『セッション9』(2001) - Session 9 –

「Hallo Gordon・・」 ホラーじみたサスペンス・スリラーものは数あれど、得体の知れない何かが出てくるわけでもないのにこの作品はコワイ。 実在した精神病院をそのまま舞台に使っている点が大きいのか、小道具はほとんど使われていないにも関わらず、アレ(グレイヴ・エンカウンターズ)やアレ(アメリカン・ホラー・ストーリー:精神科病棟)とは比べられないほどリアル。アスベストが舞う中、ずっと背後に流れるミッション(診療)の不気味な声が、間違いなくあなたをラスボスまで案内してくれることだろう。

セッション9 - Session 9 –
2001年/アメリカ/100分
監督:ブラッド・アンダーソン
脚本:ブラッド・アンダーソン、スティーヴン・ジェヴェドン
製作:ドロシー・オーフィエロ 他
製作総指揮:ジョン・スロス
撮影:ユタ・ブリースウィッツ

出演:
ピーター・ミュラン(ゴードン)
デヴィッド・カルーソー(フィル)
スティーヴン・ジェヴェドン(マイク)
ジョシュ・ルーカス(ハンク)
ブレンダン・セクストン三世(ジェフ)

解説:
19世紀後半に建てられ、いまや巨大な廃墟と化した実在のダンバース精神病院を舞台に描く戦慄のサスペンス・スリラー。アスベスト除去作業のために廃墟にやって来た5人の男たちに迫り来る想像を絶する恐怖と驚愕の事実とは―。監督は「ワンダーランド駅で」のブラッド・アンダーソン。

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あらすじ:
1985年に閉鎖され廃墟となっている巨大なダンバース精神病院。ここを公共施設として活用するため、有害なアスベスト除去作業が行われることになり、ゴードンのチームがこれを受けることに。さっそく5人の男たちは危険な作業を始めたが、この場に眠る狂気にさらされて次第に互いの信頼関係にヒビが入っていく-


アメリカ一怖いと言われた超巨大廃墟「ダンバース精神病院」。現在はそのほとんどが解体され、中央建物の一部が残るのみ。かつて行われた非人道的な治療の片鱗が残るこの建物に、5人の男たちが仕事で、それもアスベスト除去という極めて危険な作業のために足を踏み入れる。

Contents

チームリーダー ゴードン

Session9_Movie2001

危険物質除去業を営み、妻と小さな子供がいる。入札の失敗が続き、今回のこの仕事が取れなければ会社がつぶれるところだった。まだ幼い娘は長患いしているせいもあって夜になかなか寝てくれず、仕事が無いことも重なり、いらつき気味であるが、元来は怒って大きな声を出したこともないような大人しい人間。
しかし最近、妻に八つ当たりで暴力をふるい家を追い出された(本人談)。仕事の合間に妻に謝罪の電話を何度となく入れているが、なかなか許してくれないことで気分が相当落ち込んでいる。

相棒フィル

Session9_Movie2001

なんでもはっきり言うタイプ。ずっとゴードンと一緒に仕事をしてきたが、ゴードンの仕事の取り方、交渉の仕方に少し不満がある。それでも最近様子がおかしいゴードンに気がつき、話しかけアドバイスするなど、フィルにとってはゴードンは親友だ。
私生活においては、今回もチームに入っているハンクに恋人を寝取られ、ハンクに対してよい感情を持っていない。もっと仕事の出来るクライブを外してハンクを入れたことについても、ゴードンに不満がある。

他には遊び人風のハンク、弁護士志望だったマイク、ゴードンの甥ジェフ(暗所恐怖症)がメンバーだ。
この5人が防護服にマスクの姿で作業する。
巨大な元ダンバース精神病院。これは実在する。

ダンバース精神病院

かつてマサチューセッツ州ダンバースにあった心身疾患者のための州立精神科病院であり保護施設。現在は外壁の一部を残して解体され、跡地は住宅地になっている。
同病院は、カークブライド計画に基づいた総合施設として、1874年、マサチューセッツ州片田舎の人里離れた土地に、ボストンの著名な建築家ナサニエル・J・ブラッドリーの施工管理の下で竣工され、1878年に開業した。
ロボトミー手術の発祥の地として一説には噂されている。 (Wiki:ダンバース精神病院)

Session9_Movie2001


カークライド博士が提唱した崇高な治療法を行うため、日当たり良く風通し良く立てられたゴシック様式に則った壮大な建物は、上から見ると鳥が羽根を広げたように見える。治療の一環として各所に庭園や畑などが作られ、患者が気持ちよく過ごせるようにと考えられた。

Session9_Movie2001

当初は1棟に付き200数十名ほどの入院患者を収容するとして運営されていたが、有名になるにつれみるみるうちに患者数は増加。一番多い時で7000名を超えたという。この想定外の患者数にベッドは足りず、酷い場合は地下の廊下に子供用のベッドに寝かされていた患者も。そのうち、今では禁止となった非人道的な治療法(ロボトミー手術、暗い部屋への監禁、冷水治療、熱湯治療など)が行われるようになって問題化、1960年代には入院患者が減少し始め、1985年に閉鎖される。現在はそのほとんどの建物は解体され、住宅地になっている。
ちなみにこの場所は魔女裁判で有名なセーラム近郊である。(DVD解説)

こんな広い建物のアスベスト除去作業。普通であれば5人で3週間、がんばって2週間かかるところを、ゴードンは仕事ほしさに1週間で受けてしまう。これに対して皆は不満があったが、やってのければかなりのボーナスが出るとのことなので、仕事の受注は決まり、作業が始まる。全てを次の月曜には終わらせなくてはならない。
物語は曜日を追って進んでいく。

Session9

■月曜

各々作業を分担し仕事が始まる。
この不気味な建物に入った途端、ゴードンには自分の名を呼ぶ幻聴がし始める。マイクは病院だった頃のスタッフルームで興味深い治療中の録音テープ「セッション1」を見つけ、聴き始めてしまう。それはメアリーという女性患者のものだった。
その日の仕事は終わったが、育児疲れのゴードンは家に帰るのが億劫だ。

■火曜

ハンクが地下で多量のコインを見つける。いったん隠し夜に一人でこっそり取りに来ようと計画。これを売った金でもっと自由に生きたいと思っている。
ゴードンは見慣れぬ2人の男と話すフィルを見かけ、自分を見捨てるのではないかと疑心暗鬼に。
マイクは時間を見つけては治療テープを聴いている。

■水曜

ハンクが来ない。フィルの元恋人でハンクの現在の恋人にフィルが連絡するが、大金を持って出ていったと言われる。言い争いになるゴードンとフィル。
妻を殴ってしまい謝罪のために何度も妻に電話するゴードン。だが妻は許してくれない。
マイクはどんどんメアリーのテープを聴いてやめられなくなっている。

■木曜

ゴードンの様子がますます不安定に。そんな中、建物の階段室で奇妙な様子のハンクを見つけたジェフ。すぐに姿が見えなくなったハンクを皆で探すが-
マイクはとうとう最後の「セッション9」のテープを聴き始める。



「Hallo Gordon・・」

ゴードンがこの病院に足を踏み入れた時から聞こえ始めた自分を呼ぶ声。良き家庭人であったはずの彼が妻に暴力をふるい、どんどん情緒不安定になっていく。
それに呼応するように進んでいくマイクが聴いているテープ。それはメアリーという女性患者の治療経過テープだが、最初は意味の分からないことを泣き叫んでいるだけだったのが、次の瞬間、違う声が話し出す。それは医者では無い。
その不気味な声を背景に、5人の男たちは徐々に奇妙な出来事に見舞われ、少しずつ信頼関係にヒビが入っていきバラバラになっていく。そしてテープは最後の「セッション9」へと進む。そこに録音されていたものとは-。

広くて明るく風通しのいいはずのこの建物が、アスベスト除去の設定もあってかどんどん息苦しく狭く暗くなっていく。『グレイヴ・エンカウンターズ』のような派手な化け物は一切出てこないというのに、何かゾッとするこの場所。それは数千もの患者が叫び苦しんだ場所だからだろうか?何千もの夢が散っていった場所だからだろうか?
全米で一番コワイ廃墟と噂されたこの病院が、今はもう無いということなのでなんだかホッとした。
ではまた  ※下にネタバレが

【ネタバレ】

メアリーの人格の一つと思われるサイモンとは何か?これは決してメアリーの人格の一つではなく、人に取り憑く“悪魔”のようなものだと思われる。サイモンはセッション9で言っていた。
「弱い心や傷付いた心に潜んでいる」
と。これが外的な悪魔なのか、(自己が作り出す)内的な悪魔なのかは分からない。しかし暴力的で最悪な命令を出すことには変わらない。頭の中に響く何者かの声。
あーー、『悪の教典』のアレですね。

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