『ロスト・ハイウェイ』(1997) - Lost Highway –

究極のストレスにさらされた男がハイウェイをひた走る。
延々と続くライトに照らされた地獄への道。そこで男が見たものとは、現実なのか、妄想なのか。

Lost Highway_1997 

■ロスト・ハイウェイ - Lost Highway -■
1997年/アメリカ・フランス/135分
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ、バリー・ギフォード
製作:ディーパック・ネイヤー他
撮影:ピーター・デミング
音楽:アンジェロ・バダラメンティ他
主題歌:デイヴィッド・ボウイ “I’m Derranged”
出演:
ビル・プルマン(フレッド・マディソン)
パトリシア・アークエット(レネエ/アリス)
バルサザール・ゲティ(ピート)
ロバート・ロッジア(Mr.エディ/ディック・ロラント)
ロバート・ブレイク(白塗りの男)
リチャード・プライヤー(アーニー)
ゲイリー・ビジー(ピートの父親)
ジャック・ナンス
 
解説:
自身が製作総指揮したTVドラマを映画化した「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」から4年の沈黙を破ってリンチ監督が放った、同監督らしい悪夢ムードにあふれる不条理スリラー。先が読めない物語、刺激的な映像とサウンド(知る人ぞ知る豪華メンバーが担当)の演出など、観客の感性に挑戦し続けるリンチ・ワールド。本作は集大成という声も高い、ファンならずとも必見の1本だ。出演は「インデペンデンス・デイ」のB・プルマン、TV「ミディアム 霊能者アリソン・デュボア」のP・アークエット。
 (WOWOW)
 
あらすじ:
サックス奏者フレッドはある朝、インターホン越しに“ディック・ロラントは死んだ”という奇妙な男の声を聞く。その翌日からフレッドとレネエ夫婦宅の玄関先に、送り主不明のビデオテープが毎日1本届くようになる。1本目は夫妻の自宅の外観が、2本目には家の中までカメラが入り夫婦の寝姿が撮られており、あわてて警察に連絡する2人。しかしその翌日届けられた3本目には、妻を殺害し、その血で真っ赤になっている夫フレッドの姿が映っているのだった-

 


 
ブルーベルベット(1986年)、ワイルド・アット・ハート(1990年)、ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間(1992年)と、比較的わかりやすい作品が続いた後に、きました..ドーン・・・とっ、デヴィッド・リンチ監督作の神髄がっ
この作品は、ある男の狂気の行方を追っていきます。行き先は不明です。
 

序章
サックス奏者フレッド。音楽の仕事は波に乗り、美しい妻もいる彼は順調な人生を歩んでいるかのように見えた。そんなある朝、苦悩に落ち込み、疲れ切った様子のフレッドが自宅にいるとチャイムが鳴る。インターホンに出た彼の耳に飛び込んできた男の声。
 “ディック・ロラントは死んだ”
 
フレッドとレネエ
Lost Highway_1997この翌日から彼の自宅にビデオテープが届くようになる。それは玄関前の階段に投げ捨てられるように封筒に入れて置かれていた。美しい妻のレネエは気味悪がったが2人で見てみることにしたフレッド。内容は彼らの自宅を外からほんの数秒映されているというものだった。
不動産屋が置いていったのかと気にもしなかった2人だが、翌日届けられたものは、家の中を廊下、リビングから寝室までカメラが入り、2人がぐっすり寝ているところが映されていた。
あわてて警察に連絡した2人。進入経路は分からなかったが捜査を約束してもらい一安心する2人。

しかしその後もビデオテープは届き、3本目を1人で確認したフレッド。
その内容は、妻を殺害、ばらばらにして血の海に座り込んでいる自分の姿だった。
そして逮捕、裁判が行われ、フレッドは死刑が宣告された。独房で頭痛を訴えるフレッドだったが、ある日、看守が独房を確認すると、なんとそこにいたのはフレッドではない見知らぬ若者だった-

本作前編はフレッドとレネエ夫婦の物語。基本は2人のやりとりが続くが、時折はさまるフレッド1人の行動。作品冒頭がまずフレッド1人。疲れ切って放心したようにタバコを吸っているフレッドのアップで始まる。そこにインターホンの奇妙な台詞“ディック・ロラントは死んだ”。これを聞いて驚きもしないフレッドにこちらが驚き、映画が始まってほんの数分で「出たー、リンチだー」と思ったのは言うまでも無い..。

Lost Highway_1997そして美しい妻レネエ登場。彼女をおいて仕事に出たフレッドは自宅に仕事先から電話をかけるが、家にいるはずの妻が出ない。なぜ、こんなことを?まるで何かを疑っているかのような行動をとる夫。
2人でパーティに出席しても、妻と他の男の様子が気になって仕方が無い夫フレッド。どうやら妻の浮気を疑っているらしい。そんなストレスもあってか、妻を満足させられないと思い込んでいる夫は、ますます疑心暗鬼の世界に追い込まれていく。
そんな時に届き始めたビデオテープ。1本目、2本目と2人で見た後警察に連絡。刑事に何か心当たりは?と質問されるが、フレッドの返した言葉は奇妙なものだった。
 “起こったとおり記憶したくない(ので、何も覚えていない)”
 
おっと-!フレッド視点で進んでいくこの物語の主人公フレッドが“起こったとおり記憶したくない”だと?ということは、、今までもこれからも起こる(起きた)ことは事実ではないかもしれないということなのか..
 
Lost Highway_1997パーティでは奇妙な白塗りの男が話しかけてくる。自分はここ(パーティ会場)にいるが、今、フレッドの家にもいると言う。自宅に電話をかけると確かにその男が電話口に。しかしこの奇妙な出来事はフレッドの少し驚く顔だけにとどまり終わる。。
そして妻ばらばらビデオを1人で見たフレッド(当たり前か)。いったん手に入れたものの、一番残酷な方法で手からずるりと落ちていった美しく大事なもの。
逮捕、死刑が宣告され独房にいた彼は、ある日他の若者に入れ替わる。
フレッド、どこ行ったん..

 

ピートとアリス
Lost Highway_1997車の整備士ピート。腕は確かな若者だが、しばらくどこかに行っていたらしい。そんな彼を待ちわびていたのは雇い主のアーニーだけではなかった。
このまじめな若者が(どこかから)帰るのを待って車を持ってきたミスター・エディ。彼はピートを可愛がっており整備費もはずんでくれるが、彼の仕事はギャングのボスでいったん怒らせると手が付けられなくなるという面も持っていた。
翌日、もう1台車を整備に持ってきたミスター・エディ。対応したピートの目があるものに釘付けに。それは助手席に座る金髪美女アリスだった。2人は一目見るなり恋に落ち、ミスター・エディの目を盗み密会を続けるようになる。しかし2人の関係にミスター・エディが気付いているようだとわかるや、アリスはピートにこう提案する。
「金持ちの知り合いの家に盗みに入って、そのお金で2人で逃げよう」と。

ここからはピートが主人公。
Lost Highway_1997フレッドの代わりに独房にいた彼だったが結局は警察に解放され自宅に戻る。自宅には優しい両親、近所には可愛い恋人、気のいい仲間達、腕前をいかした整備の仕事、とピートは充実した毎日を送っていたはずだ。しかしある夜、彼に何かが起き、ピートは連れ去られた。その何かの詳細について両親は決してピートに話さないので、見ているこっちに分かるはずがない..。

ピートとアリスは愛し合い、ミスター・エディから逃げ出すことを決めるが、好青年のピートは終始アリスの言いなりに。盗みに入ったはいいが家主に見つかり乱闘後、死亡事故が起こると、だんだんと見えてくるアリスの正体。
人が死んだことに恐れおののくピートを横目に、次々と金目のものをバッグに入れていくアリス。ピートがふと目をやった先には大写しにされたアリスのポルノ映画やミスター・エディとこの家の家主、アリスに似た女と4人で微笑んでいる写真。ようやく見つけ手に入れたと思った美しく大事なものが、するりと手から落ちていくように感じるピート。アリスは言った。「さぁ、行こう、砂漠にある故買屋の小屋へ」
 
Lost Highway_1997何度も爆発して燃えては、フィルム逆回しで元に戻る故買商の小屋。
ここで盗んだものを金に換え逃げるはずだったが、アリスの姿は消え、小屋に入るとあの白塗りの男が。いやいや、その前に小屋に入ったのはフレッドだ..。ここでピートはフレッドに戻る。あーー、、やっぱりピートはフレッド。「独房にいたピート」はフレッドの妄想でしかなく、そもそも警察に逮捕もされていないのでは。
小屋で消えたアリス。アリスもフレッドの妄想の一部だろう。殺してしまった最愛の妻レネエをアリスの姿で蘇らせ、もう一人の自分ピートと深く愛し合わせた、ということか?そしてレネエの浮気相手をことごとく殺して回った、と。
 
Lost Highway_01何度も焼かれる小屋にいた白塗りの男は、全てを把握し理性的に行動する。必要なときに必要なものをフレッドに与え助言する。フレッドにとって不気味で疎ましく邪魔な存在でありながら、必要な人物。何度も焼かれ、また元に戻る小屋がそれを表している。
フレッド、ピート、白塗りの男。3人は全てフレッドの中にある。
あー、これも違うかも…
ライトに照らし出されるハイウェイ。運転しているのはホントにフレッドか?だってフレッドは言っていた。
 “起こったとおり記憶したくない”
 
ふむ。もうこれは、ある男が運転中に魅力的な女性を見かけた。
「あんな女性が奥さんだったらなー」っと色々想像しているうちに、殺すことでしか自分のものにならないことに気がつき、想像することを一からやり直す。今度の自分は好青年。すぐに相思相愛になるも邪魔が入り、またもやうまくいかない。えーい、邪魔するヤツは皆殺し・・・
こんな妄想を退屈な運転中やっていただけの話ではないのか、と思い始めた自分。

 
しかし最後にデヴィッド・リンチ監督の追い討ちが待っていた。
フレッドが自宅のインターホンを鳴らし囁くのだ。
 “ディック・ロラントは死んだ”
 
 
・・もう私には、パトリシア・アークエットが綺麗だ、ということ以外何もわからない
   『マルホランド・ドライブ』の方がまし・・・
 
ではまた