和製Natural Born Killersハスミンの前日譚。と言っても悪の主役は彼だけではない。このサイコキラーを取り巻く普通の人々の隠された「ワル」加減も容赦ない。悪は悪を呼ぶのか。それとも人は誰でも裏の顔があるのか。それを隠そうともしない人々に目がパチクリとなること受け合い。
■悪の教典 -序章-■
2012年/日本/Web
監督:野本史生
監修:三池崇史
脚本:渡辺千穂
原作:貴志祐介「悪の教典」
音楽:遠藤浩二
出演:
伊藤英明(蓮実 聖司)
中越典子(水落 聡子)
吹越 満(釣井 正信)
高岡早紀(田浦 潤子)
KENTA(蓼沼 将大)
岩松 了
高杉 亘
■解説:
映画『悪の教典』の大殺りく前夜を描いたスピンオフドラマ。伊藤英明、三池崇史をはじめ映画版スタッフが総力を結集して放つ、“もうひとつの悪の教典”。
■あらすじ:
アメリカの投資銀行で成功した蓮実聖司(伊藤英明)が、「やりがいのある仕事を見つけた」と突然帰国。私立高校の英語教師となった彼は、生徒から慕われ、校長や同僚からも絶大な信頼を得ていた。新任スクールカウンセラーの聡子(中越典子)も、明るく聡明な彼にシンパシーを感じるひとり。だがそのころ、学園内でにわかに不穏な出来事が起こり始める。物理教師の釣井(吹越満)は、執拗に蓮実の周囲を嗅ぎ回るが- (WOWOW)
to be continueで終わった『悪の教典』の続編を密かに楽しみにしている管理人。それには絶対観ることを外せない前日譚がWOWOWで放送されたので、ワクワクと観てみた。
タイトルに「序章」と付いているが、これはハスミン本人がサイコキラーになった事の序章ではない。あの学園大殺戮への序章だ。ハスミンは子供の頃からこれまで、殺しを(楽しく)犯した後は、さっとその地を離れるのが常。親元→京都→ニューヨークと渡り歩いた彼がちょっとは腰を落ち着けられるのかと、教師として関東のある地方へ。序章はここから始まる。
同時に並行してニューヨークでの彼の活躍ぶりが、まるで全然違う映画のように間に挟まっていく。ニューヨークでの彼も高校教師と同じく、善良で有能、同僚や部下との信頼関係もあつく何の問題もない。昇進までした矢先に突然、帰国。これも例の邪魔になる存在を楽しく殺したから。
サイコキラーというものは、自分の犯した殺人を何度も何度も反芻して、その時の興奮を呼び覚ますものだとか。そしてそれでも足りなくなった時に次の犯行を。同様にハスミンもこのニューヨークの回想が終わった時、彼の中のサイコキラーが蘇った。とは言え計算ずくではあるのだが。
それにしてもハスミンはモテますね。『悪の教典』本編でも相談に乗った女子高生を食い物にした時はビックリしたが、それまでにも同じこの学園でやってます。と言っても相手から飛び込んでくるんだけれど。
今回の被害者はスクールカウンセラーの水落先生。大人しくて可愛いこの先生に爽やかに近付いては自分の魅力をふんだんに、しかし自然に魅せるハスミン。奥手で気の弱い彼女はひとたまりもない。
と同時に保健室の田浦先生に誘惑され、その毒牙にかかった振りをしているハスミン。もう「一石二鳥」というか、「二兎を追う者、二兎を得る」というか、大変お見それしますが、それも全て釣井先生のいうところの「全て利用する駒」である。
釣井先生は物理の先生でありながら、人間観察が鋭い。と言うのも、彼には悲しく恐ろしい過去があるからで、元からの粘着質で嫌らしい性格がますますヒドく歪んだからのようだ。
『悪の教典』本編では描かれていなかったこの過去の出来事。キモくて嫌なヤツだけど、実際はそうでもないのか、とか色々思っていたかったから、この過去話は自分的にはショック。あーまた人のいい私は騙されるとこだった。この過去の事でチクチクチクチク校長をいじめ抜く釣井先生。ほんと見たまま..
それでも本人曰く「過去の罪滅ぼし」のために、なんとかハスミンの本性を水落先生に伝えようとするが、日頃の行いが悪すぎて伝わらないばかりか、嫌われてしまう。自業自得とはいえ、結局、あんな結果になってしまい、ハスミンへの恨み、ねたみ、疑心がさらに大きくなっていく。そして『悪の教典』本編へ。
今回、ハスミンに関わった2人の女先生は被害者なのか、と言えばそうとも言い切れない。
田浦先生は大人の女の振りをして楽しんだだけだと自分を納得させていたが、その実、めらめらと燃えるような嫉妬心に苛まれているし、水落先生に至っては、心理学を学んだというのに、そんな田浦先生の気持ちに気づきもしない。飲みに誘ってぺらぺらしゃべる様子は可愛くはあるけれど、ちょっとは考えようよ。田浦先生、泣きそうになってるじゃないですか。
そんな簡単な事にも気付かない水落先生。だからハスミンの本性を心理分析することがなかなかできなかったんだね。これでいいのか?スクールカウンセラー?
こんな学校の中の嫌らしい人間関係をもさらけ出しながら進んでいく序章。ハスミンの凶行は画面には映されないが、一番可愛そうだったのはワンコです。吠えてジョギングの邪魔(これはいずれ、犯罪の邪魔になると考えたか?)をするワンコにさえ容赦ないハスミン。・・・ヒドいじゃないか… それも毒でひとおもいじゃなくて、犬には毒になるタマネギでじわじわいくなんて。ここにハスミンのサイコキラーたる所以が思いっきり表現されている。
ラストの花壇に何かを撒くハスミン。最初あれは何だ?と思ったけれど、あれは「灰」ですね、被害者の。それを思いついた時、ゾクっとしたことは内緒にしておこう。(この後、『悪の教典』本編をもう一度観たことは言うまでもない。)
ではまた
コメント
コメント一覧 (1件)
『悪の教典-序章-』
悪の教典 -序章-
米国のスーパートレーダーから
高校教師に転職した男には
何かしら裏がありそうだ…
【個人評価:★★☆ (2.5P)】 (自宅鑑賞)
原作:貴志祐介