タイトルに”ホラー・ストーリー”とあれば引き寄せられる病を患っている管理人が楽しみにしていた本作。どうして”クラシック”なのか?本作はその名の通り古典的スタイルあり、新スタイルあり、ホラー、バイオレンス、ミステリーありのいいとこどり”ミックス型”クラシック・ホラー・ストーリー。ネタバレありで進めます。

■ クラシック・ホラー・ストーリー
 – Una classica storia dell’orrore – ■
2021年/イタリア/95分
監督:ロベルト・デ・フェオ、パオロ・ストリッポリ
脚本:ルチオ・ベザーナ他
製作:マウリツィオ・トッティ他

出演:
マチルダ・ルッツ
フランチェスコ・ルッソ
ペピーノ・マッツォッタ
ウィル・メリック
ユリア・ソボル
アリダ・バルダリ・カラブリア
クリスティーナ・ドナディオ
フランチェスカ・カバリン

■解説:
イタリア南部を共に旅していた見ず知らずの男女が、迷い込んだ不気味な森で過酷なサバイバルを繰り広げる。身の毛もよだつサスペンスホラー。

Netflix

英題:a classic horror story


大きなキャンピングカーを使った相乗りで、見知らぬ男女5人がローマからイタリア南部カラブリア方面を目指す旅に出た。実家に帰省する者、友人の結婚式に出る者、目的は様々だが天気の良い朝の気持ちのいい出発となった。

今回の相乗りを企画したキャンピングカーの持ち主で運転手のファブリツォは、カラブリアの出身でこの地に詳しい。カラブリアの辺りはシチリアのコーサ・ノストラより閉鎖的で暴力的だともいわれているマフィア”ンドランゲタ“の本拠地でもあり、子供の頃はよくそれでからかわれていたという。
だが、この地では最近も母娘の失踪事件が起きており、物騒な地域であることには代わらなかった。

カップルで参加しているマークに運転を代わり、夜道を進んでいた一行。真っ暗な森の中を進むうち、車のライトに照らされた倒れているヤギのような動物を発見し、急ハンドルを切った拍子に木にぶつかる事故を起こし、全員気を失ってしまう。順に気が付いた時には朝になっており、運転していたマークが足を骨折する大けがを負っていた。
だがトラブルはそれだけではなかった。確かに道路を走っていたはずなのに、目が覚めた場所は森の中の切り開かれた場所で道などない。携帯も繋がらない。見えるものは一軒の小屋だけ。どうして車ごとこんな場所に?一行は動けないマークを車に残し、連絡手段を探しに小屋へと向かう ─

ドアをノックするも誰もおらず、中に入れなかった4人は今後のことを話し合い、ファブリツォと医者のリカルドが森を抜け助けを求め出発することに。南を目指して進むも森が続くのみ。やがて鬱蒼とした森の中で悪魔的な儀式のための鹿の角を付けた人型のものや豚の首が飾られている場所に出くわす。危険を感じつつも進む2人はようやく開けた場所を見つけたが、そこは元の小屋のある広場であった。

4人はいつの間にかドアが開かれていた小屋の中に入る。小屋の中は生活感はなく、飾られているものは鹿の剝製と森で見つけたような不気味な祭壇のようなモノ。それについて、この地の伝承に詳しいファブリツォが説明を始めた。

その昔、この地は大いに荒れ果て人々も貧しかったが、ある日その地に3兄弟が現れる。ロッソ、マストロッソ、カルカニョッソの兄弟はこの地を平定し富をもたらす代わりに生贄を要求した。人々はそれを承知する。
それ以降、彼ら3兄弟は”名誉の三騎士”と呼ばれ尊ばれて今に至る。だが村の人々は幸福になったのか?否、それからの人々は兄弟の家畜として生きることになったのだった。

この「見ざる・言わざる・聞かざる」を模した仮面の3兄弟は、それぞれ人の「目、舌、耳」を奪い、それらで作った人型人形を捧げる儀式を行うという。それを証明するかのように、小屋の2階に藁でできた人型人形の中に舌を切り取られた少女を発見する。十分に危険を察知した4人は逃げ出そうとするが、いきなりサイレンが鳴り響き、3兄弟のような装束をまとった者たちが現れる。そして車のマークを引きずり出し、今まさに小屋のテーブルに括り付け見るもおぞましい器具をマークの頭に装着しようとしていた ─


さぁ、サイレンですよ、サイレン。まだここでは何故に「サイレン」?と思っていたんだけど、次々捕まった後にエリサが屋外の大きな食事用テーブルに座らされている光景を見て、あっ!これは!間違いないっ!と確信に。

色んなホラーのいいとこどりをしてるよね?

というのも、この地出身のファブリツォは初っ端からブログに上げるんだ、とか言いながらカメラを回し皆を自己紹介させて撮ってる。映画作品に詳しく、ホラーもよく知ってる。ことが起き始めた時には「これは、まるでホラー映画のオープニングだ!」と、とても嬉しそうに興奮していた。他のメンバーはそれどころじゃなかったけれど。

キング原作映画のような牧歌的な雰囲気のオープニング、バス型車での移動(『悪魔のいけにえ』)、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のような森の中の悪魔的飾り物、たくさんの廃車が一か所にまとめられ(『悪魔のいけにえ』)、奴らが現れる前にサイレンが鳴る(『サイレントヒル』)。お面を被るホラーは数えきれない(けれども本作のお面「見ざる・言わざる・聞かざる」はすごくよく出来ていてゾッとする)。
そして極めつけは屋外テーブル(『ミッドサマー』)。ここで気が付かない人も少ないのでは?

  

あぁ、この作品の監督は色んなホラーにオマージュを……

ちょっと待ったー!
ホラー好きはファブリツォかい!!この話そのものを撮影、監督して映画を作っているのかーっ(‘Д’) それもただ映画を撮りたいってだけじゃない。これにマフィアのしのぎまで絡んでくる。テーブルの向こうの赤い服の女性はマフィアのボスだね。今回の臨場感あふれるホラー作品はマフィアの利益のためにも作られていて、相乗り募集はホラー映画の被害者役募集。十分に準備されたロケ地へご案内され、出演料無料、命いただきますっていうことだったんだ。思えば、道路のヤギもハンドルを切ったのも、キャンピングカーの眠り薬混入型飲み物も、全てこのホラー作品のため。監督、下準備すごい。
ファブリツォは盛んに言っていた。イタリアはホラー映画が作れない。作っても客が入らないって、残念そうに。これは本当で確かフランスでもホラー作品は売れないそうだ。アレクサンドル・アジャ監督(『ハイテンション』)がドキュメンタリーで話されていた。

実際、映画製作にマフィアが絡むことは多いのかな。何かのアメリカドラマで、マフィアが映画製作者になるコメディがあったし、「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」でもクリスがやろうとしてた。”これからは映画製作だ”って。
マフィアだけに資金も潤沢なんだろうけど、村の人々はテーブルの様子を見ても分かるように、ファブリツォの伝承話にあった”家畜”として扱われているんだろう。で、通りすがりの人や相乗り募集でこの地に何のゆかりもない人を殺され役にするんだー。
さすが、やることがえげつない(-_-;)

しかし、本作の監督もファブリツォに負けていない。
この作品はこれで終わらなかった
ラストにもう一つ大きな仕掛けがある。それは見てのお楽しみだけど、ヒントだけ挙げておきましょう。ズバリ!それは
ヴィレッジ(2004/シャラマン監督)
実はこれも好きな映画なんですよー

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