全話一気観!「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」(TV/2022)

あの金字塔映画『ゴッドファーザー』の何年にも渡るドタバタな製作舞台裏を徹底的にドラマ化した作品がこれ「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」(英題/The Offer)。一人のプロデューサーが次々と巻き起こる無理難題をなんとか克服、皆の努力で奇跡的に仕上がった作品『ゴッドファーザー』の製作秘話を当時の懐かしい街並みや音楽、映画作品、まだ若き往年の映画スターらと共に追体験していくよ(‘ω’)

■ ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男  – The Offer – ■

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2022年/アメリカ/全10話
企画:マイケル・トルキン
監督:デクスター・フレッチャー
脚本:マイケル・トルキン、ニッキー・トスカーノ
製作総指揮:バリー・M・バーグ、デクスター・フレッチャー、レスリー・グライフ、アルバート・S・ラディ、マイルズ・テラー、マイケル・トルキン、ニッキー・トスカーノ

出演:
マイルズ・テラー(アル・ラディ)
マシュー・グード(ロバート・エヴァンス)
ジュノー・テンプル(ベティ・マッカート)
ジョヴァンニ・リビシ(ジョー・コロンボ)
ダン・フォグラー(フランシス・フォード・コッポラ)
バーン・ゴーマン(チャールズ・ブルードーン)
コリン・ハンクス(バリー・ラピダス)
パトリック・ギャロ(マリオ・プーゾ)
ジャスティン・チェンバース(マーロン・ブランド)
アンソニー・イッポリート(アル・パチーノ)

■解説:
1972年に公開され、同年度のアカデミー賞で作品賞・主演男優賞・脚色賞を受賞した映画『ゴッドファーザー』。後に多くの映画監督や著名人がバイブルとして語る今なお色あせない歴史的傑作、その製作には想像を絶するさまざまなドラマがあった ─

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7月15日からU-NEXTで配信が始まった「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」。ポスターの感じがお気に入りの「ソプラノズ」に似ていることもあって目に留まった。
『ゴッドファーザー』の製作秘話?あんな完璧な傑作の舞台裏?あれかな、ハリウッドスター様の我がままとかかな?とりあえず観てみよう、と1話を観始めたのだが、結局全10話ほとんど一気観(1話60分前後。日曜だから出来る技)。

まずはU-NEXTで「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」を観る

31日間もある無料トライアル中に一気に観てしまえるよ。ついでに『ゴッドファーザー』1~3も(‘ω’)

ではいつもの通り簡単なあらすじと感想を

Contents

あらすじ

コンピュータプログラマーだったラディはかねてからの夢だったハリウッド映画製作の世界に飛び込み、コメディドラマでパラマウント・ピクチャーズに認められ入社、成功する。次にラディが任されたのはマリオ・プーゾ原作『ゴッドファーザー』の映画化。イタリア系アメリカ人のマフィアを扱う作品だけに困難が予想されたが、自らの努力と力で夢を勝ち取ることに誇りを持つラディは果敢に挑戦する。だが上司や親会社から無理難題をふっかけられ、マフィアからは命を狙われる羽目になる ─

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感想

あらすじだけ読むと映画製作のドタバタコメディのように見えるけど、違うんです。実話がベースになっているだけあって、次々に天から降ってくるように巻き起こる『ゴッドファーザー』製作への無理難題、横やり、ちょっかい等々はどの立場をとってもほとんどは納得のいくものばかり。

上司エヴァンス

パラマウントの上司、トップ・プロデューサーのエヴァンスはハリウッドの寵児とも言える絵に描いたようなプロデューサー界の王様であり、自分の立場を守ることにまずは一番重きを置く。そのためには口出し、手出し、なんならいつでもクビにできるぞと容赦がない。
だがラディにとっては1作目のコメディドラマで取り立ててもらった恩ある上司だ。それに何より『ゴッドファーザー』を任せてくれた。だから苛立ちながらも感謝と彼の立場を忘れない。ラディのそういう考え方、生き方に内心賛同する者は多く秘書のベティをはじめ『ゴッドファーザー』スタッフたちはそんな彼に着いていく。

ニューヨーク・マフィア

ニューヨークを本拠とするイタリアン・マフィア(当の本人たちはこの呼び方を嫌う)は、小説「ゴッドファーザー」が出版された時からこの内容に苛立っている。特に政治や公民権運動などに加担することで自分たちの黒い部分は隠してひっそりと悪事に手を染めたい彼らには、マフィアの内幕を暴くような内容の映画作品などもっての外なのだ。

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特にこの頃、「イタリア系アメリカ人公民権同盟」を設立し、マフィアへの目をそらそうとしていたニューヨーク5大ファミリーの一つコロンボ一家のボス、ジョゼフ(ジョー)・コロンボはラディに対して映画製作をやめるよう過激な脅しをかけてくる。これも彼らの立場に立てば(少しは)理解できるのだが、ラディは脅しには屈せず堂々とコロンボと渡り合い、逆にコロンボに気に入られることに。
この自分の、スタッフ皆の夢のためには何にも屈せず突き進んで行くところが彼の良さであり、悪いところでもある。
Wikipedia ジョー・コロンボ

親会社ガルフ&ウエスタン

親会社(ガルフ&ウエスタン)は利益が出てこその映画製作であるのだから、まずは予算をきゅうきゅう締めてくる。それでも足りずに出演俳優にいちいち口を出し、そのうえ儲からないパラマウント社を会社ごとそのままどこかに売りに出すことさえ模索する。いや実際進めていく。とにかく動きが速い。
だがひとたび、これが儲かるとわかるや、真逆に舵を切るのが早いのも資本主義のいいところでもある。感情ではなく数字で動く。それが資本主義の考え方だ。人の感情に訴える映画製作を生業とする者とはぶつかるに決まってる。が、どちらか一方だけでは上手くいかないこともある。そこに相反する「数字」と「感情」が混ざることで何かが産まれ前進できることもあるのだ。今回それを感じた人は親会社にもいただろう。

『ゴッドファーザー』スタッフ

スタッフにはプロデューサー以下の脚本家、監督、俳優、各所のスタッフたち全員が含まれる。なんならプロデューサーその人もスタッフの一員で失敗があればクビを言い渡される立場である。だが彼の荷はかなり重い。

いえね、今まで映画って監督が作ってるって思ってました。プロデューサーって人は資金集めとかしているエアコンのきいた部屋で座っている人だと思ってた…。本当にすみません。映画ブログはじめて10年にもなろうというのに、この辺りのことあまり知らなかった(-ω-)/

プロデューサーは数多ある小説、脚本の中からピッと閃くものを感じる(面白い、売れる、など)本をチョイスし映画やドラマという形に作り上げていく第一歩として、上司へのお伺い、製作にかかる資金集め、人集め(監督以下全て)、物集め(機材、小道具など全て)、進行、諸所起きる問題解決などなど、全てを管理、運営していく立場にある。一本の作品を一つの会社とすれば、トップであり営業であり平社員でもある。作品が無事に仕上がるように回していくための潤滑油でもある。とにかく目的は作品が仕上がること。それも出来れば観た人全員が感動できるような素晴らしいモノを仕上げること。

けれどプロデューサー一人が頑張っても作れない。何百人ものスタッフがいてこそなのだ。その彼らの仕事、生活、いざこざ、などなどを全て管理しなくてはならないのがプロデューサーなのだ。管理はスタッフだけではない。外から次々やってくる問題を解決していくのも彼の仕事。もうこの大変さについては、このドラマを観て頂戴としか言いようがない。10話の内、9話分は問題解決に奔走してるよラディは。


本作では上記が四つ巴になってラディの足をがんがん引っ張るんだけど、彼らは足を引っ張るだけではない。やりようによっては仲間になりラディを助けてくれる存在になってくる。そのあたりのラディのプロデュース手腕が本作の一番の見どころで、『ゴッドファーザー』の製作事務所で次々問題を持って訪れるスタッフたちの話を聞いて、さばいていく様子は本家『ゴッドファーザー』書斎のドン・コルレオーネとダブって見えてくる。

本作ドラマの1970年代

ようやく撮影にこぎつけることが出来たニューヨークの現場。
ドラマの俳優さんたちは殆どが実在の人物(例えばプロデューサー、コッポラ監督、プーゾ、コロンボ、マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーン等々)を演じている。まずの感想は思いのほか似ている。とにかく外見はかなり似ている。監督とプーゾは本物かと思ったほど似ている。そんな中で難しかったのはマーロン・ブランド(演:ジャスティン・チェンバース)だと思うのだが、ちょっとした仕草や斜め下を向いた何かの拍子にアレっ本人?と思うほど。

他にも舞台の半分はパラマウントのあるハリウッドだから、たくさんの当時の有名スターが目の前に、後ろ姿で、または会話の中に裏情報や小ネタと共に登場する(エリザベス・テイラーは際物プロデューサーたちにとっても女神だったらしい)。またそれらの会話の中には当時(ゴッドファーザーの公開は1972年)公開されていた映画作品の話やこれから製作されるだろう映画のアイデアがシーンの端に映ったりして、それらを見つけてあっとなるのも楽しい。

どこかのクラブの中に この「cocktail」のネオンライトが輝いていた。一目でトム・クルーズの顔が浮かんだよ(‘ω’)

本作と本家『ゴッドファーザー』

70年代当時の様子を追っているだけでも楽しい本作だが、『ゴッドファーザー』ファンが本当に楽しめるのは、監督や出演俳優を決めていくところや後半撮影が始まってからの有名なシーンの制作風景だ。それらの中には大御所過ぎて今まであまり知らなかったマーロン・ブランドや若きアル・パチーノの当時の姿、それも銀幕の上での演技している姿ではなく、プロデューサーやスタッフたちとやり取りしている生身の姿を見ることが出来る(ドラマ上でだけど。きっと演出もあるだろうけど(-ω-)/)。

マーロン・ブランドは70年代で既にマーロン・ブランドだ。プロデューサー、監督、脚本家が揃って出演交渉のためにブランドのハリウッドの自宅を訪れた時の逸話(きっと逸話と言っていい)はブランドのカリスマ性を感じさせるに十分の話だ。

逆に少し驚いたのがアル・パチーノ。役柄の影響もあると思うが、彼は自分の考えを決して曲げない系の頑固な人だと今まで思っていた。でも『ゴッドファーザー』に出演した頃の彼は主に舞台で仕事していた俳優で、大作出演(それもマーロン・ブランドとW主演)に相当ビビっているのが見て取れる。けれど製作サイドとのやり取りを見ていくととても正直で誠実な青年だということも分かる。コッポラはそんな彼を見込んでのマイケル・コルレオーネ配役だったのだろう。
エヴァンスや親会社はアル・パチーノ起用に大反対でマイケル役にジェームズ・カーン(『ゴッドファーザー』ソニー役)で行くよう指示していたらしい。ぃやあ、全く良かった、パチーノで。本当に良かった(:_;)

他にはルカ(組織最強の殺し屋)役がなかなか決まらず、本物のマフィア(コロンボ配下)を配役したことや、人気歌手のジョニーとフランク・シナトラの因縁(シナトラは「ゴッドファーザー」ジョニーのモデルは自分だと言い張り映画製作を中止させようと最後まで嫌がらせをした)、撮影開始直前のコッポラ邸関係者ディナー(誰が言うともなく席の配置が『ゴッドファーザー』作品内コルレオーネ家のディナーと一緒となり、台詞のような会話がなされた)、言わずと知れた『ゴッドファーザー』の黒馬の首が実は本物の生首などなど、もうすぐに本家『ゴッドファーザー』を観直したくてむずむずしてくる。
※けどこれらの話は本当に事実なのかどうかは分からない(‘ω’)ノ

最後に

『ゴッドファーザー』オープニングの娘の結婚式とヴィトー・コルレオーネの書斎のシーン。このシーンでは外の陽光溢れる中での結婚パーティと書斎の中のくぐもった光と闇の対比は非常にこだわって作られている。ドラマでそんな説明が無くてもこの書斎の光具合とやり取りは大好きなシーンだ。
闇の中に刺す幾筋もの光。だがその光には部屋の埃が舞い踊り、決して部屋で見え、聞こえる物を信用してはならないことを示している。優しい父、親切な隣人。その裏には非情なドン・コルレオーネが君臨している。

ちなみにコルレオーネの意味は「ライオンの心」だそうだ(マイケルが言っていた)。彼らイタリアン・マフィアはイタリアのシチリアからの移民が多い。若きヴィトーが移民としてアメリカに来た時に付けた“コルレオーネ”という性は出身のコルレオーネ村からとっている。
またアル・パチーノ役の魅力的なアンソニー・イッポリートの“イッポリート”はシチリアの歴史あるワイナリーと同じ名(それだけ(-ω-)/)。

アンソニー・イッポリート出演作

  • グランド・アーミー (Netflix/2020)
  • パープル・ハート(Netflix/2022)

Anthony Ippolito

おまけ

本作にはトム・ハンクスとジェームズ・ガンドルフィーニの二世俳優コリン・ハンクスとマイケル・ガンドルフィーニが出演していて、あるシーンで対峙する場面がある。一種独特の空気感というか、マイケル・コルレオーネに通じる二世の難しさというか、そんな何かが流れたような気がしたのは私だけだろうか…

さっ、『ゴッドファーザー』観よっ

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