今となってはとっても分かりやすいホラーなんだけど、ミア・ファローの透明感のある可愛らしさと、先駆け感のある独特の恐ろしさが、今見ても新しく感じられて楽しめる作品。雰囲気が好きで定期的に観てる気がする。
■ ローズマリーの赤ちゃん - Rosemary’s Baby – ■
1968年/アメリカ/136分
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロマン・ポランスキー
製作:ウィリアム・キャッスル
製作総指揮:ロバート・エヴァンス
撮影:ウィリアム・A・フレイカー
音楽:クシシュトフ・コメダ
出演:
ミア・ファロー(ローズマリー)
ジョン・カサヴェテス(ガイ)
ルース・ゴードン(ミニー・カスタベット)
シドニー・ブラックマー(ローマン・カスタベット)
モーリス・エヴァンス(エドワード・ハッチ)
ラルフ・ベラミー(ドクター・サプスティン)
■解説:
映画.com
ポーランド出身の鬼才ロマン・ポランスキーがアイラ・レビンの同名小説を映画化したオカルトホラーの先駆的作品。本作が映画初主演のミア・ファローが主人公ローズマリーを熱演し、一躍脚光を浴びた。
■あらすじ:
売れない俳優ガイと妻ローズマリーは、マンハッタンの古いアパートに引っ越してくる。そのアパートは以前から不吉な噂がささやかれていたが、若い2人は気に留めることもない。ある日、隣人の老夫婦の養女が不可解な飛び降り自殺を遂げる。その後、隣人夫婦はローズマリーに、養女が生前に身に着けていたペンダントを贈る。やがて奇妙な悪夢とともに妊娠したローズマリーは、次第に情緒不安定に陥っていく -
新居を探す若夫婦が案内された古いアパート。元は数軒分だった部屋に壁を作って仕切り改装したアパートということで、壁が薄く、扉一つで隣家と繋がっていたりしている箇所がある。以前の住人に子供をとって食う姉妹がいたという噂やら、霊媒師が殺されたやら、新聞紙でくるまれた赤子の死体が見つかったやら。その上、借りようとしている部屋の前の住人が残した妙な走り書きや枯れた薬草など、何をとっても「引っ越しちゃダメだ」と言わんばかり。
ダコタ・ハウス
ローズマリーたちが移り住んだアパートの外観はジョン・レノンが住んでいたことでも有名なニューヨーク、マンハッタンにあるダコタ・ハウスで1884年竣工の歴史ある建物。
ここに住んでいたジョン・レノン(ビートルズ)が1980年12月8日、マーク・チャップマンに射殺された場所 (建物玄関前) としても知られている。
Wikipedia:ダコタ・ハウス
ダコタ・ハウスの役員会による入居審査基準は、ニューヨークで最も厳しいとされ、単に資産や収入が多いだけでは入居できない。今までにビリー・ジョエル、シェール、メラニー・グリフィス、マドンナ、カーリー・サイモン、アレックス・ロドリゲス、ジャド・アパトー、ティア・レオーニなどが入居を拒否されている。
このアパートの怖いところは噂になっていることだけではなかった -というお話。
地下の洗濯室で顔見知りになった女の飛び降り自殺を皮切りに、お節介でおしゃべりな隣家の老夫婦に始まって、そのグループの老女たちから四六時中、監視されているかのような日々が続いていく。元来、心優しいローズマリーは少し不満はあるものの上手く付き合っていこうとしていた。
そんな中、妊娠。異様に喜んでくれる隣人たち。
だがこの頃からローズマリーは夢とも現実とも分からない妙な体験の記憶が残るようになる。仕事が次々決まって上がり調子の夫ガイに比べて、妊娠中だというのに痩せて衰弱していくローズマリー。思い当たるのは隣人が何かと食べさせ飲ませようと持ってくる薬草タニス入りの食べ物。
心配した親代わりのハッチがローズマリーの話を元に、このアパートや住人について調べ始め、ある事実に突き当たる。
「All of Them Wiches」 悪魔の僕たち
この本に行き当たり、ローズマリーに話をしようとした矢先に病に倒れ亡くなったハッチ。この頃には夫でさえも信用できなくなっているローズマリーはアパートを逃げ出し、以前の産婦人科医に助けを求めるが -
誰が敵で誰が味方か、とても分かりやすく進んでいくストーリー。『ウィッチ』や『処女の泉』を観たところだからか、ローマ法王について悪く言うようなシーンがとても珍しく、この隣人たちの信仰する神がキリスト教ではないことはすぐにわかる。
産まれた赤子をさらって生贄にでもするのか、と思ったら事実はそれ以上。この悪魔崇拝者たちのほとんどが老人で、元気な赤ん坊を産んでくれる若い女子を探していたところに現れた可愛いローズマリー。そのうえ、多産家系ときている。夫は「売れる役者」で買収済み。このアパートは飛んで火にいる夏の虫収集器だったわけだ。
それにしても、このカルト集団構成員の気持ち悪さ。リンチ作品に時々出てくる妙な老人や夫婦のようだ。妙に上品ぶっていて人のよさげに見せているところも共通点。
簡単に他人を信じてはならない。
ところで、本作が1968年に公開され、同じ年に監督ロマン・ポランスキーはシャロン・テートと結婚している。悲劇が起きたのは翌1969年8月。人違いで殺されてしまった愛する妻は妊娠8か月だった。
他にも本作『ローズマリーの赤ちゃん』関係者には、不審な事故や死が絡んでいる(詳しくはWikipediaで)。
監督 ロマン・ポランスキー
ポーランド出身の映画監督。
Wikipedia:ロマン・ポランスキー
1962年に『水の中のナイフ』で監督デビュー。共産党一党独裁体制のポーランドでは黙殺されたが、西側諸国、及びアメリカで絶賛され、ポーランド代表作品初のアカデミー外国語映画賞への出品、及びノミネートも果たした。その評判に惹かれるように1963年にイギリスへ渡り、映画『反撥』と『袋小路』で二年連続ベルリン国際映画祭の銀熊賞 (審査員グランプリ)と最高賞の金熊賞を受賞。更なる評価を高める一方で、アメリカのヒューストンに居を構え、ハリウッド映画『ローズマリーの赤ちゃん』を監督。作品は大ヒットし、ポランスキーはアカデミー脚色賞にノミネートされ、ハリウッドの寵児となる。
■主な作品
- タンスと二人の男(1958)
- 水の中のナイフ(1962)
- 世界詐欺物語(1964)
- 反撥(1965)
- 袋小路(1966)
- 吸血鬼(1967)
- ローズマリーの赤ちゃん(1968)
- マクベス(1971)
- ポランスキーの欲望の館(1972)
- チャイナタウン(1974)
- テナント/恐怖を借りた男(1976)
- テス(1979)
- ポランスキーのパイレーツ(1986)
- フランティック(1988)
- 赤い航路(1992)
- 死と処女(1994)
- ナインスゲート(1999)
- 戦場のピアニスト(2002)
- オリバー・ツイスト(2005)
- それぞれのシネマ(2007)
- ゴーストライター(2010)
- おとなのけんか(2011)
- 毛皮のヴィーナス(2013)
- 告白小説、その結末(2017)
- J’accuse(2019)
『袋小路』(1966) - Cul-de-sac –
小鳥のようなテレサを失い、自らが小さな岩に閉じ込められて前妻の名を呼び泣いている哀れな男の姿。なんか身につまされるものがあって、一緒に泣きたくなりますよ。