『ボクシング・ヘレナ』(1993)ジェニファー・リンチ衝撃のデビュー作

問題作・衝撃作にはいち早く喰いつき、記事にあげるのを趣味としている私としては再見せずにはいられない作品の一つ『ボクシング・ヘレナ』。監督はデヴィッド・リンチの娘様ジェニファー・リンチで、第14回ゴールデンラズベリー賞で最低監督賞を受賞した話題作でもある。

■ ボクシング・ヘレナ  – Boxing Helena – ■

Boxing-Helena

1993年/アメリカ/105分
監督:ジェニファー・リンチ
脚本:ジェニファー・リンチ
原案:フィリップ・キャランド
製作:カール・マッツォコーネ他
製作総指揮:ジェームズ・シェイファー他
撮影:ボジャン・バゼリ
音楽:グレーム・レヴェル

出演:
ジュリアン・サンズ(ニック・キャヴァナー)
シェリリン・フェン(ヘレナ)
ビル・パクストン(レイ)
カートウッド・スミス(アラン・ハリソン医師)
アート・ガーファンクル(ローレンス)
ベッツィ・クラーク(アン)

■解説:
デヴィッド・リンチの娘ジェニファー・リンチの監督デビュー作品。「ボクシング」とはスポーツのボクシングではなく、「閉じ込める」という意味の単語「box」の現在進行形。

Wikipedia:ボクシング・ヘレナ


Contents

あらすじ

Boxing-Helena

将来有望な若き外科医師ニック・キャヴァナー。母親の遺産である郊外の瀟洒な屋敷に恋人と住むつもりで引っ越した彼はある夜、バーで以前一夜を共に過ごし忘れられないままでいる女性ヘレナを見かける。
それからというもの恋人の存在も忘れ、ヘレナと会い、話し、もう一度愛を育むことばかりを妄想するようになったニック。そんなある日、彼の目の前でヘレナはひき逃げにあい重傷を負う ─

見どころと感想

ちょうど同じ頃だったか、、中国の映画『西太后(1984)』を観たこともあって、本作の美しき魔性の女ヘレナの行く末と『西太后』に登場する“麗妃”が重なって同じくくりの作品として記憶していたような気がする…。そのうえ、当時(もっと前からだったかかも)都市伝説として噂になっていた「ハワイで行方不明になった新婚の奥様のなれの果て」というのもあった。それらの共通項は何かというと、どれかを観るなり読むなりすればすぐわかる状態に人為的にされてしまったこと…(だが、どれもおそらくフィクション)

Boxing-Helena

なんて悲惨な、なんて可哀そうな…となるところ、本作『ボクシング・ヘレナ』は一味違う。
モデルをしているらしい彼女は男を次々に手玉にとっては自分の思うように動かすことに生きる意味を見出しているとも言えるような女。彼女にとってそれはすごく簡単で彼女の秘密めいた美しさから発せられるオーラや目くばせ、動きのたった一つで普通の男はもうメロメロになってしまうのだ。

Boxing-Helena

ニックもそうだった。
一度、夜を一緒に過ごしただけに過ぎない彼女をいつまでも忘れられず、あまりの胸苦しさに近くに立っていることさえできない。まるで中学生の初恋相手のようだ。

それもそのはずで、彼は女性とうまく付き合うことができない。身体的に相手を喜ばせることができないのだ。その原因は、裕福ではあるが厳しい父親のせいなのか、美しいが奔放で常に浮気相手がいた母親のせいなのか、その情事を隠すことなく見せつけられたせいなのかは分からない。

そんな彼を支える愛情深い恋人がいながら、屈折した者が屈折した生き方に惹かれるように、ニックもまた決して手に入らないだろう女性に向かって歩を進めていく。それが生きがいとなり、それしか見えなくなっていくニック。そのために今まで手に入れてきたものを捨て去っていく、本当の自分であるために。

キャスト

ところで、本作の出演者は本人的にも出演作的にも一癖も二癖もある役者さんたちだ。

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ジュリアン・サンズ

— イギリスの俳優。1980年代の初めにデビュー。1984年、カンボジア内戦を描いた『キリング・フィールド』あたりから注目されはじめ、1986年の『眺めのいい部屋』では、主人公が思いを寄せる、型破りな青年ジョージを演じ、美形英国俳優として人気を集めた。
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の映画化にあたり、主人公のレスタトにジュリアン・サンズを考えていたという。この役は結局、トム・クルーズが演じた。(Wikipedia)

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シェリリン・フェン

— 1984年に『ワイルド・ライフ』で映画デビュー。1988年公開の『トゥー・ムーン』で注目を集める。1990年にテレビシリーズ『ツイン・ピークス』 のオードリー役で人気を博し、エミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされた。叔母にロックミュージシャンのスージー・クアトロがいる。(Wikipedia)

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ビル・パクストン

— 1975年の『クレイジー・ママ』にスタッフとして参加したが、監督のジョナサン・デミから「出演してみないか」と誘われて映画デビューする。これがきっかけとなって俳優を志すようになった。『エイリアン』シリーズ、『プレデター』シリーズ、『ターミネーター』シリーズに出演した唯一の俳優であり、そして全作品でタイトルとなる敵に“殺された”人物を演じた俳優でもある。(Wikipedia)

ジュリアン・サンズと言えば管理人的にはとにかく『ゴシック』が強烈で、これが彼の全てのイメージだと言って過言ではない(-.-) 役どころがまた本作『ボクシング・ヘレナ』と同じような感じで、自分で自分を苦しめダメにしていくパターンの男役。本作での彼は若き頃のジェレミー・アイアンズを彷彿とさせる。
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シェリリン・フェンは一にも二にも「ツイン・ピークス」とデヴィッド・リンチ。あの小悪魔的な女子高生を忘れられない人も多いと思う。2017年の「ツイン・ピークス」にもオードリー役で出演していた。他にも思っていたより出演作は多いが、やはり一番輝いていたのは80年代~90年代。その頃にはジョニー・デップと婚約、その後ジェイソン・パトリック、歌手のプリンス、デヴィッド・リンチと交際していた過去がある。
…すごい

ビル・パクストンはアクション作品に数多く出演していてそのイメージが強い俳優さんだけど、実はこんな↓作品にも出ていて、管理人的にはこっちの方が好ましい。2017年に病気で亡くなっていたとは知らなかった…


ラスト

本作を公開当時頃に鑑賞してから今まで、種々雑多なホラー系、不思議系、面倒くさい系、問題作系、王道アクション系など様々な作品を観てきた管理人にとってヘレナに起こった不幸な出来事はそれほど驚きはしない(あくまでもフィクションの映画作品的に)。ラストのオチも今となってはよくある感じではある。

そのうえでニックとヘレナの今後を思う時、彼らにとってこれで果たして良かったのか?と考えてしまう。あの出来事があってこそ、ニックは人を守り愛する力を身に付けられたし、ヘレナにも全く同じことが起きた。ヘレナにとっては例え身体の一部が欠損しようが、年をとって醜くなろうが、いつまでも死ぬまで自分を守り、慈しみ、崇拝するがごとくに愛してくれる者を手に入れることが出来たのだ。

その後、病院で目覚めた二人を画面を通して見た時の、なんていうか、ホッとすると同時にあまりの二人の普通さ加減、平凡さ、これから続いていくであろうありがちなつまらない人生を思った時、決して簡単には手に入れられないものを失くしたことを痛感せざるを得ない。そして夢にまで見る得がたい物を得たい時には、大事な何かと交換する覚悟はあるか?とニックの思いはこちらに問うてくる。

Boxing-Helena

監督ジェニファー・リンチ

Jennifer_Lynch

父はデヴィッド・リンチ。
1993年に「ボクシング・ヘレナ」でデビューするが、その前衛的かつ衝撃的な内容と過激な表現が非難の対象となり、第14回ゴールデンラズベリー賞で最低監督賞を受賞した。
2007年に発表した「サベイランス」は父の手法などに影響された演出とストーリーが評価される一方、残酷な結末が賛否両論となった。

Wikipedia

■主な作品

〔長編映画〕

  • ボクシング・ヘレナ(1993)
  • サベイランス(2007)
  • スピーシー・オブ・コブラ(2009)
  • チェインド(2012)

〔ドラマ〕

  • ウェアハウス13 ~秘密の倉庫 事件ファイル~(2013)
  • ファインディング・カーター(2014)
  • ウォーキング・デッド(2015)
  • サウス・オブ・ヘル 女エクソシスト(2015)
  • ティーン・ウルフ(2015)
  • セカンド・チャンス(2015)
  • ウェイワード・パインズ 出口のない街(2016)
  • ザ・ラストシップ(2016)
  • アメリカン・ホラー・ストーリー(2016)
  • ワンス・アポン・ア・タイム(2016)
  • ハワイファイブオー(2016)
  • ZOO-暴走地区-(2017)
  • セイラム(2017)
  • エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY(2017)
  • クワンティコ/FBIアカデミーの真実(2017)
  • クリミナル・マインド FBI行動分析課: Beyond Borders(2017)
  • ストレイン 沈黙のエクリプス(2017)
  • Netflix/ダーマー(2022)

デヴィッド・リンチの一種独特な、簡単に言うと意味不明な世界観が割と好きな管理人は、その娘様が映画監督をされていると知り監督作は全て(と言っても本作入れて4作品)鑑賞、このブログにもめでたく今回で全ての感想をあげたことになる。訳あって1か月ほどブログの更新が途絶えていて、どの作品で再開しようかな~って思いついたのが『ボクシング・ヘレナ』だったのだ。

で、今この時期にNetflixで新たに配信が始まった「ダーマー」を視聴しているんだけど、オープニングの監督名に目が釘付けに…!

Jennifer Lynch

えっ!?
ほんまかっ?見間違いかと何度も画面を確認し、英語版Wikipedia:Dahmer – Monster: The Jeffrey Dahmer Storyで確信。これがまた、管理人が個人的に好きな分野【連続殺人鬼】もの、それも実在した「ジェフリー・ダーマー」のドラマ。もうこれは神のお告げか何かなのかっ?と一人興奮していたのはさておき、近々感想をあげようと思っているNetflix「ダーマー」であーる。

主演は「アメリカン・ホラー・ストーリー」でお馴染みのエヴァン・ピーターズ。彼もアメホラ以外にも出演作は多いけど、この「ダーマー」が一番なのでは!?と感じる。「POSE/ポーズ」も良かったけど…(『X-MEN』とか絶対反対”(-“”-)”)

そしてもう一つ発見!『ボクシング・ヘレナ』「ダーマー」共に使われていた楽曲が。

spotify/ Enigma – Sadness

にしても、『ボクシング・ヘレナ』がラズベリー賞とは知らなかった。なんでだろう…?

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