『変態村』(2004) - Calvaire –

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変態島』と同じ監督だったんだ。どおりで過酷な自然に翻弄される人間が描かれているわけだ。と言っても、今回、主人公を翻弄するのは大いなる自然だけでは無い。ソレは“変態”的ではあるものの、どこか悲しみを帯びていて「気持ちワルっ」の一言で片付けられない何かが。『変態島』と同様に独特の雰囲気がある。こちらも「ヘンタイ」じゃなくて「ヘンシン」な意味の「変態」なのかな
 

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■変態村 - Calvaire -■
2004年/ベルギー・フランス・ルクセンブルク/94分
監督:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
脚本:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ 他
製作:ミカエル・ジェンティル 他
撮影:ブノワ・デビエ
音楽:ヴァンサン・カエイ

出演:
ローラン・リュカ(マルク)
ジャッキー・ベロワイエ(バルテル)
フィリップ・ナオン(ロベール)
ジャン=リュック・クシャール(ボリス)
ブリジット・ラーエ
ジジ・クールシニー
ジョー・プレスティア


解説:
突然の来訪者が引き金となって人里離れた小さな村の狂気が加速していくさまを、独特の映像センスで描き出した異色ホラー。監督はベルギーの新鋭ファブリス・ドゥ・ヴェルツ。主演は「ハリー、見知らぬ友人」のローラン・リュカ。
(allcinema)
 
あらすじ:
どさ回りのキャバレー・シンガーのマルクはベルギーから南仏の会場へ向かう途中、辺鄙な場所で道に迷ったあげく車が故障してしまう。仕方なく近くにあった森の中の小さなペンションに投宿するが、車の修理もままならない。そうするうち、親切だった宿の主人バルテルの態度が狂気を帯びたものに変わっていき ―


Calvaire_29初っ端から妙な雰囲気が漂ってる。
主人公の歌手マルクはどんな客にも誠実で親切だからなのか(それが仕事ではあるのだけれど)、“自分は特別”と思われてしまいがち。特に彼が回るところは地方の小さな老人ホームだったりもするから、こういう芸人の目線に慣れていない客が多い。で、そこに暮らす老人に言い寄られたり、ホームのスタッフにも迫られたり、最初から行き過ぎたそういう性的アプローチに困っているマルクの姿が描かれる。
このマルクの色気が全世界に認められさえすれば世界的大スターになるところなんだろうけど、残念ながらそうでは無かったためマルクに災難が降り注ぐ。
 
Calvaire_30道に迷い、車が故障してしまったがために迷い込み、雨まで降ってきた夜中の森。
たまたま通りがかった地元の男に近所の宿を教えてもらって、“ついていた”はずだった。宿の主人はマルクに親切で車の故障まで直してくれると言う。次の舞台の予定があり万全を期したい彼は整備工を呼んでくれるよう電話をかけてもらうが、明日になるよ、というのんびりした田舎の人に、次第にいらだってくる。
 
それでも優しい彼は、妻に逃げられ落ち込む主人に請われるまま、愛の歌を歌ってやる。感動する主人。しかしマルクは知らないが、この主人は動かないマルクの車の中に勝手に入り込んで持ち物を物色し、めぼしい物を自分のポケットに。善人なのか悪人なのか観ている側は判断に迷うようになってくる。
それに森で出会い宿を教えてくれたボリスという若者も、いなくなった犬を探して一日中森をさまよっている変わり者。その上、宿の主人は近くの村へは絶対近付くな、と言う。村人がちょっと変わっているからと。
確かに散歩に出たマルクが目撃してしまった、異様な村人の行動・・。間違いなく関わってはいけない類いの人々だったのだ。
 

  

【この後はネタバレが】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Calvaire_11この後、マルクは通常では考えられないような、のっぴきならない状態に陥るのだが、、
何故に宿の主人はマルクを妻と思い込んだのか。逃げた妻グロリアを思うあまり精神を病んでいたのか?と考えるのが普通だろうが、彼をグロリアと勘違いしているのはなんと、主人だけでは無かった。
どうやらグロリアは村のある男の恋人か妻だったようだ。そのグロリアが宿の主人バルテルと駆け落ちした。だから村人達とバルテルは仲が悪い。だというのに、グロリアはバルテルの元も去ってしまった。
そんなグロリアを何故に村中の人間がマルクと見間違うのか。普通に皆がおかしいのか?と思っていたところ、、、
 
Calvaire_14このシーンは、マルクがバルテルに捕まってすぐのシーンで、まず髪を剃ったのは逃げられないようにするためだと見ていたが、後ろに掛かっている額縁の絵。ここに描かれているのがマルクにとてもよく似ている。
ここで、ハッと思い当たった。グロリアはホントに女性だったのか?確かにマルクにドレスを着せている。だからといって本当に女性だったのだろうか?だいたい、この村には「女性」が一人もいない。村人のあまりの狂気さに皆、逃げてしまったのか。それとも皆殺されたのか?
それに村人の動物に対する認識もおかしい。牛(多分)相手によからぬ事をしたり、豚をペットのように連れ歩いたり、子牛を「犬」と呼んでみたり。ピアノに合わせて踊るダンスも、なんだろう、あれは。盛りのついた鳥同士の威嚇みたいなあのダンス。
 
Calvaire_22そんな事を考えているうちにマルクは逃げ出した。凍てつく冬の森の中を。森を抜けて待ち受けていたのは、所々穴のように空いているぐずぐずの沼だ。足を取られ沈んでいったのは村人だったが、その彼に言われるまま「愛している」と答えてやったマルクは彼の基本的な性格である優しさからだったのか。
逃げる途中で見かけた十字架の遺体から、この村の被害者はマルクだけでは無かったことが分かる。この遺体こそ“グロリア”だったんじゃないかな、と思ってる。もちろんこんな目に遭わせたのは宿の主人バルテルだ。“グロリア”は逃げ出したが、マルクと同じように捕まり、同じように十字架に掛けられたんだろう。
この遺体は、やっぱり男性に見える。
男性だけではやがて誰もいなくなる。森の中のそんな村。ホントにあったのかな…