『ヴァチカンのエクソシスト』(2023) ラッセル・クロウ版

「エクソシスト」と聞けば反射的に反応してしまう管理人momorex。それもこれも1973年の元祖『エクソシスト』のなせる業なのであるが、楽しみにするものの本家以外は大体あんまり面白くないなっていう感想が多かった…。そんな中、珍しくもR・クロウが出ているということでいつものように楽しみにしていた本作。さぁ、どうだったでしょうか(‘ω’)

■ ヴァチカンのエクソシスト ■
– The Pope’s Exorcist –

The-Popes-Exorcist

2023年/アメリカ・イギリス・スペイン/103分
監督:ジュリアス・エイバリー
脚本:マイケル・ペトローニ他
原作:ガブリエーレ・アモルト
原案:マイケル・ペトローニ他
製作:ダグ・ベルグラッド他
製作総指揮:ジョー・ホームウッド他
撮影:カリッド・モタセブ
音楽:ジェド・カーゼル

出演:
ラッセル・クロウ(ガブリエーレ・アモルト神父)
ダニエル・ゾバット(トマース・エスキベル神父)
アレックス・エッソー(ジュリア)
フランコ・ネロ(教皇)
ローレル・マースデン(エイミー)
ピーター・デソウザ=フェオニー(ヘンリー)

■解説:
オスカー俳優ラッセル・クロウがホラー映画初主演を務め、カトリック教会の総本山バチカンのローマ教皇に仕えた実在のエクソシスト、ガブリエーレ・アモルト神父の回顧録「エクソシストは語る」を映画化。

映画.com


Contents

あらすじ

The-Popes-Exorcist

1987年スペイン、サン・セバスチャン修道院。
古い修道院修復のために母親、姉とスペインを訪れたアメリカの少年ヘンリー。妙な物音のなる廃屋のような建物で迎えた初めての夜、魂を狙う邪悪な存在が彼に近づこうとしていた ─

見どころと感想

エクソシストものと言えば元祖『エクソシスト』に倣うかのように、悪魔に取り憑かれた無垢な子どもか若めの女子を少し問題を抱えた神父が祓う、みたいな話が多い。少し変わったところでは霊能力者が祓うみたいなものもあるが、それぞれの見どころは悪魔に取り憑かれた状態の(元)いたいけな少女の表現方法と、取り憑いた“悪魔の名前”の暴露と相場が決まっている。

本作は2023年の作品ではあるものの、舞台は1980年代のヨーロッパ。アメリカのメリン神父とカラス神父が悪魔「パズズ」を少女から祓ってからそう日は経っていない。メリン神父はアメリカのカトリック教会に所属するエクソシストであったが本作のアモルト神父はローマ、ヴァチカン所属の祓魔士(ふつまし/エクソシスト)である(祓魔士という言葉は今回初めて知った)。

The-Popes-Exorcist

この時代の神父様のスタイル↑であったのかもしれないが、本作全般に渡って元祖『エクソシスト』を思い出させるリスペクト漂うシーンが見受けられる。神父の登場シーンや取り憑かれた子どもの様子、あり得ない身体の動き、エクソシズムを手伝うことになる若い神父の存在などなど。

ただし本作のアモルト神父は多くの現場に立ち会った経験を活かし、本物の悪魔憑依なのか精神的な病なのかを見極めていく様子も描かれる。悪魔憑きのほとんどは精神病か詐病のようだが、ほんの数%、とても常識では考えられない非常事態であることが現実としてあるらしい。
本作主人公ガブリエーレ・アモルト神父は実在の人で神父の著作「エクソシストは語る」を元に描かれたのが本作なのだ。


さて、本作に登場する悪魔は二人。一人目は神父によって精神病と判断されたが、二人目の悪魔によるとどうやら一人目も悪魔憑きらしい。そして二人目の正体は「地獄の帝王“アスモデウス”」。
 ─ 初めて聞いた…(-.-)

Asmodaeus

アスモデウス

ユダヤ教とキリスト教の悪魔のひとり。旧約聖書外典の『トビト記』などに登場する。
悪魔学によると、彼は元が激怒と情欲の魔神のためか、キリスト教の七つの大罪では色欲を司る。悪魔になる前は智天使だったとされる。

ルーダンの悪魔憑き事件(Loudun possessions)で、アスモデウスは修道院長ジャンヌ・デ・ザンジュ(Jeanne des Anges)に取り憑いた。悪魔払いを受けたアスモデウスは、明日の午後五時にデ・ザンジュの身体から出ていくという契約書を残したとされる。

Wikipedia:アスモデウス

もともと悪魔というのは天界から追い出された堕天使の成れの果てで、悪魔憑き作品で複数の名前が出てくるから複数存在するのはなんとなく知っていた。同時に一人の悪魔の呼び名がいくつもあるのかとも思っていたりもしていたが、実は悪魔はなんとその数200も存在するというのを本作で初めて知った(‘Д’)。そういう意味で本作はキリスト教圏外の悪魔世界に無知な人間(私のことです)にも親切に色々と教えてくれる。

堕天使の一覧はこちらの検索結果から 堕天使一覧

悪魔が200も存在するという事実の他にも、中世にカトリック教会主導で行われた「異端審問」の事実や「地下墓所(カタコンベ)」の真実など、なんかカトリック教会にとっていい感じの真実らしきものが語られていく。

Inquisitio

異端審問

異端審問(いたんしんもん、ラテン語: Inquisitio)とは、中世以降のカトリック教会において正統信仰に反する教えを持つ(異端である)という疑いを受けた者を裁判するために設けられたシステム。異端審問を行う施設を「異端審問所」と呼ぶ。ひとくちに異端審問といっても中世初期の異端審問、スペイン異端審問、ローマの異端審問の三つに分けることができ、それぞれが異なった時代背景と性格を持っている。

なお、魔女狩りは異端審問の形式を一部借用しているが、その性格(異端はキリスト教徒でありながら、誤っているとされた信仰を持っている者であるのに対し、魔女・魔術師(魔法使い)はそもそもキリストを信じないとされる人々であるため全く別種)や実施された地域・時代が異なっているため、異端審問とは別種のものと考えるのが適切である。

Wikipedia:異端審問

こうして色々と説明してくれる本作なのだが、彼ら神父が説明しながら謎解きをしている間にも、今回の悪魔の犠牲者たちの命が刻一刻と縮められていっているのが気になって仕方なかったのは私だけではあるまい。だってここだけは元祖『エクソシスト』はもちろん、他の作品でさえもエクソシストは悪魔憑きの少女に付きっ切りだった。そりゃそうですよ。あんな変わり果てた見てくれになってしまっている(元)いたいけな子どもをほったらかしに出来るはずがない。それに何より悪魔をずっと構ってあげないときっともっと怒り出すよ、と思うんだ(‘ω’)


てな感じで今回の悪魔憑き事件は終わった。だが本作内で繰り返し語られていた

私たちの罪は私たちを探し出す

ゆえに彼らは200もの悪魔(今回1つやっつけたので199)に対峙していくことを決意したらしい。
ということで『ヴァチカンのエクソシスト』は今後シリーズ化されていくのだろうか。きっと原作にはたくさんのエピソードがあるのだろう。
ラッセル・クロウと言えば私にとって『グラディエーター』だったが近いうちに『祓魔士』に取って代わるのかもしれない ─

地下墓所で何度も何度も繰り返し陰になり日向になり中世の拷問器具「アイアンメイデン(鉄の処女)」が画面に映し出されるものだから、てっきりこの器具の中に悪魔と共に自身を閉じ込め封じるのだとばかり思ってドキドキしていたよ。

そして最後にこれだけは言っておかなければ

今年2023年12月。とうとうあの本家『エクソシスト』の正統になるらしい続編『エクソシスト 信じる者』が公開される。あのエクソシストを劇場で観られる日がくるとは(1作目じゃないけど)… あともう少しだ。とても待ち遠しい(*’▽’)

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