シッチェス・カタロニア国際映画祭で公開後、日本でも2021年7月に劇場公開。当時、映画館にぜひ観に行きたかったけれど昨今の事情で断念し、観ることができるのを待ちに待っていた『サイコ・ゴアマン』。もうタイトルとサイコな少女がどうたら、というあらすじだけで魅力満開の本作。観ての感想も期待していた以上のものが詰め込まれていて大満足の、昔懐かしい「着ぐるみサイコ・悪魔ホラー・アクション」作品!!

■ サイコ・ゴアマン  PG: Psycho Goreman – ■

Psycho-Goreman

2021年/カナダ/95分
監督:スティーヴン・コスタンスキ
脚本:スティーヴン・コスタンスキ
製作:スチュアート・F・アンドリュース他
撮影:アンドリュー・アペル
音楽:ブリッツ//ベルリン

出演:
ニタ・ジョゼ・ハンナ(ミミ)
オーウェン・マイヤー(ルーク)
アダム・ブルックス(グレッグ/パパ)
アレクシス・ハンシー(スーザン/ママ)
マシュー・ニネバー(サイコ・ゴアマン)
クリステン・マックロック
スティーヴン・ヴラホス
リース・プレスリー
黒沢あすか(ウィッチマスター/声)

■解説:
カナダの過激映像集団「アストロン6」のメンバーで、「マンボーグ」「ザ・ヴォイド」の監督として知られるスティーブン・コスタンスキが監督・脚本を手がけたSFスプラッターアドベンチャー。

映画.com


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■あらすじ:

Psycho-Goreman

ある日、ルークとミミの兄妹は自宅の庭でピンクに光る石を掘り出した。だがそれは、太古の昔、宇宙のすべての正義を破壊すべく大暴れしていた”名も無き悪魔”を封じ込めていた宝石だったのだ。このことにより目覚めた“悪夢の公爵”と呼ばれていた名も無き宇宙の悪魔は、すぐにでも破壊の限りを尽くそうとしたものの、自分の力と一体となっている石「プラクシディケの宝石」を人間の少女ミミに奪われたことから、ミミの命令に絶対服従な身分となってしまう ─

■感想:

で、どうなるの?っていうお話。

大昔に宇宙を荒らしまわっていた通称 “悪夢の公爵” 。スター・ウォーズやアベンジャーズに出てくる感じの地球、全人類、全宇宙の敵ともいえる存在が、(宇宙人から見て)宇宙の果てにある(案外美しい)地球の地面に割と浅め(昔は深かったのかも)に埋められていたことから始まる恐ろしい殺戮の世界……

と、始まれば、それはよくあるスペースオペラになるんだけれど、この宝石と悪魔を見つけたのが、全地球に住む、おそらく未成年の中では一番のサイコとも考えられる一人の少女だったために、悪魔自身が恐ろしい目にあうことになっていく、みたい…なオープニングに。

Psycho-Goreman

それもね、少女側がその石「プラクシディケの宝石」の持つ力を知らなければ、ここまで悲惨な始まりにならなかっただろうに、わざわざ、わざわざ宇宙の悪魔は「自分はその石を持つ者の命令には絶対服従しなくてなはらない」って教えてしまう(‘ω’) この宝石は悪魔の胸にはまっていてはじめて悪魔の偉大な力を発揮できるようになっている。それなのに、その石と悪魔本体を同じ場所に埋めるとはね、そもそも間違ってるんだね(-“-)

プラクシディケの宝石

古代の黒魔術師が銀河の闇からエネルギーを集めて作ったといわれる遺物

悪魔を封印したのは宇宙の「テンプル騎士団と惑星同盟」。詰めが甘かったために今回の事態となったけれど、宝石と悪魔の目覚めを宇宙の果てで察知することはできたため、悪魔を滅ぼすためテンプル騎士団の残虐な宇宙人も地球を目指すことに。

悪魔にもそれは分かっているけれど、悪魔と宇宙の歴史や宝石の力を力説するも、全く耳を貸さない地球の少女ミミと兄のルーク。今にも宇宙を巻き込んだ戦争が始まるかという時に、この悪魔に名前“サイコ・ゴアマン 通称PG”を付け、どうやって自分だけが持つ自慢の悪魔を学校で自慢しようかと考えてはほくそ笑んでいる。そもそも、そもそも、このミミは周囲の人間を自分のための奴隷くらいにしか考えていない、生まれ持ってのサイコ気質。その彼女が、地球がどうの、宇宙がどうのっていう話を聞かされても全く耳に入るはずはない。自分の利益の計算しかできないんだから。
巻き込まれたのは、地球人じゃなくて、ミミ以外の人、宇宙人全て(-“-)

Psycho-Goreman

こうやって宇宙で最強の悪魔と自負していたPGと地球でのびのび育っていたミミとその家族が出会ったことから、それぞれが持つ人生観や愛、仲間、守るべきもの、なんかに目覚めていくというストーリーではあるんだけれど、本作タイトルは付けた方も付けられた方も『サイコ・ゴアマン』。固い鎧に守られたサイコな者なのだ。

いろんなものに目覚めはしたが、サイコ人生まっしぐらな点は変わらず、守る対象が自分だけから家族に広がっただけ。そしてそれはミミとPGだけじゃない。ミミを育てた両親さえも、なんなら優しき兄のルークさえも自分たち家族以外に考えは及ばない。

こうして本作ラストのその後は、想像するも恐ろしい世界になっているだろう。いや、世界、地球、宇宙そのものが存在していないのかもしれない。
けれど私には聞こえる。一家と悪魔の笑い声が…

Psycho-Goreman

クレイジーボール

参加者全員がボールを持ち、2チームに分かれて相手にボールを当てた数を競うゲーム(…おそらく)。お尻に当てると5点得点らしい。


■さいごに

アイアン・スカイ』を初めて観た時にも感じた“数々のSF大作にオマージュを捧げながらもコメディタッチを盛り込み、超真面目にきちんと仕上げるB級大作”的なエッセンスが詰め込まれた本作『サイコ・ゴアマン』(略してPG)。PGはこのエッセンスに各種ホラー大作までも詰め込んだ超大作である。

Psycho-Goreman

色々詰め込み、着ぐるみ感満載であるにも関わらず、どの登場人物も、セリフが無い登場人物さえにも、きちんと存在意義を持たせ、真面目にサイコな起承転結を徹底させて、そのままラストまで引っ張っていく物語に魅了される。その破綻の無い筋の通った物語があるからこそ、70~80年代風の(お金をわざとかけていないだろう)着ぐるみ悪魔やお茶目な宇宙人が逆にリアルに見えてくる不思議。

『アイアン・スカイ』がそうであったように、続編は不要だと思います(‘ω’)

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Psycho-Goreman

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