「ホラーマニアvs5人のシリアルキラー」こんな邦題、観ずにいられるものか!(‘Д’)ということで、早速鑑賞。若かりし頃のトム・ハンクス似の主人公のダメ男さん加減と、アメコミをそのまま実写化して動いているような派手なシリアルキラーたちの真面目さが、非常にうけるホラー・コメディ。
■ ホラーマニアvs5人のシリアルキラー - Vicious Fun – ■
2020年/カナダ/101分
監督:コーディ・カラハン
脚本:ジェームズ・ヴィルヌーヴ
製作:チャド・アーチボルド他
出演:
エヴァン・マーシュ(ジョエル)
アンバー・ゴールドファーブ(キャリー)
アリ・ミレン(ボブ)
デビッド・ケーチナー(ザッカリー)
■解説:
連続殺人犯の集会という奇想天外なシチュエーションを舞台にしたコメディタッチのサスペンススリラー。
■あらすじ:
ホラー雑誌「殺人鬼マニア」の編集者・ジョエルは、ある夜怪しげなバーに迷い込む。泥酔して目を覚ますと、店の奥で殺人鬼たちが悩みを打ち明けあう集会を開いていた。遅刻した参加者と間違われたジョエルは、殺人鬼のふりをしてやり過ごそうとするが ─U-NEXT
事の始まりは同居人のサラ。
僕の気持ちに全く気が付いていない、気が付く様子もない、”気が付きたくもない”と見て取れる彼女が、デートに出かけたことから始まる。
時は80年代真っ盛りの熱いミネソタ。そんな地方でホラー雑誌「殺人鬼マニア」の編集者をやっているジョエルは、ホラーオタクと周囲に呆れられつつも彼女はいないが、人のいい青年だ。同居人のサラにぞっこんだが、あまり表に出さず、出したところで全く相手に響いておらず、サラにとっては手のかかる弟のような存在になっている。
そんなある日、デートに出た彼女をやきもきしながら家で待っていたジョエル。やっと帰ってきた彼女と入れ替わりに出かける風を装って相手の顔を確認。な~んか怪しい、きっと妻子持ちだとにらんだジョエルは、彼ボブの後をつけあるバーに潜入。話しかけ、ボブの私生活や嫌なところを根掘り葉掘り聞いてやろうとしている内にお酒の飲み過ぎで店の倉庫の中にぶっ倒れる。
もう、なんて言うのかなぁ、誰も頼んでいないのに一人あたふた動いては周囲に迷惑をかける、でも何故か憎めない感じが若かりし頃のトム・ハンクスにそっくりで名前もジョエル(『ビッグ』(1988)ではハンクスの役名が”ジョシュ”)ということで、ダブって見えてくるのは私だけじゃないはず。そんなジョエルの唯一の趣味がホラー映画であり、殺人鬼マニアというから、普通の女の子なんて付いてくるはずがない(何故か、耳が痛い…。どうしてだろう……(-.-))。
コテンパンにやっつけてやろうぐらいに思っていたボブに結局は奢る形でお酒を一緒に飲んで、飲みすぎたあげくぶっ倒れたジョエル。非常にらしいのだが、店の片隅にある倉庫の中で寝込んでいたから誰も気づかず、店は閉まる。閉まったはずなのに、何故か奥から複数人の話し声がしてくる。目を覚ましたジョエルが顔を出してみると、そこには5人の男女が。そして来るのが遅れているフィルと間違われて席に座るように促されるジョエル。
いや、普通はここで「あ、違うんすよ、僕フィルじゃないっす。奥で寝込んでしまってたただのジョエルです、、」とかなんとか言うよね?で、立ち去るよね?ところが、なんか普通ではない5人の佇まいが、醸し出す雰囲気が、気の弱いジョエルにそれを言わせず、座り込んでしまうことに。
そして彼ら5人の話を順に聞くことになってしまったのだが、ちょっととぼけたジョエルにも、すぐにその内容が非常にやばいことが分かってくる。なんと、彼らは連続殺人鬼で、その日頃の行いに関する悩みなんかを話し合う、一言でいうなら「殺人鬼の会」に参加している面々だったのだ。
全くそのメンバーときたら、いかにもロシアンな大男、刀が似合いそうな日本人、薬物なら何でもこい的な科学者風、武器なら何でも使えそうな女、場を取り仕切っている男などはどうやら公に努めて任務として殺しをしていると言うし、話を訳知り風に聞くうち背筋が寒くなってきたジョエル。北米の未解決殺人事件のうち12%が彼らの仕業だという。
だが話す順番がきた、ジョエルに。
最初の内は、自分が考えていた殺人鬼映画の主人公よろしくうまく作り話をしていたものの、もう一人の遅刻者ボブが遅れて参加することによりすぐに偽物とばらされる。
お前は誰だ?何故ここにいる?俺たちの話を聞いたな?生きては返せないぞ。誰が殺る?
急転直下、ジョエルは窮地に立たされる。
誰が殺すか殺人鬼たちが喧嘩を始めたすきに慌てて逃げ出したジョエル。殺人鬼たち6人は連携をとって追いかければいいものを、さすが自己中心的で自分さえよくて、他人などどうでもよくて、自分の快楽のためにだけ殺人を続けている殺人鬼たち。さすがだ、、邪魔になる者はお互いまで殺しあう。「チーム」なんてどこにもない。そう言えば最初からチームなんかじゃなかった……
こんな殺人鬼たちに追いかけられることになってしまったジョエル。だが、訳アリの一人の殺人鬼がとりあえずジョエルの味方のような立ち位置に。さて、彼らは無事逃げきれることが出来るのだろうか?この天下の殺人鬼集団から・・・!?
初っ端のオープニングからして絵に描いたような殺人鬼が登場する。その後に登場する個性豊かな殺人鬼たちは全くそのままアメコミ仕様で、やっていることはかなりえげつないのだが、どこかおとぼけで愛すべきシリアルキラーとして描かれ、殺られていく。
彼らは実在する個性豊かなシリアルキラーの特徴をミックスさせて作られているみたい。そんな中でも特にインパクトのある、非常に個性が際立っているのはジョエルの恋の宿敵ボブだ。ジョエルはトム・ハンクスだったけど、このボブは見るたびにマシュー・マコノヒーの顔がチラチラして、それでなくても目立つ動きのボブなのに余計にこちらにアピールしてくる(まぁ、そういう役どころでもあるのだが)。
登場人物たちが、皆どこかで見たことある感じがするのと合わせて、中国のものとも日本のものとも判断付かないミックスされた店で会合を持つというくだりが、前に観てお気に入りの一つであるバイオレンス・コメディ『SUSHi GiRL /スシガール』(2012)の雰囲気に似ている。このお話も、元仲間たちが目的を持って集まった店が大殺戮の場になる、というバイオレンスでありながら笑いと涙も忘れない、という内容。
そうそう、本作『ホラーマニアvs5人のシリアルキラー』も結構、スプラッてますので、苦手な人はお気をつけを。
『SUSHi GiRL /スシガール』(2012) - Sushi Girl –
今の今まで女寿司職人の邦画コメディと思ってた・・ 全然違いますやん。タランティーノ『レザボア・ドッグス』下敷きでオマージュだって。SWのマーク・ハミルが嫌なお…
タイトル(邦題)で選んで失敗することが多いmomorexさんだけど、今回は久しぶりに当たりだった。登場人物皆が期待通りに動いてくれる、ある意味安心して笑いながら観ることが出来る作品。よかったわー、ジョエルに幸せが訪れて…。トム・ハンクスはそうじゃないと