのうえ抜いた血液は何本もの標本瓶に保存され、まるでトロフィーのように病室に並べられていた。ダイアー神父が殺された時間はキンダーマンが見舞った後であったことも判明。どの被害者も生きている内に薬で身体を麻痺させられ、自分に対する凶行を目撃する中で死んでいった。
猟奇連続殺人と思われるものの、残されていた指紋が違う。捜査はますます難航する。
宗教的儀式のような殺害方法に、教会の学長に被害者三人に何かつながりが無いかと相談に行ったキンダーマン。学長はすぐさま17年前の「リーガン・マクニール悪魔祓い」が関係していると話し始める。カナバン神父は現学長の前任者でリーガンの悪魔祓いを始めるにあたり、カラス神父に調査させていた。ダイアー神父はカラス神父の友人で今際の際に立ち会った。少年の母親はリーガンの悪魔憑きの音声を分析したスタッフの一人だった。
ここにきて大きく動いたかに見えた3つの殺人事件だったが、ますます謎は深まるばかり。そんな中、病院の医師テンプルから双子座殺人事件の犯人だと名乗る患者が隔離病棟にいると連絡が入る。その患者は15年前に入院したまま意識が無かったが、数日前に意識を取り戻した。すぐさま病院に向かったキンダーマンはその患者の顔を見て驚愕した。その顔はカラス神父にそっくりだったのだ ─

みどころと感想
ここまで、まだ悪魔らしきものはほとんど登場していない。3つの猟奇殺人、それを調べる警察、とまだ犯罪ミステリーのような仕立てで進んできている。だがようく見ると、被害者に語り掛けている妙な声、不気味な入院患者、居丈高でどう解釈していいのか分からない看護師、教会に叩きつけるように吹きすさぶ風などなど、これはやっぱり『エクソシスト』なんだと観る者に容赦はない。
今思うと既に二つ目の事件の頃には、キンダーマン警部はどっぷりとパズズの領域に、足が抜け出せないほどにはまり込んでいた。親友のダイアー神父を夢に見たのだ。それは広く大きな部屋に広がる病室のような、天国行きの駅のような奇妙な場所で、右往左往する人々や患者、案内する天使たちでごった返している。その中に首を太い糸で縫い留めた被害者が見える。その奥にはダイアー神父の姿もあり、彼の首にも太い糸が。

『エクソシスト』でもそうだったが、本作もとても凝った映像表現がなされており、目が離せない。上の広い部屋の様子もそうだが、吹き込んだ風に思わず開いてしまうキリスト像の目。キリストが目を開かずにはいられない“何か”が押し寄せてきたようだ。そして『エクソシスト』ならではの光景も見ることが出来る。何が“ならでは”なのかは見てのお楽しみ。
そしてカラス神父に似た11号独房の男が出てくる頃には、はっきりと悪魔vs人間の構図が示される。なぜ独房の男がカラス神父なのか、なぜ双子座殺人事件の犯人だと名乗るのか、なぜ今回の一連の事件について詳しいのか…。それはもう、たった一つの結果を指している。はっきりと強く指し示している。
ここでは敢えて書かない。この『エクソシスト3』をぜひ観て欲しいから書かないでおこう。
でも一つだけ。

本当にカラス神父は気の毒だった ─
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