さーて、フレンチホラー『屋敷女』。英題は『Inside』。“内部、内側”の意味の他にも人の心の内“本心”などを表す時に使われる言葉。臨月の女性サラを彼女の家の中でハサミを持って追いかけ回す謎の女は、一見、頭のおかしなただの殺人鬼のように見えるが、彼女にはきちんとした理由がある。ショッキングなスプラッターで彩られる彼女の本心とは―
■屋敷女 - À l’intérieur -■
2007年/フランス/83分
監督:アレクサンドル・バスティロ、ジュリアン・モーリー
脚本:アレクサンドル・バスティロ
製作:ヴェラーヌ・フレディアニ 他
撮影:ローラン・バレ
音楽:フランソワ・ウード
出演:
アリソン・パラディ(サラ)
ベアトリス・ダル(女)
ナタリー・ルーセル(ルイーズ)
フランソワ=レジス・マルシャソン(ジャン=ピエール)
ドミニク・フロ(看護師)
ニコラ・デュヴォシェル(警察官)
リュドヴィック・ベルティロ(警察官)
エマニュエル・ランジ(警察官)
■解説:
「ベティ・ブルー」のベアトリス・ダルが出産直前の妊婦を襲う謎の凶暴女を演じるフレンチ・バイオレンス・ホラー。監督はフランスの新鋭、ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ。■あらすじ:
クリスマス・イブの夜。4ヵ月前に事故で夫を亡くしたサラは、臨月のお腹を抱え、一人で家にいた。その時、見知らぬ女が電話を貸してほしいとドアをノックする。不審に思ったサラが追い返そうとすると、女は急に態度を硬化して強引に侵入を図ってくる。サラは慌てて警察を呼び、その間に女の姿は消えていた。不安を抱えながら床についたサラだったが、この時すでに、女が家の中に忍び込んでいたことなど知る由もなかった- (allcinema)
英題:Inside
妊娠中に自らが運転する車で大事故を起こし、助手席の夫を死なせてしまったサラ。カメラマンの彼女は仕事に没頭することでなんとか正気を保っていたが、自らの殻に閉じこもってしまっている。彼女が安心して眠りにつけるのは愛する夫との家、いずれ誕生する子供との家だけだった。
ある夜、そんな彼女に家のチャイムが鳴る。電話を貸して欲しいという女性の声がしたが、一人暮らしのサラは夜遅いのもあって、申し訳ないと思いながらも断り、ドアを開けなかった。
しかし、その女は諦めなかった。
窓の外に立ち、じっとサラを睨んでくる。その女が窓ガラスを割ったとき、サラは警察に通報。直ちに警官はやって来たが、既に女はいなかった。パトロールを強化するという警官の言葉に、不安を覚えながらも眠りにつく彼女。しかし、その女は既に家の中に侵入していた―
クリスマス・イブの夜、明日にも出産という妊婦の家に悪魔のような女が訪れる。
この女の目的は分からないが、サラの命を狙っているのは明確だ。眠っているサラの寝室にこっそり忍び込んだ女。大きなお腹にハサミを突き立てられ、痛みと共に目覚めたサラの、地獄の夜が始まる。
女は、何故かクラシックな黒いドレスを着てサラに襲いかかる。凶器はいかにも痛そうな、フランスでは有名なメーカーのハサミ。バスルームに逃げ込み鍵を閉めたサラだったが、女は執拗だ。ドアを蹴り、ハサミを突き立てる。時折、見せる冷静な様子がさらに恐怖心をあおるが、むやみやたらに人を殺したいだけの殺人鬼では無いことも垣間見える。
凶器はハサミの他にも尖った長いものが使われて、グサーっといく様がいかにも痛い。バスルームのサラはお腹を刺され、口元を切られ、既に血まみれだ。なのに、女のいない隙にドアを開けようとして腕なんか出すから、想像した通りのことが..
これが、普通の状態の女性ならまだしも、出産を明日に控えた妊婦さん..。ギャーっと叫ぶたびに、お腹の胎児も反応して、またそれがCGだけど映される。母の子宮という暖かい家にいる胎児までもが危険にさらされ、観ている側は二人分逃げ回ることに。
途中で仕事関係の人やサラの母親が訪れ、これで助かるのかという場面もあるが、この悪魔のような女の方が一枚上手。それでも警官が立ち寄った時には、これで大丈夫だ!と思ったものだが、、女の目的意識はかなり強固らしく歯が立たない..。
冒頭の自動車事故のシーンからして血まみれの映画だが、この血液がただの赤くプシャーっというのとも、ドロリと黒いものでもなくて、壁にツーっとしたたる血のしずくは今も伸びているように赤黒く見え、シーツに付着する薄めの血液は乾いた感じが出ていたりして、非常にリアルで決して大げさではない(タイトルバックの血のお風呂のようなものは何だろう?)。
そんな中でどんどん血まみれになっていく2人の女。生々しくて、臭ってきそう。
そして謎の女の目的達成シーンである最後の見所!まさかまさかの目をそむけることが行われると共に、黒く大きなぼかしが入る..(レンタルだけかな?)。が、、想像するだけでゾッと出来る18禁の場面になっている。
管理人が勝手に付けてるフレンチ・ホラー三部作。
監督は違うが、どれも血液にまつわるスプラッター作品。
この中で本作は第3位かな。ストーリーが単純というのが理由だが、スプラッターに妊婦さんを掛け合わせ、単純なホラーとしたところが一番分かりやすく、観やすくもある。
じゃあ、単純明快で謎は残らないのか?と言えばそうでもなくて、サラが女の正体を知った時の台詞に「あなたは死んだと聞いた」というのがある。ん?じゃあ、この女はホントの悪魔か悪霊か?とふと疑問を覚えたことも忘れないように書いておこっと。
『リヴィッド』(2011) - LIVIDE –
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Contents
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本家フランス版の感想を書いた時には、簡単に人にはオススメできない、と冒頭に注釈を入れたものだが、こちらアメリカはハリウッド様リメイク版はどうかというと、まぁ、スプラッターの練習がてら観てみたら?てな感じ。 -
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コメント
コメント一覧 (3件)
ベアトリス・ダル怖かったですねー
画面に映るだけで、その存在感が恐怖と一緒に襲いかかる。でも返り討ちにあうところは、きっちりやられたりして、とにかく痛い映画でした。
ラストは聖母子像に見えましたか。
私はあんな大怪我した状態できちんと育てていけるのか心配していました^^;
レンタルDVDにはコメンタリーが入っていて、邦題は結構ノリで付けられたのが明かされています^^
屋敷女
かなりヤバイと聞いていたので、ちょっと躊躇していたのです。あ〜〜〜〜OPの胎児への「誰にも奪わせないわ…」だけでもう凄く嫌な予感が、と思ったらば。
スプラッタやグロがというより、メインである胎児を奪うというところに物凄い嫌悪感が…(題材としてとても好きですが)。題材としてうんぬんというより描写としてヤバイというか。
血の量はかなり高め。フランス映画なのですが、さすが容赦のない描き方です。…
その3作の、フレンチホラー三部作は間違ってないと思います^^
この作品の血のねっとり感が実にリアルで、
生々しくむせかえるような表現でした
屋敷女であるベアトリス・ダルさんの表情や佇まいだけでも怖く、
なかなか面白かったのを覚えています
ラストは、聖母子像のようにもみえていました