『悪魔のシスター』(1973) - Sisters –

かな~り前に一度観て、もう一度観たい観たいと思っていた本作。 “シャム双生児”と手術室、周りにいるシスター(尼僧)の場面が怖くて強烈な印象が残っていた。タイトルは覚えていなかったが、昨今の便利なインターネットさんのお力を借りて探し出したのが数年前。2004年にDVD化されていたのを2013年お正月休みのためにレンタルした管理人momorex。 ということで2013年初っぱなのレビューは本作『悪魔のシスター

Sisters

■悪魔のシスター - Sisters -■ 1973年/アメリカ/92分
監督:ブライアン・デ・パルマ
原案:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ブライアン・デ・パルマ、ルイザ・ローズ
製作:エドワード・R・プレスマン
撮影:グレゴリー・サンダー
音楽:バーナード・ハーマン
出演:
マーゴット・キダー(ダニエル・ブレトン)
ジェニファー・ソルト(グレイス)
ビル・フィンレー(エミール・ブレトン)
チャールズ・ダーニング(ジョセフ)


解説:
“ヒッチコックの後継者”と呼ばれたデ・パルマのルーツ的作品。黒人青年が惨殺される現場を目撃した女性記者は単身捜査に乗り出すが、犯人の女性には意外な秘密が隠されていた。“シャム双生児の意識の共有”というアイディアを「サイコ」+「裏窓」のノリで構成し、グロテスク趣味で仕上げた怪奇ミステリー。音楽はヒッチコック作品を数多く手がけたB・ハーマン。
 (allcinema)

あらすじ:
モデルであり女優のダニエルは出演したテレビ番組で知り合った男性を自宅に誘い一夜を共にする。翌日、訪ねてきた元夫エミールが惨殺された男性を発見、しかしダニエルの記憶は無い。
向かいのアパートから男性が殺される様子をたまたま目撃した記者グレイスは警察に通報するも、結局死体は発見されずじまい。犯人はダニエルではないかと疑ったグレイスは、独自の調査を始めるが-


Sisters_17デビュー間もないモデル兼女優のダニエル・ブレトン。その日、テレビ番組に出演した後、番組で知り合った男性と引っ越したばかりの自宅に戻る。ダニエルはカナダ人でアメリカに来てまもない。その広々としたアパートには一人住まいだが、その時は入院先から一時帰宅している姉がいるということだった。姉妹は双子だ。
翌朝、今日が誕生日だというダニエルのためにバースディ・ケーキを買って戻ってきた男性。ベッドに横たわるダニエルに「おめでとう」と声をかけるが、振り返ったその顔は狂気にゆがみ、振りかざしたナイフで男性をめった刺しに。血を流しながら窓まではって行き助けを求める男性。しかしナイフの刃は執拗に男性の背に食い込んだ-。

Sisters_06その様子を向かいのアパートの窓から目撃した記者グレイス。
シーンは男性が息も絶え絶えに窓枠に手を伸ばす様子と、その手を向かいから見つけるグレイスの目線の2画面に分かれ、息も詰まるサスペンスへと変わる。
この2画面構成は、グレイスが警察に連絡し刑事達がやってくるのと、訪れたダニエルの元夫エミールが死体を見つけ隠すことに奔走するシーンへと続く。頭痛で意識が混濁し何も覚えていないダニエルは、おそらく姉が凶行に及んだんだとエミールに説明するが-。

Sisters_14刑事達とダニエルの部屋に来たものの何も見つけられなかったグレイスは、この「起こったであろう殺人事件」の調査を独自に始める。部屋にあったケーキの箱からケーキ屋に向かい店員に質問するも何も分からない。そこで犯人であろうダニエルについて調べていくことにする。
そうするうちにダニエルと双子の姉はシャム双生児で、数年前に分離手術を受けたこと、執刀したのはダニエルの元夫エミールであることなどが分かっていくが、いつの間にかエミールとダニエル、そして姉の狂気の世界に引きずり込まれていくグレイス。そしてグレイスは新たな殺人現場に居合わせることとなる。

Sisters_02この作品は登場人物から小道具にいたるまで、なんとも生々しいイヤな感じが漂う。
ダニエル(マーゴット・キダー)の匂い立つような色気と狂気に歪んだ顔。ダニエルにまとわりつくような元夫エミール。ダニエルを心配しての行動だろうが、これがまた不快で不愉快になる。
小道具においても同じで、大きくて豪華だけれども、どても美味しそうには見えないケーキ。いずれ臭ってくるだろうソファ。

それと双子の分離手術の様子がモノクロで展開されるが、何故か集まっている、なんとも落ち着きのない様々な人々の様子。どうして3人は踊っているの?どうして肉切り包丁が回されているの?これらはダニエルの分離手術のイメージなのだろうか?


そしてこの後展開される殺人の鮮烈な「」は、またもや生々しいシーンに追加される。
ラストは今でこそありがちではあるが、当時としてもさる有名なサイコ作品と似かよってはいる。が、親子でもなく、夫婦でもなく、「双子」というところに神秘な何かがプラスされているといえる。

監督は失意の人ブライアン・デ・パルマ

キャリー(1976)』『殺しのドレス(1980)』などミステリー・サスペンスな作品や『アンタッチャブル(1987)』『カジュアリティーズ(1989)』など社会派作品から『ミッション:インポッシブル(1996)』のようなアクションものまで、幅広い作品を手がける。
ハリウッド映画界と何度となく繰り返された確執で、その人生は順風満帆とは一言では言えないが、作品の中には誰もが知っている有名なものも多い。
(本作『悪魔のシスター』は2006年ダグラス・バック監督により『シスターズ』としてリメイクされている。)

2012年に製作された最新作『パッション -Passion』は『プロメテウス』のノオミ・ラパスが出演しており、トレーラーを見る限りブライアン・デ・パルマらしい生々しいサスペンスな作品のようだ。

■主な監督作品
・悪魔のシスター Sisters (1973)
・ファントム・オブ・パラダイス Phantom of the Paradise (1974)
・愛のメモリー Obsession (1976)
・キャリー Carrie (1976)
・フューリー The Fury (1978)
・殺しのドレス Dressed to Kill (1980)
・ミッドナイトクロス Blow Out (1981)
・スカーフェイス Scarface (1983)
・ボディ・ダブル Body Double (1984)
・アンタッチャブル The Untouchables (1987)
・カジュアリティーズ Casualties of War (1989)
・虚栄のかがり火 The Bonfire of the Vanities (1990)
・レイジング・ケイン Raising Cain (1992)
・カリートの道 Carlito’s Way (1993)
・ミッション:インポッシブル Mission: Impossible (1996)
・スネーク・アイズ Snake Eyes (1998)
・ミッション・トゥ・マーズ Mission to Mars (2000)
・ファム・ファタール Femme Fatale (2002)
・ブラック・ダリア The Black Dahlia (2006)
・リダクテッド 真実の価値 Redacted (2007)
パッション Passion (2013)

ではまた
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • コメントありがとうございます。
    今年もどうぞよろしくお願いいたします。
     
    この作品お好きでしたか!
    この独特の雰囲気は他にはあまり無いですよね。ちょっとイタリアっぽいのかなー。
    デ・パルマ作品の一覧を見て、私も結構観ていたな、と気がつきました。
    『ブラック・ダリア』も結構好きです(ジョシュ・ハートネットが好きなもので[絵文字:i-179])。
     
    この作品のマーゴット・キダーは確かに他に比べていいですねー。
    なんというかトガっていないというか、頼りなげな感じというのが。
    確かに仰る通り、掴み所のないミステリアスな感じでいけばよかったかも..。
    しかしホームレスですか。びっくりしました。
     
    >ヒッチコック臭
    まさに、あの手術場面はその通りです。
    ホントに不思議なシーンです。

  • こんばんは、今年初めてのコメントになりました。
    本年もどうぞよろしくお願いいたします<(_ _)>
     
    「悪魔のシスター」好きでしたー。と、言いますか初期のデ・パルマ作品は殆ど全部気に入ってると言っても過言ではありません(「レイジング・ケイン」を最期にちょっと自分の嗜好からは外れていきましたが、今でも新作出たらチェックは怠らず・・・)
     
    肉切り包丁がシャム双生児分離手術のメタファーというのは言われてみたらなるほどなと思いました。
     
    このときのマーゴット・キダーは普通の映画(たとえば「スーパーマン」等)の時よりいろんな意味で三倍素敵だったと僕は本気で思っています(^_^;)
     
    また、個人的にこの人はホラーの似合う女優さんではないかと思っていたので(他だと「悪魔の棲む家」や「リーインカーネーション」なんかもぴったりな役でしたし)それ系専門ですすめばもっと大成したんじゃないでしょうかねー(もう少し頑張れば80年代に到来したホラーブームが助け船になったはずなのに、なんか最期は仕事無くなってホームレスになっていたという話を読んだことがありました)
     
    それとデ・パルマと言えば音楽はピノ・ドナッジオなんですが、これと「愛のメモリー」はバーナード・ハーマンが担当しているせいか特にヒッチコック臭が強いような気がしています。
     
    また戯れにこういうの撮って欲しいですね

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