煩悩ファンタジー『マクナイーマ』(1969) - Macunaíma –

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ふわー、、世の中には変わった映画があるものですねぇ。今まで観た中だったらカルト作品第一位にこれを選ぶ。突拍子も無いことが場所を変えて次々起きるけれど、作品全体としてはきちんと構成されているというか、それなりに話になっているところも面白い。一言で言うなら「煩悩の化身による社会派冒険劇」。

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■ マクナイーマ - Macunaíma – ■
1969年/ブラジル/105分
監督・脚本:ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ
原作:マリオ・デ・アンドラーデ
撮影:ギド・コズリッチ
 
出演:
グランヂ・オテロ
パウロ・ジョゼ
ヂナ・スファッチ
ミウトン・ゴンサウヴェス

解説:
1960年代、フランスの“ヌーベル・ヴァーグ”に呼応してブラジルで起こった映画の新たな潮流“シネマ・ノーヴォ”。その牽引役の一人ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督が69年に手掛け、近年、カルト映画として世界的に再び注目を集めているサイケデリック不条理劇。2010年12月、デジタルリマスター版にて本邦初劇場公開が実現。

 
あらすじ:
アマゾンの密林で老婆の股間から産まれ落ちた赤子。その容姿は、なんと黒人の中年男。不吉を意味する“マクナイーマ”と名付けられた彼は、ある日、魔法の泉で水を浴びるや、美しい白人の青年に変身。そして、兄弟と共にアマゾンを飛び出し、大都会リオデジャネイロへと向かうマクナイーマだった ―

(allcinema)


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老女から生まれ出た男“マクナイーマ”。
母親自身に“マ”で始まる名前は不吉だからと“マクナイーマ”と名付けられ、6歳になってもろくに話せず、寝てばかりの怠惰な毎日を過ごす。起きてくるのは“金”を見つけた時と家族が水浴びをする時。皆が素っ裸で川に入ると嬉しそうに飛び込んでくるのだ。もちろんくっつくのは兄の嫁。
 
寝る、食う、女、金・・・
こんな煩悩の塊のような6歳児が他にいるだろうか?「面倒くさい」が口癖の6歳児が?
・・・いた。“マクナイーマ”だ。
 
Macunaíma_12こんなマクナイーマだから見た目が中年なのは当たり前。天使のような赤ん坊や幼児では似合わなさすぎる。神はこの子の頭と心の中身をそのままに具現化してこの世に送り出したのだろう。
彼の家族は兄が2人と下の兄の嫁、母親の4人。お察しの通り、皆変わってる。だいたい、どうして老婆が出産出来るのか?マクナイーマの父親は誰なのか。最初はこんな事が気になったが、物語が進むうち、そんな些細な事はどうでもよくなってくる。
(画像は水害でいよいよ食べる物が無くなり、お腹をすかせている兄嫁と母親とマクナイーマ)
 
Macunaíma_19ここまでも充分ヘンな話だが、ここからも益々おかしな方へ向かっていくこの映画。
兄嫁が股間から出したタバコを吸って、いきなり妙な時代の王子様に変身。なんでいきなりこんな派手な白人の王子様に でもコレ、よく見てみて下さい。ここは南米ブラジル。大航海時代にアメリカ大陸を発見した人々はこんなような恰好だったのではないでしょうか?(大きな意味で) いきなり自分たちの土地に入り込んできた見知らぬ白い人達。先住民にとって最初は興味深く、憧れの対象でもあったのが最後は敵に。
ということでこの姿は長続きせず、すぐに元のマクナイーマに。
 
Macunaíma_20この後、家族の手伝いを全くしないマクナイーマは母親に森で置き去りに。で、ここからは(仕方なく)自立したマクナイーマ。森の中で化け物に出会い脚の肉を削ってもらったり、追いかけられたりしながらの冒険が始まる。ようやく家族のいる家に戻った時に母親がショック死。哀しみのあまり、兄弟共に家を捨て街へと出て行く事に。
途中、妙な盛り土から噴出する水を浴びたマクナイーマはまたもや白人青年の姿に(真ん中。両端は兄)。
 
Macunaíma_22ここからも、もちろん奇想天外なマクナイーマの冒険が続く。でも基本は「寝る、食う、女、金」・・・ でも白人青年になったマクナイーマはモテるんですよね。それも次から次へと美女ばかり(そうそう、この映画に出てくる若い女性は皆美しい)。
それでこの冒険譚の最後はどうなるかって?最終的に面倒くさがり屋のマクナイーマの生活が「寝る、食う」になった時、久し振りに見つけた「女」を追って、ラストは恐怖のホラー仕立てで終幕。でも、ホースが見えてる、ワザとかな。
 
全体的に奇想天外でお下劣なお話なんだけど、初めてブエノスアイレスに出てきたマクナイーマに「人と機械の区別が付かない・・」と言わせたり、街で戦うゲリラが出てきたり、貧困層が行き交う街の中、金持ちが自宅のプールで結婚式を挙げていたり。そのプールには“臓物と豆の煮込み”なる人体が浮かんでいたり。【デジタルリマスター版】だけあって、綺麗な赤色で泡になって消えていくラスト。
なかなか皮肉の効いたおバカ映画ではありました。
 
最後に一言。彼女は絶対、人魚に見えない