『悪の教典』(2012) - Lesson of the evil –

悪の教典_12s
モンスターな生徒や親、同僚に我慢できなくなって、いきなり凶行にでる人の話かと、また勝手に思ってました… 違う!日本の、それも本場アメリカで修行を積んだサイコキラーの話ではないか! サイコキラーは白人男性が多いというが、さて和製サイコキラーの出来は?私は結構気に入りますたよ。
 

悪の教典_01
■悪の教典 – Lesson of the evil -■
2012年/日本/128分
監督・脚本:三池 崇史
原作:貴志 祐介「悪の教典」
製作:市川 南 他
製作総指揮:山内 章弘
撮影:北 信康
音楽:遠藤 浩二
出演:
伊藤 英明(蓮実 聖司)
吹越 満(釣井 正信)
山田 孝之(柴原 徹朗)
平 岳大(久米 剛毅)
染谷 将太(早水 圭介)
二階堂ふみ(片桐 怜花)
水野絵梨奈(安原 美彌)
KENTA(蓼沼 将大)
西井 幸人(高木 翔)

解説:
サイコパスの天才人気高校教師が学校内で殺戮を繰り広げる衝撃の展開で話題となった貴志祐介の問題作を、「十三人の刺客」の三池崇史監督、「海猿」シリーズの伊藤英明主演で映画化した戦慄のバイオレンス・エンタテインメント。共演は二階堂ふみ、染谷将太、林遣都、山田孝之、平岳大、吹越満。 (allcinema)
 
あらすじ:
若くて有能、爽やかな男前の蓮実(はすみ)は、生徒、同僚から慕われ頼りにされている高校教師。しかしその実態は自分にとって邪魔な者を何の迷いも無く次々殺すサイコキラーだった。裏の顔を隠して毎日をうまく送っていたが、ある時、過去の殺しを自分と結びつけて疑問を持った同僚と生徒の存在を知り、同僚やクラスの生徒全員を殺す計画を立てる-

 


悪の教典_Movie横行している生徒たちのカンニング対策が話し合われている朝会の風景。「何か考えはありますかー?」と聞かれてもお互いの顔を見合わせるだけの教師たち。そこですっくと立ち上がり、自身の考えと、手伝ってくれる教師の名前もきちんと出して意見する爽やか青年教師蓮実(はすみ)。
京大からハーバードへ移り、アメリカで2年ほど仕事した後に帰国して教師になったという変わり種。教えるのはもちろん英語だ。他の教師たちがのっそりと他力本願なのに比べて行動的で、難癖をつけてくる親への対応も萎縮せず言うべき事はきちんと話す。もちろん生徒たちからの信頼も篤い。
 
ここは関東の、とある地方にある普通の高校。
生徒たちのことを第一に考え、あくまでも爽やかに、あくまでも清潔な教師蓮実。ちょっと悪いのもいるが生徒たちも高校生らしくどこまでも明るい。
悪の教典_Movieが、、よーく見ると、女生徒の弱みにつけこみセクハラする教師、男子生徒と禁断の恋を密かに楽しんでいる男性教師。もっと見ていくとまだまだありそう。そんな現代らしい新聞沙汰になりそうな事が行われている中で、蓮実の存在はかえって浮いているように思える。ポンコツの軽トラで学校に通勤するのはまだいいとして、この爽やか先生の家ときたら、、ほとんど壊れかけ廃屋のような小さな日本家屋だ。これにはびっくり。

なんとなくこのあたりから、ちょっとこの人どうなのか?と思い始める。「モノ」にこだわりが無い人と言ってしまえばそうなのかもしれないが、いくら田舎とはいえ、隙間だらけのボロ家とはいったい?よく見ていくと、まるで「仮の住まい」とでも言いたげで眠ることが出来ればいいだけのようだ。
 
それまでは「大好き!爽やか先生」みたいな話だったのが、アーチェリー部の練習風景や男子生徒を恋人に持つ教師のクレー射撃の様子が描写され、蓮実先生のボロ屋も相まって少しずつ不安で落ち着かない感じになってくる。そして爽やかであったはずの蓮実先生が相談にきた女生徒にとった行動が決定的となる。今まで作り上げてきた蓮実の人物像がボロボロと破壊されていく。
 
バックに流れるは「メッキー・メッサーのモリタート(マック・ザ・ナイフ)

ほら、サメって奴にはそのツラにキバがズラリと並んでいるだろ
マクヒィスの得物はドスなんだが、そのドスを見たことある奴はいないんだってさ
ある晴れた日曜日のことさ 浜辺に死体が転がってたのさ
角を曲がって消えた男がいたんだが そいつがドスのマックだったらしいんだ
それから年端もいかない若後家さんの話 名前はみんなもご存知だ
目が覚めたら犯されてたってさ
マックさん、あんたの賞金首はいくらになった?

この歌は元々、戯曲「三文オペラ」の劇中歌。
怖ーい人殺しを明るいテンポで語りかけるように歌っているのが特徴だが、蓮実の大好きな曲で、彼のテーマソングでもある。
 
ボロ家に住む彼だったが、狭い庭に物干し台を立てたりしていたので、「ああー、やっぱり洗濯物とか干すんだ」とちょっと安心した自分。しかしそれはすぐに間違いであったことに気付くことになる。こんなに爽やかでかっこいいのに、そっちに行くんだと改めて確信することに。

オーディン
Oden北欧神話の主神にして戦争と死の神。詩文の神でもあり吟遊詩人のパトロンでもある。魔術に長け、知識に対し非常に貪欲な神であり、自らの目や命を代償に差し出すこともあった。
例えば、ルーン文字の秘密を得るために、ユグドラシルの木で首を吊り、グングニルに突き刺されたまま、九日九夜、自分を最高神オーディンに捧げたという(つまり自分自身に捧げた)。この時は縄が切れて助かった。この逸話にちなんで、オーディンに捧げる犠牲は首に縄をかけて木に吊るし槍で貫く。
愛馬は八本足のスレイプニール。フギン(=思考)、ムニン(=記憶)という二羽のワタリガラスを世界中に飛ばし、二羽が持ち帰るさまざまな情報を得ているという。また、足元にはフレキ(貪欲なもの[4])という二匹の狼がおり、オーディンは自分の食事はこれらの狼にやって自分は葡萄酒だけを飲んで生きているという。
(Wiki:オーディン)

 
一人、また一人と邪魔になった人間を表情も変えずに殺していく蓮実。その慣れた動作から、今までも何度も繰り返していたのが分かる。このサイコキラーは「モノ」だけではなく、「ヒト」に対してもなんの執着もなく情もわかないようだ。まぁ、情がわくような人は殺人鬼にはなれないだろうが..。
↑上の「マック・ザ・ナイフ」にあるように、蓮実の凶器を見た者はいない。それは何故かって?だって「見た者=殺された」から。そしてそれは凶器だけではない。蓮実の「狂気」についても同様、見た者、気付く者はもはやいなかった、これまでは-。
 
悪の教典_Movieある事がきっかけで、生徒、同僚皆殺し計画を立てた蓮実。いくら田舎とはいえ無謀じゃないですか、という観る者の忠告など聞きやしない。もう殺すことが楽しくて楽しくて、衝動を抑えられなくなっているようだ。それでも頭のいい蓮実は犯行を押しつける人間をきちんと用意して実行。
何かのイントロのような「チーチッチ、チーチッチ、チーチッチ・・・」と口ずさみながら銃をかついで、生徒たちを次々と撃っていく。何の躊躇いも感情もなく、もうそれは次々と。

アメリカ映画なんかだと、ここで蓮実の狂った目のクローズアップ、となるだろうが、彼の表情は全くいつもと同じでサイコの眼力は無い。『ファイト・クラブ』のブラピや、『ミッドナイト・ミート・トレイン』のヴィニー・ジョーンズや『冷たい熱帯魚』のでんでんとは違って、爽やかなまま笑みさえ浮かべている。まるで悪いのは相手だと言わんばかりに。
そして最後の最後、蓮実はきちんと用意しておいた逃げ道を口走る、というより周りの皆に聞かせるようにわざと口走る。おーい、それはずるいやろーと思っていたら、気がついた人もいたようだ。
が、、、
 to be continue
って出たよ..。これは続編というよりも、蓮実の今後のことなんだろうか..。
ここまで観て、最初の「爽やかでかっこいい」という思いは全く無くなっていたので「ぅわー、なんてこった」と思ったのは言うまでもない。

 

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • コメントありがとうございます。
    原作読まれたんですね。前半が面白かった、と。
    登場人物が詳しく説明されているのでしょうか。
    ぅぅーー (←読みたいものが増えて苦しんでいる様子)
    釣井先生はちょっとアレなんであまり詳しく知りたくないですが何か秘密があるんですか。
    ぅぅーー (←同上)
    あの曲が今でも頭から離れないんで困ってます[絵文字:i-179]

  • コメント&TBありがとうございます。
    この映画は後半の殺戮シーンが面白かったですね。原作は上下のうち上の方が面白かったのと逆です。
    ハスミン役の伊藤さんは、まあはまり役だったかな。セクハラ教師役の山田君の出番が少なかったなあ。
    釣井先生の秘密が全く描かれていなかったのは本筋と離れてしまうからですね。きっと。

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