『デッド・ドント・ダイ』 (2019) ~死人は死なない

「絶対、面白いやつや」って思ってたけど、さすが私の眼力は(いつもと違って)間違っていなかった(‘ω’)。豪華な出演者にゾンビとおふざけ。それもただのおふざけじゃない高度なテクニックが使われている。さすがビル・マーレイだ(使ったのはアダム・ドライバーだけど)。

デッド・ドント・ダイ

■ デッド・ドント・ダイ - The Dead Don’t Die – ■
2019年/スウェーデン・アメリカ/104分
監督:ジム・ジャームッシュ
脚本:ジム・ジャームッシュ
製作:カーター・ローガン他
製作総指揮:フレデリック・W・グリーン他
撮影:フレデリック・エルムズ
音楽:スクワール

出演:
ビル・マーレイ(クリフ警察署長)
アダム・ドライバー(ロニー巡査)
クロエ・セヴィニー(ミンディ巡査 )
ティルダ・スウィントン(葬儀屋ゼルダ)
スティーヴ・ブシェミ(農夫フランク)
ダニー・グローヴァー(ハンク)
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(ボビー)
RZA(配達人ディーン)
ロージー・ペレス(ダイナー女性1)
エスター・バリント (ダイナー女性2)
イギー・ポップ(コーヒー・ゾンビ1)
サラ・ドライバー (コーヒー・ゾンビ2)
セレーナ・ゴメス(ゾーイ)
トム・ウェイツ(世捨て人ボブ)

■解説:
鬼才ジム・ジャームッシュがビル・マーレイとアダム・ドライバーを主演にメガホンをとったゾンビコメディ。

■あらすじ:
アメリカの田舎町センターヴィルにある警察署に勤務するロバートソン署長とピーターソン巡査、モリソン巡査は、他愛のない住人のトラブルの対応に日々追われていた。しかし、ダイナーで起こった変死事件から事態は一変。墓場から死者が次々とよみがえり、ゾンビが町にあふれかえってしまう。3人は日本刀を片手に救世主のごとく現れた葬儀屋のゼルダとともにゾンビたちと対峙していくが ─

映画.com


デッド・ドント・ダイ

70年代の古いゾンビ映画の、フィルムで撮ったような怪しいオープニング。墓場の横の一本道を一台のパトカーがゆっくり走って行く。ガソリンスタンドがあり、ダイナーがあり、少年強制施設があり、葬儀屋がある。典型的なアメリカの田舎町。パトカーが目指すのは森に住む”世捨て人ボブ”のねぐらだ。農夫のフランクからニワトリを盗まれたと訴えがあったからだが、何十年も森で住むボブは今まで人の物を盗んだことなどない。それよりもフランクの方が〇ず野郎だとクリフ警察署長は言う。

ロード・オブ・ザ・リング』のドワーフのような世捨て人ボブは、自分のテリトリーに近づく者には相手が警察だろうと威嚇し蹴散らすが、最近森のちょっとした変化、落ち着きのないアリの行進や妙な場所にまで生えてきたキノコに気がついていた。ちょうど同じ頃、パトカーのラジオやダイナーのテレビが「自転軸のズレ」について報道している。どこかの大きな国と大きな企業が行った大きな工事が元で、地球の自転軸にズレが生じ、地球規模で気象や生物の行動に異変が起きていると。

それは、ここ小さな片田舎の町センターヴィルでも起き始めていた。いつまでも沈まない太陽、ペットの失踪、攻撃的な飼い猫に始まり、繋がりにくい無線やすぐに空になるバッテリー、テレビの電波障害。そしてラジオから流れるカントリー・ミュージック「The Dead Don’t Die」。

クリフ署長「なんなんだ、この曲は。ロニー、知ってるか?」
ロニー巡査「知ってますよ、テーマ曲ですもん。」
クリフ署長「?」

いえ、ここね。この後、ロニーがケーブルテレビのファミリードラマかホラードラマのタイトルでも答えるのかと、じっと待ってしまいましたよ、私も。でも会話はここで終了して何のことだろう?と。

だが、この後とうとうゾンビが登場する。このテーマ曲に乗って ─

始まりはダイナーの女性二人。まるで熊か狼にやられたかのように腹の肉が食われてる。でも爪痕は一切なし。どう見てもおかしい。クリフ署長はあることにも気が付いた。
クリフ署長 「コーヒーポットを落としていったな」
クリフ署長 「で、これがなんだか分かるか?ロニー」
ロニー巡査「ゾンビでしょ」
クリフ署長 「!?」

クリフ署長はまたしても「?」に。今度は「!」付き。

デッド・ドント・ダイ

確かにこの町のガソリンスタンドのボブはホラー映画オタクでゾンビにも詳しい。だからと言って、ゾンビがほんとにいるはずがないじゃないか?とクリフ署長の顔は言っている。が、ロニー巡査は何度も「まずい結末になる」と、まるで最後を知っているかのような口ぶりだ。そこでクリフ署長は、はたと気が付いた。

クリフ署長「ロニー、お前はなんでさっきから”まずい結末になる”ばかり言うんだ?まるで結末を知っているみたいじゃないか」
ロニー巡査「知ってますよ、台本読んだんで」
クリフ署長「!!??」

もう「!」と「?」がダブルになっちゃった。なにしろクリフ署長の台本には結末まで載ってなかったんですって。自分のところだけで。

ここまで聞いて、もうこのまま二人でしゃべっててくれないかな(‘ω’)ノと思ったのは私だけじゃないはず。ずっと漫才していて欲しかったんだけど、なにしろ本作のタイトルに「Dead」が付いているだけに出さないわけにはいかないし、他の豪華な登場人物もそれぞれ台本を持っているだろうから、この会話の後は「ゾンビありき」で進んで行くことに。少しずつ始まってはいたけれど、いきなり台本に沿って非日常に放り込まれることになったセンターヴィルの町の人々…。

次々に墓穴から出てくるウォーキング・デッドたち。おじいさんも、おばあさんも、若者も子どもも、墓という墓から、センターヴィルで亡くなった全ての人の墓から出てくる勢いで、町にはどんどんゾンビがあふれてくる。あふれたゾンビが何をするかと言うと生きている人を襲っては肉を食い、食われた者からゾンビになっていく。全く終わりが無い。

今回のゾンビたちはそんなに早くは移動できないけれど、何やらそれぞれに名詞をつぶやいている。”アイスクリーム”だの、”キャンディ”だの、”コーヒー”だの、”Wi-Fi”だの、、、。どうやらそれぞれが欲しいもの、最期まで欲しかったものを求めてさまよっているみたいだ(途中で人の肉を食らいながら)。死んでも物欲は消え去らない。死んでゾンビとなり彷徨いながらも「物」を求めてやまない底なしの欲。

などと、言っている間に町の人のほとんどはゾンビになり果てた。残るは署長とロニー巡査、葬儀屋のゼルダのみ。だがゼルダは途中で金星からの迎えが来たらしく、さっさと戦場を離脱してしまった。クリフ署長とロニー巡査は意を決し、パトカーから降りて最後のその時まで戦う。

フォースと共にあらんことを ─

ところでね、まぁ台本があったことだから仕方ないっちゃないんだけど、最初に墓場でゾンビが這い出たような穴を見つけた時に、あの時に、お墓それぞれ全部をコンクリートで固めるとか、せめて大きな石で蓋をしとくとかしてたら良かったんじゃないのかなぁ。台本があったんだろうけどさ…

この世は完璧だ
細部まで味わえ

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