『ゆれる人魚』 (2015) - The Lure

公開されるらしいよっ!って知ったときからとても楽しみにしていた人魚映画。アンデルセン原作と狼人間の融合みたいな感じではあるけれど、これはこれで好きかもしれない・・・

■ ゆれる人魚 - The Lure – ■
2015年/ポーランド/92分
監督:アグニェシュカ・スモチンスカ
脚本:ロベルト・ボレスト
製作:ボジミェジュ・ニデルハウス
撮影:クバ・キヨフスキ
音楽:ヨアンナ・マハ
出演:
キンガ・プレイス(クリシア)
マルタ・マズレク(シルバー)
ミハリナ・オルシャンスカ(ゴールデン)
ヤーコブ・ジェルシャル(ミーテク)
ジグムント・マラノウッツ(ナイトクラブの支配人)

■解説: 共産主義下にあった1980年代のポーランドを舞台に、肉食人魚姉妹の少女から大人への成長物語を野性的に描いたホラーファンタジー。監督は本作が長編デビュー作となるポーランドの女性監督アグニェシュカ・スモチンスカ。
(映画.com)

■あらすじ:
海辺で歌うバンドに憧れて海から陸へと揚がってきた人魚の姉妹。彼らに拾われナイトクラブのスターになるものの、姉シルバーがバンドの若者との恋を諦められず尻尾を切り落とす決断をしてしまい ―


全体的にはディズニー物にも劣らない人魚と王子の哀しいロマンス。それを軸に歌と踊りとエロティック、プラス狼人間的ホラー(というよりも80年代作品『キャット・ピープル』の要素)を付け加えた作品。

 
尻尾の造形は人魚というより蛇か鰻のようでおどろおどろしく、オープニングのアニメーション部分ではドクロが多数出てくるところから「はは~ん、これは人喰い人魚のお話だな」と(誰でも)わかるようになっている。
人喰い人魚といえば私的これは外せない作品『人喰い人魚伝説』があるが、これは美しいお年頃のセクシーな人魚姫(後に恐ろしい怪物に変身するが)。

対する本作は夢見るお年頃の人魚少女ゴールデンとシルバーの2人。まだあどけなさが残る表情と大人になりつつある感情とがない交ぜになっているのは人と同じ。姉シルバー(金髪の方)はこうと思ったら一直線、大好きな彼氏のためなら何もかも捨てられる。反対に妹ゴールデンは斜に構えたところがあって、姉よりは現実的である。
オープニング近く、海から陸の人間を見る2人のシーンではシルバーは憧れを、ゴールデンは探究心を持って眺めていることがわかる。

2人は人の言葉を話すが、人魚語ともいうべき言語(イルカや鯨のような話し声)を使う。この音は周波数の関係なのか超能力のせいなのか人には聞こえない。人間たちにはいつも微笑みを向けている2人の魚語による会話の内容は、普通に10代の少女らしく、あけすけで容赦が無い。

本作の特徴となっているミュージカル部分は案外見応えがあって、使われている曲のメロディーがいつまでも頭に残る。伝説のセイレーンは、船乗りを歌で惑わし海に引きずり込むと言われているのだから、そうじゃないとね。

歌と踊りで人々を魅了していく人魚姉妹だったけど、姉シルバーがどうしても彼氏と同じ人間になりたいと考え始める。妹ゴールデンの心配や人に姿を変えて人間世界をさまよっている男から「尻尾を失えば声も失う」と教えてもらったのにも関わらず・・・
そしてドラマは悲劇へと向かう。

けれども、ここのシルバーの表情がすごくいい。全てを愛する人に捧げ愛にどっぷり浸かったまま浄化する喜びと言いましょうか。
だがしかし!この愛も実は独りよがりな自己中心的なものであり、悲劇の結末は更なる悲劇を呼び起こし、誰にも幸福は訪れない。ぁあ、可哀想に・・・


人魚映画が造られるたび、その新しい解釈や人魚の造形に感心し、どれも好きな作品となることが多い。この少女人魚たちもそのリストに加わった。

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