赤子だけが知っている『マザーズ』(2016) -Shelley-

“マザー”がタイトルにつく映画作品は(いい意味で)碌なものがない。本作もそう。マザー(母)と言えば対になっているのが子どもなわけで、やっぱりダーク系に走ってく。今回の正体は… ネタバレしようにもネタがないぞ(-“-)。じっくり静かに最後まで観て各人でオチをつけるタイプの作品です。未体験ゾーンの映画たち2022上映作

■ マザーズ  – Shelley – ■

Shelley-2016

2016年/デンマーク・スウェーデン/92分
監督:アリ・アッバシ
脚本:アリ・アッバシ他
原作:アリ・アッバシ
製作:ヤコブ・ヤレク
撮影:シュトゥルラ・ブラント・グロブレン他
音楽:マーティン・ディルコフ

出演:
エレン・ドリト・ピーターセン(ルイス)
コスミナ・ストラタン(エレナ)
ピーター・クリストファーソン(カスパー)
ビョルン・アンドレセン(レオ)

■解説:
「ボーダー 二つの世界」の鬼才アリ・アッバシが2016年に手がけた長編デビュー作で、代理母となったシングルマザーを襲う恐怖を描いたホラー。

映画.com


ボーダー 二つの世界』の監督作と聞いて、なるほどなって思った。あっちは自然の中で生きるべき女性が主人公だった。本作『マザーズ』は自然の中で生きようとしている女性が主人公。何が違うかというと、「人の世界で一生懸命に生きようと努力したものの、内なるものが大自然と呼応し抗うことは不自然なんだって気が付く物語」と、「21世紀の世界であえて自然に生きていこうとする中で、その生き方に耐え得る者だけが選ばれる物語」の違い。

Contents

あらすじ

5歳の息子と住むアパートを手に入れるため、住み込みの家政婦に応募したエレナ。仕事が決まった先は電気も水道もひかれていないような湖畔に建つ家で自給自足の生活をしているカスパーとルイス夫妻。資産家の二人に子どもはおらず、妻ルイスの体調が悪いのが家政婦募集の理由だった。元来、明るく屈託のないエレナはすぐに二人と打ち解け、ルイスに笑顔が戻りつつあった。

Shelley-2016

そんなある日、夫婦に何故子どもがいないのか聞いたエレナは、ルイスから代理出産を打診される。二人を気に入っていたこととアパート購入の援助もするとの条件でエレナは引き受け、順調に受精、妊娠するのだが ─

見どころと感想

得体の知れない何かを宿してしまった母で有名なのは『ローズマリーの赤ちゃん』。これにはタイトルに“マザー”は付いていないけど、対になる“子ども、赤ちゃん”は付いている。「母と子」という意味では、どっからどう攻めても慈愛に満ちた心豊かな感動話になるはずだというのに、こと映画の世界においては物騒でやっかいな狂気の呪われ話が多いのはどうしてだ。

本作もその類い。小柄で可愛いタイプのエレナが息子と暮らすアパート購入費用のために住み込み家政婦の職を見つける。その家の住人夫婦は少し変わったところがあるものの、良い人たちですぐに打ち解け、それなりに楽しい毎日を送っていたエレナ。そしてこの夫婦のためならと代理出産も引き受ける。
ここまでは良かった。

でも妊娠早々、体調が悪化し苦しむが、エレナは最初はこんなものだろうと考えていた。けれど体調は悪くなるばかりで精神的にも不安定に。もちろん夫婦はエレナと自分たちの産まれてくる子どもに寄り添い、看病する。だが普通の妊娠時とは全く違うと思われるような疲れや痛みにエレナは耐えきれず、とうとう異常行動を起こし始め、事態は取り返しのつかない方向に ─

と、ここまでは良かった。ある種のホラー界ではよくある話だ。ここからこの作品に期待するのは「その理由」のみ。“その”とは、いったいエレナのお腹には何が宿っているのか?ということ。いったい何が彼女をここまで苦しめるのか?あんなに明るく朗らかな女性だったのに、いまやルイスと逆転。顔色が悪く、何かに憑りつかれたような面持ちになっているではないか…。反対に子どもへの期待でルイスの顔は光り輝いている。いったいエレナに何が?

そういえば、エレナの実家の母とエレナの息子とは彼女は時々電話で話してはいるが、実物の姿は一切出てこない。ここで考える。

エレナは以前、何を産んだのか?

いや、待てよ。そういうとルイスはどうあっても流産してしまう体質だと言っていたな。それは気の毒なことだけど、

ルイスはいったい、かつて何を宿していたのか?

こうやって映像化されていない部分を想像し、悪い方に悪い方につい持っていきがちなホラーファン。そしていったいどうなっていくんだろうとワクワクして最後まで見守っていったんだけどね…。

Shelley-2016
お約束通りの黒犬も出てくる(ただし可愛い)

ちょっとオチを考えてみる

未見の方はご注意を

なんだろうな。「実はこれだったんだ!」っていう明快な答えはない代わりに、原題でもある女の子シェリーは、まず無事に産まれ、そこから無事に大きく育つために、自分の邪魔になるだろう分子を排除したってことでいいのだろうか…?
電気も科学も無縁な自然の中では、弱い者、不要なモノは淘汰され、必要とされる者だけが残される。いずれ争いの火種になるかもしれない代理母は不要。自然に身をゆだねることが出来ない者も不要。資産はある。あとは無償の愛で成長するまで育ててくれる者さえいればいい。
これこそが自然の中で生きていく者の持って生まれた知恵なのか…

わっ。今思いついたんだけど、これっていずれ起きる核戦争を暗示してる?文明を失い、資源を失い、力のある者だけが生き残るに値する世紀末の世界 ─。
…あー、マッドマックスの見過ぎだな(-ω-)/

少し調べただけでもこんなにある!
物騒な“マザー”もの作品

あんまり進んで観る気がしないのは、なんでだろうか

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Shelley-2016

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