こんな好物系映画『ドニー・ダーコ』を今まで一度も観たことがなかったとは、私としたことが… うさぎに奇妙な出来事にリバースムービー?さあ、書いていきますよー
■ ドニー・ダーコ – Donnie Darko – ■
2001年/アメリカ/113分
監督:リチャード・ケリー
脚本:リチャード・ケリー
製作:アダム・フィールズ他
製作総指揮:ドリュー・バリモア他
撮影:スティーヴン・B・ポスター
音楽:マイケル・アンドリュース
出演:
ジェイク・ジレンホール(ドニー・ダーコ)
ジェナ・マローン(グレッチェン・ロス)
ドリュー・バリモア(カレン・ポメロイ)
メアリー・マクドネル(ローズ・ダーコ)
ホームズ・オズボーン(エディ・ダーコ)
マギー・ジレンホール(エリザベス・ダーコ)
パトリック・スウェイジ(ジム・カニングハム)
キャサリン・ロス(精神科医師)
ノア・ワイリー(物理学教師)
ジェームズ・デュヴァル(フランク)
■解説:
リチャード・ケリー監督・脚本。一度では理解できない複雑な筋立てによってリバースムービーと呼ばれて話題になった。本作においてウサギがシンボルになっている。Wikipedia
Contents
■あらすじ:
過去に放火で逮捕され、現在は精神科医の治療を受けている高校生ドニー・ダーコ。ある日、自分を呼ぶ不思議な声に導かれ、銀色のウサギと出会う。そのウサギはフランクと自分を紹介し、「世界の終末まであと28日と6時間と42分12秒しかない」とドニーに告げた。が、翌朝、ドニーはゴルフ場で目覚める。
訳が分からないまま自宅に戻るとパトカーや近所の人々で自宅周辺は大騒ぎになっていた。なんと空から飛行機のエンジン部分が自宅の自分の部屋に落下したのだ。部屋はめちゃくちゃに破壊され、在宅していなかったことで命が助かったドニーだったが、その後も銀色ウサギは度々現れ、ドニーに不可思議なことを話しかけるのだった ─
ドニー・ダーコの 28日と6時間と42分12秒
高校生のドニーは、少し変わった男子だ。とは言え、あまり人とは慣れあわない、ワルの方向にもいかない、学校で教わる勉強にはあまり熱心ではない、というだけで取り立てて変人というわけではない。けれどどういった理由からかは説明は無かったが、放火して逮捕された過去がある。そのために現在は精神科医のお世話になっている。
この精神科医との治療のシーンは度々出てくる。彼の日頃の様子を慎重に聞いていく医者であるが、彼が精神的に不安定なのは間違いないようだ。そのための投薬も行われている。そのせいなのかドニーは何だか半分ボーっとしていてはっきりしない。それでも家の中で反抗的な態度を見せる時だけはしっかり話すものだから、そのたびに母親を悲しませている。ドニーを心から心配しているのは母親だけかもしれないのに…。
そんなある日、彼の前に不気味な銀色ウサギが現れ、「世界の週末までにたった 28日と6時間と42分12秒しかない」 と告げるのだ。だからといって虚無的な毎日を送るドニーはこれといった感想は持たない。それに何度も現れるそのウサギは自分の妄想だとも分かっているのだ。だからそれを精神科医にも話している。医者は両親にもはっきりと告げた。「彼には妄想型の精神疾患がある」「世の中の出来事を脅威に感じ対処できていない」と。
だがドニーはカレンダーのその日まで×を付けていく。そして今までしなかったような、それこそ妄想の世界でしかできなかったようないたずらや、授業時間の教師との真面目なやり取り、または自分の意見をはっきり発言する、女の子に声をかけ付き合うきっかけを作ることまでやってのける。
まるで普通の高校生のようになったドニー。そんな中、タイム・トラベルこそが世界を救う道だと考えた彼は物理の教師に相談。その結果、近所に住むタイム・トラベルの権威ロバータ・スパロウの存在を知ることになる。ロバータはぼさぼさの白髪を振り乱した、子どもたちに“死神ばばあ”と呼ばれている女性であることも分かった。そしてドニーは最近彼女に「生き物はみんな孤独に死ぬのさ」と囁かれたのだった。
ドニー・ダーコの起点10月2日
銀色ウサギと初めて出会い 「世界の終末まであと28日と6時間と42分12秒しかない」と 聞かされた10月2日。その同じ日に部屋にエンジンが落下してきた。ドニーの非日常の始まりはこの10月2日と言える。
ドニーの物語はここから始まり、ウサギと度々会いながら世界の終末でありハロウィンでもある10月31日に向けて進んでいく。その間、ドニーは今までやらなかった、出来なかったようなことを次々とやらかし両親や教師を呆れさせるが、本人は満足の一言だ。誰がみてもペテン師のジムの豪邸に火をつけたのはやり過ぎだと思ったものの、なんとジムの悪事が世間にバレて放火よりもそちらが警察の矛先となった。ドニーは結果的に良い行いをしたことになる。そして彼女グレッチェンの悲劇が起きるのだが。
が、ラスト近く、この28日で起きたことが逆回転に再生されたかと思ったところで、またエンジンがドニーの部屋に落ちてくる。そして運び出されたエンジン落下による被害者。被害者はただ一人。破壊された部屋の住人だ。
銀色ウサギの正体
このシーンの頃には銀色ウサギの被り物を持っているのはドニーの姉の恋人フランクだったことも分かっている。日頃は姉に憎まれ口をきいているが、フランクはその姉を自分から奪ったやつだと心のどこかが叫んでいる。どうしたってフランクの代わりにはなれない。だから彼の象徴となる大事な創造物、銀色ウサギがドニーを導く者として登場し、グレッチェンの命を奪う。そして被り物を外しただのフランクになった彼の右目をドニーは撃ち抜き、28日間の夢の世界を破壊する。
恐怖と破壊。破壊と愛。それが銀色ウサギの正体だ。
これらの事から、ドニーは10月2日に死亡。
けれどこの時、誰の、何の御業なのかは分からないけれど、ドニーは魂がこの世から完全に消え去るまで「 28日と6時間と42分12秒 」猶予があると言われたのだろうか。それとも事故から死へのほんの少しの間に見たドニーの意識。よく言う過去の走馬灯ではなく、なりたかった、こうでありたかった自分の夢がそれこそ走馬灯のようにドニーの脳裏を掠めたのだろうか…。
- 変わった名前ドニー・ダーコはヒーローっぽいと認められたか?
- 人に親切に優しく出来たか?
- 学校で自分の意見を発言できたか?
- 恋人は出来たか?
- 姉は希望の大学に受かったか?
- よくある親が出かけていない自宅でのパーティは開催できたか?
- 初体験は出来たか?
- 過去に起こした放火に後悔しているか?
- やり残したことはないか?
- 正直に生きたか?
- こんな自分なら精神を病んではいないのではないか?
『死霊のはらわた』の恐怖シーンが入り口となって「孤独に死んでいく」と囁かれたドニー。10月2日以前の彼の描写は無かったから想像するしかないけれど、誰にも理解されていないと思い込んでいる、とても孤独な男子高校生が目に浮かんでくる。
自分の起こした放火事件を後悔し、この28日間で想像したような何か悪事が露見するような意義のあったものと思い込みたい高校生。そんな事件のこともあり、家族とギクシャクしてしまっている高校生。けれど家族がとても自分を心配してくれているのは分かっている。でも正直になれないのだ、自分のせいだと分かっているがために…。
こんなドニーは普通の少年だ。一度間違いを犯してしまっただけの。
オープニングで小高い丘から街を見下ろしていている彼が映るが、その間、地響きのような音がずっと鳴っている。この音は彼を死にいたらしめたエンジン落下の音だろう。けれどこの丘にいる彼はとても幸せそうだ。きっと部屋でいい夢を見ていたに違いない。もしかしたら、この時見ていた夢が「なりたかった自分」の夢だったのかもしれない。
本当になんて悲しい物語なんだろう。これを見て、今後後悔しなくてもいいように、いったいどれだけの人が生き方を変えることが出来ただろうか…?
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