純愛的破壊 『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994) -Natural Born Killers-

かなり前に1度観たきりの『ナチュラル・ボーン・キラーズ』。
暴力だけのワケワカメ的映画の認識だったけど、最近WOWOWでやっていたので再見。まず1回目と2回目の違いは「タランティーノ」映画を経験したかしていないか。もちろん2回目はタランティーノ映画をたっぷり観た後となります。

Natural_Born_Killers_02
■ナチュラル・ボーン・キラーズ■
1994年/アメリカ/119分
監督:オリバー・ストーン
脚本:デイヴィッド・ヴェローズ 、リチャード・ルトウスキー 、オリバー・ストーン
原案:クエンティン・タランティーノ
出演:
ウディ・ハレルソン(Mickey)
ジュリエット・ルイス(Mallory)
ロバート・ダウニーJr.(Wayne Gale)
トミー・リー・ジョーンズ(Dwight McClusky)
トム・サイズモア(Jack Scagnetti)
ロドニー・デンジャーフィールド (Mallory’s Dad)
ラッセル・ミーンズ(Old Indian)
エディ・マクラーグ (Mallory’s Mom)

いかれたカップルの映画は数々あれど

実在の事件に基づいていないという事も手伝ってか(モデルはあり『地獄の逃避行』)、この映画のミッキー&マロリーはそのいかれ具合が群を抜いている。
あまりのひどさに欧米各国で年齢制限公開や上映禁止となり、話題を呼んだのも最もだ。
タランティーノの原案に監督であるオリバー・ストーンが手を入れたことでタランティーノが意図するストーリーと違ってしまい激怒したという逸話付きだが、なんのなんの充分過激でバイオレンス、タランティーノ節がうなっている。

冒頭のミッキー&マロリー登場シーン。
田舎の埃っぽいレストランのカウンターに横並びで座っている二人。まだ顔は見えない。どのパイがお勧めかでウェイトレスと長々とおしゃべりをするミッキー。
そしてその後の非情な大殺戮。
これがタランティーノ節でなければいったい誰の節?というところからこの映画は始まる。
※注)ちなみに『パルプ・フィクション』も同じ1994年作

社会派監督オリバー・ストーンでバイオレンス?タランティーノ?と思いながら観てたけど勘違いしてました。この作品は暴力に彩られた「純愛的破壊的社会派」作品でした。

簡単なあらすじは-
実の父親に性的虐待を受けていたマロリーはミッキーと出会い、父親とその非道い振る舞いを許していた母親を二人で殺して逃避行の旅へ。行く先々で殺人と強盗を繰り返し警察に追われるが、事件を取り上げるマスコミによっていつしかダークヒーローとして若者に支持されるようになる。
永遠の愛を誓い合って逃げる二人を非人道的暴力刑事スキャグネッティ、視聴率を取りたいTVキャスターのウェイン・ゲールが追いかける-
Natural Born Killers_1994

主役ミッキーを演じるウディ・ハレルソン
Natural Born Killers_1994
マフィアの雇われ殺し屋の父と、弁護士秘書の母の間に生まれる。父チャールズは1968年と1978年に殺人を犯し(1978年の事件は連邦判事を銃殺)終身刑となり服役中に死去。父はまた、ジョン・F・ケネディ暗殺の実行者の一人と名乗っていたこともある。 Wikiより

ちょっと調べてアメリカの懐の広さにびびりました。
ゾンビランド』(2009)では無骨なナイスガイ、『2012』(2009)では先見性のある変人の役で出演。『ラリー・フリント』(1996)でアカデミー主演男優賞ノミネート経験あり。

そしてマロリー役ジュリエット・ルイス
Natural Born Killers_1994
1973年生まれ。
独特のオーラのある人で、そのオーラを天使のようにも悪魔のようにも使い分けられる人。
ケープ・フィアー』(1991)で世間知らずのお嬢様として出発(デビュー自体はもっと前)。『蜘蛛女』(1993)ではよれよれ中年男(注:この記事参照)の若い愛人に。『ギルバート・グレイプ』(1993)では将来をしっかり見据えた家族、友達思いの旅する少女。そして同じ年『カリフォルニア』(1993)では変質犯罪者の恋人に。


このミッキーとマロリーはそれぞれ幼少期から親による虐待経験があり、その陰惨な記憶が度々フラッシュバックとして蘇り画面に映し出される。虐待シーンだけではなく、この作品には全編に渡って二人の記憶や感情が絵となり動きとなって散りばめられている。

それはモーテルの窓の外に映し出される狼であったり、空を飛ぶ龍であったり、塀に写る炎であったりする。特に狼、龍、蛇は何かを象徴するかのようによく出てくる。二人の苦しみの象徴であるはずなのに結婚指輪に蛇の形の物を選び肌身離さず付けているのは皮肉だ。


二人が傷を持った子供のまま大人になったとすれば、こちらは腐った汚い大人代表。
黒服やBOSSでお馴染みトミー・リー・ジョーンズ


自己保身のみを得意とするかなりおかしな刑務所所長役。

鉄をまとった姿で活躍中ロバート・ダウニー・Jr


自己中なTVキャスター役。
ドラッグ問題で相当苦労した彼。
この頃はまだ真っ最中で、なんというか大きな目がただのガラス玉のように見える。

頼りになる軍曹トム・サイズモア


超自己中暴力警官役。
あまり悪役はしない人のイメージがあったのでちょっと驚き。
それに今より痩せてて若くて髪が黒くて長い。

この3人の前ではミッキーとマロリーがとても純粋に見えるから不思議だ。

この作品には薬物は全く出てこない(と思う)。
出てはこないが、映像そのものがまるで薬物中毒患者の妄想のようだ。
カラーになり、モノクロになり、ざらざらしたフィルム状になり、アニメになる。
そして脳の中の記憶が浮遊し飛び交い、点滅する。
それら全てを「形のある銃」で破壊し、破壊し、破壊する。そういった作品だ。
そして最後にL.コーエンの歌
‘「悔い改めよ」とは、どういう意味だ?’

Natural Born Killers_1994

多分10年以上の時を経て2回目観ましたが、変わるもんですね同じ作品でも感想が。
気に入った映画は何回も定期的に観るけど、なんじゃこりゃと思ったものもたまには引っ張り出してくるのもいいかもしれない。
ではまた

あぁ、それと1つ分からないことが。
冒頭の埃レストランに出てくるこの人。
この場所でふわぁ~っと消えた後、最後にも出てくるんだけど、いったいこの人の正体は???

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • ナチュラルボーンキラーズ

    いかれたカップルといえば
    シド&ナンシーとか、ギルモア&ニコールとかがパッと思いつく
     
    シドはそんなに詳しくないんですけどね
    セックスピストルズ自体はアルバム1枚だけなら

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