ホラーと言ってもいいほどに「悪い種子」を宿す悪魔的サイコな少女がお出ましに。原作は小説でブロードウェイでの舞台が成功、6人の主要キャストをほぼそのままに映画化されている。奥行きのある物語でありながら、舞台を観るような作りと演技の作品で、非常に分かりやすい。が、くどくない。舞台には無かった映画だけのオチ付き。1956年、モノクロ作品。
■悪い種子(たね) - The Bad Seed –■
1956年/アメリカ/130分
監督:マーヴィン・ルロイ
脚本:ジョン・リー・メイヒン
原作:ウィリアム・マーチ「悪い種子」
製作:マーヴィン・ルロイ
撮影:ハル・ロッソン
音楽:アレックス・ノース
出演:
パティ・マコーマック(ローダ)
ナンシー・ケリー(母/クリスティーン)
ヘンリー・ジョーンズ(リロイ)
アイリーン・ヘッカート(デイグル夫人)
イヴリン・ヴァーデン(モニカ)
ウィリアム・ホッパー(父/ケネス)
■解説:
W・マーチの原作を基にした舞台劇の映画化で、舞台版でも主役を演じたP・マコーミックの“恐るべき子供”ぶりが話題を呼んだ。85年にTVムービー「死の天使レイチェル」としてリメイクされた。(allcinema)
■あらすじ:
湖畔への遠足でクロードという少年が溺死する事故が起きる。彼の物であるはずの金メダルを娘ローダの宝石箱で発見した母親クリスティーン。教師の話ではクロードと一緒にいるローダを見かけた者がいるという。クリスティーンが問い質すも借りただけと言い張るローダだったが ―
悪い女の子の映画なら、怒りまくりの感想を書いたこれ『小さな悪の華』がヒドかった 本作はこれに比べては舞台的で作り物っぽいから、ある意味安心して観ることができる。一言で言うなら悪魔が出てこない『オーメン』みたいな感じ。
主人公ローダ(8歳)は米軍大佐ケネスと裕福なクリスティーンの一人娘。
子供らしくて活発で、でも服や靴を決して汚さない。大人に対してきちんと挨拶でき、親の言うことをきくお利口さん。でも母親クリスティーンは何か引っ掛かる。決して負けを認めず、一つの事にどこまでも固執する娘に。
今、笑って話していたかと思うと、どうしても欲しかった“書き方の金メダル”を取れなかった事に身体全体で怒りをぶちまける。「相手の勝ちを認めることも大事よ」と窘められると「ええ。でも金メダルは私のものだわ」と言いながら、自分の部屋に戻るおしゃまな背中。
ローダ役のパティ・マコーマック(当時10歳)が非常に上手で、お利口さんバージョンで作り笑いのローダからして子供らしくなくて可愛くない上に、怒り爆発バージョン、悪巧みバージョンはホントに怖くて憎たらしい。
それは優しくて愛に包まれたような母親との対比でより鮮明に。
そんな中、金メダルを取った少年クロードが遠足先で溺死する。クリスティーンは教師の話とその金メダルを持っていたことでローダに問い質すが、借りただけだと言う。
だが母親は簡単には信じなかった。友達が死んだというのに平然としている娘。愛しているはずなのに、どこか違和感を感じる娘。
証拠を突きつけ、娘から本当の話を聞くに至るが、娘の罪はそれだけでは無かった。以前に住んでいたアパートメントで老婆が階段から落ちて亡くなった事があった。その事についても娘の告白を聞いたクリスティーンは、なおも平然としている娘に戦慄する。
夫は出張で不在。どうすればいいのか、この罪深い娘を―
話はこの母親と娘の関係だけにとどまらず、大家さん、掃除人、クロードの母親などとのやり取りも。特に掃除人リロイとローダのやり取りは、それだけでサスペンスもの1本作れそう。
タイトルにある「種子」とはローダの持つ「悪い心」的なものかと思っていたけど違っていて、“原因”であり、こういった反社会的行動は“遺伝”するものなのか?という話にもなってくる。でもどうみても両親は善良な人。いったい誰から遺伝したのか。これにはクリスティーンの父親が絡んでくる。
それと映画だけに追加されたラストシーン。舞台では病院から戻った父親とローダのシーンで終わるらしい。最後はあっという間の出来事だったが、これは見てのお楽しみ、ということで。
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