これも観るのを楽しみにしていた美少女ホラー。あらすじとトレーラーから何となくあんな感じかな~と思っていた内容は裏切られることなくほぼその通りだった(-.-)。が最後まで飽きずに観ることができたのは主演の少女とあくのあるママ、そして近年ならではの技術なのかな、と思う。
■ ハッチング -孵化- – Pahanhautoja/Hatching – ■
2022年/フィンランド/90分
監督:ハンナ・ベルイホルム
脚本:イリヤ・ラウツィ
原案:イリヤ・ラウツィ他
製作:ニマ・ユーセフィ他
撮影:ジャルッコ・T・ライネ
音楽:スタイン・ベルグ・スヴェンドセン
出演:
シーリ・ソラリンナ(ティンヤ)
ソフィア・ヘイッキラ(母親)
ヤニ・ヴォラネン(父親)
レイノ・ノルディン(テロ)
■解説:
長女が見つけた謎の卵の孵化をきっかけに起こる恐ろしい事件により、家族の真の姿が浮き彫りになっていく様を描いたフィンランド製ホラー。監督は世界の映画祭で短編作品が高い評価を受け、今回が長編デビューとなる新鋭女性監督ハンナ・ベルイホルム。映画.com
Contents
あらすじ
北欧フィンランド。完璧に幸せな家族の暮らしを動画配信する母親のもと、体操の大会優勝を目指して日々練習に励む12歳の少女ティンヤ。ある日、彼女は森で小さな卵を見つけ自分のベッドで温め始める。その間も苦しい練習に明け暮れていたが、とうとう卵の孵化が始まり“それ”が中から生まれ出たが ─
少女と(少女の)卵
もっとファンタジーに振り切れているのかとも予想したが、本作はホラー一直線でラストまで容赦ない。
我の強い母親に完全にコントロールされている、ある“幸せな”一家が主人公。母親は自分たち一家の「完璧な家族動画」配信に余念がなく、自己の承認欲求がかなり強い。合わせて自分が成し遂げられなかった夢を娘に託し、その成功を動画で配信することに命をかけていると言っていい。
12歳の娘ティンヤは可哀そうに、その母親の期待を一身に受け止め、自分が母親の犠牲になっていることにさえ気が付かない。何よりも母親の笑顔だけが彼女を安心させ幸せにする。父親は自分の妻の言動について何も言い返すことが出来ず、力強く前進していく妻に付いていくしかない。全て妻に任せておけばいい。その状態のみが彼を安心させる。ティンヤの弟だけがダメなものはダメ、欲しいものは欲しいと言える唯一現実に向き合っている存在ともいえる。そんな一家。
でもティンヤは自分の本当の気持ちに何も気が付いていないわけではない。
体操が大好きでずっと続けて優勝したいのか すべては母のため
ママの素敵な家族 情けない父親の姿
言葉にできないこれらの毎日が徐々に自分の中で形作られようとした時に素敵な家に突然飛び込んできた一羽のカラス。部屋の中で飛び回り次々と壊れていくママの大事なクリスタルたち。そしてママの酷い仕打ち。笑いながらカラスの首をへし折ったママに対する驚き。ママの両腕にあるそれは、果たしてカラスだけなのか?
そんな夜に森で見つけた一つの卵。死にかけていたカラスがなんとしてでも守ろうとした一つの卵。それを奪うためなのか、死にきれず苦しむのを見ていたくなかっただけなのか、ここでティンヤのとる行動は行き過ぎているところもあってそれはママの起こした行動と実はうり二つ。そして卵を我が物に。
卵の秘密を抱えながら、同時に体操やママ自身の秘密も抱えることになったティンヤ。抱える秘密が増えるほど卵は大きくなっていく。抱える秘密が増えるほどティンヤは自分の中での良識や善と悪などに迷いが生じていく。真実を隠すことは時に大事だが、この嘘は果たして必要なのか?12歳の少女が持つには重すぎる自分と家族の実態。
「あなたは理解してくれると思った」と疑いもしないママが恐ろしい。
そんなティンヤが温め孵化したモノが何であれ、この世のものでないモノだとすればまともなはずも無い。ソレはティンヤの流す涙と共に生まれ落ち、彼女を守るためだけに行動する。というよりも彼女の真実の隠された心が具現化した存在だ。ティンヤ自身も気が付かない、気が付きたくない真実を目の前に披露してくれる。
利口なティンヤはすぐにそれが何なのか気が付くが、時はすでに遅かった ─
守る者と守られる者はいつまでもその状態が続くわけではない。危うい家族がいつまでも綱渡りを続けられるはずないことと同じで、守られる者はそれなりの速度で成長するものだ。そして命あるものの生きる目的の一つに“欲しいものを手に入れる”ことがある。それをはっきり自覚していれば目的に向かって邁進あるのみだが、まだはっきり分かっていない者、何か綺麗なもので自分の心に蓋をしてごまかしている者は、邁進していく者にとうてい勝つことはできない。
どちらがいいのかは分からないけれど ─
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