『ブレーダーズ クライチカ』(1997) - The Descendant –

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これはアメリカ版のタイトルで、“クライチカ”はロシア語じゃなく“暗い地下”のこと。ちなみにカナダ版では『ヘモグロビン -Bleeders- OR -Hemoglobin-』がタイトルとなる。原作はH.P.ラヴクラフト。近親交配を繰り返していたオランダの貴族が住み着いたアメリカ、ニューイングランドの孤島を舞台に起こる、ゴシックで不気味な出来事。閉ざされた空間や貴族の城、掘り起こされる棺。吸血鬼もの的展開がとてもクラシック。

■ ブレーダーズ クライチカ - The Descendant – ■

Bleeders

1997年/アメリカ・カナダ/93分
監督:ピーター・スヴァテク
脚本:ダン・オバノン、ロナルド・シャセット 他
原作:H.P.ラヴクラフト「潜み棲む恐怖」
製作:ピーター・クルーネンバーグ
撮影:バリー・グラヴェル

出演:
ルトガー・ハウアー(マーロウ医師)
ロイ・デュピュイ(ジョン)
クリスティン・リーマン(キャスリーン)
ジャッキー・バロウズ(レクシー)
ジョアンナ・ノイズ(バーディ)
ジャニーン・テリオー(アリス)

解説:
「エイリアン」の(と言うよりは「ゾンゲリア」の)D・オバノン&R・シャセットの脚本によるグロテスクなホラー。
(allcinema)

あらすじ:
原因不明の血液の病気を患う夫ジョンに付き添ってニューイングランドの孤島を訪れたキャスリーン。この地が夫の出生地だと分かり、親族に治療の手がかりを聞くことが出来ればという思いからパリを出発したのだった。だが彼の血族は75年前の火事で絶えており、途方に暮れる2人。一方、この島で地中に人が引き摺り込まれるという事件が起き始め、医師マーロウが広大に広がる地下トンネルへと入っていくが ―


9/26レンタル開始で楽しみにしていた本作。“クライチカ”ってあるから、ロシアのカルト的ヘンタイホラーなのかなーって思ってた(実話)。「bleeders」とは血液の病気を持つ人々の事みたいだけど、本作の場合は「呪われた血族」みたいな感じ。何故、呪われているのかは、初っ端に分かりやすく纏められている。

Bleeders

オランダの貴族ヴァン・ダム家。由緒正しい家柄だというのに、快楽を求めて近親交配を繰り返している一族。17世紀に時の政府から近親相姦を禁じる法令が出され、処罰の対象に。当時の一族で特に快楽主義を追求し自堕落な毎日を過ごしていたイヴァ・ヴァン・ダムは処罰を逃れるように、一族もろともアメリカを目指し、ニューイングランドの孤島に移住する。ここでも同じ事は繰り返されていた。

時は流れ、20世紀に入って少し経った頃、ヴァン・ダムの屋敷で火事が起きて罰当たりな一族は一人残らず焼け死に、ヴァン・ダムの血は途絶えた。
これが「呪われた血族」の話だ。

Bleeders

火事から75年後、この孤島にパリから訪れたのがジョンとキャスリーンのストラウス夫妻。ジョンは重い血液の病気を患っており、余命幾ばくも無いような状態。その身体で長旅をしてまで何故やって来たかというと、この孤島が彼の出生地だと分かったから。出生地であれば親族がおり、親族には同じ病気を抱えている人がいるかもしれない。で、あれば、何か治療法の知識があるかもしれない、という事に希望を託して訪れたのだった。

けれども「ストラウス」という家は無く、途方に暮れていたところ、ジョンの診察をしたこの島唯一の医師マーロウが、今はなきヴァン・ダム家の人々が患っていた病と同じではないか?と気が付く。左右で目の色が違うこともヴァン・ダム家の人間の特徴だった。

Bleeders

眩しい明かりが苦手でサングラスが手放せず、鼻血など急に出血し、体力が無く杖をつき、発作がいつ起きるか分からない。かと思えば空腹等の飢餓感に常に苛まれる、青白い肌のジョン。

時を同じくして、この島の墓地に埋めてある棺を移動しなくてはならない事案が発生。島は何故か女性ばかりで男性の姿がほとんど見えない。彼女達は漁に出ているからと説明する。ということで、普通なら男性の仕事であるはずの力仕事さえもこなす島の女性達。棺も彼女らが掘り起こしていたが、いくつかの棺は底に穴が空き遺体が消えている。何故?

ハハ~ン こりゃ、吸血鬼だな?近親交配のし過ぎでヴァンパイアが産まれたな?と短絡的に感じた管理人。だから、ジョンもアレで、常に空腹ということは「血に飢えている」んだな、と。カナダ版タイトル『ヘモグロビン』というのも、いかにもって感じだ。

結局、どうだったか、というのは観てのお楽しみとして、、

Bleeders

ここから続く後半は、真実が究明され、ヴァン・ダム家の子孫もわさわさ登場。彼らは某かのモンスターで所行も酷いんだけれど、特にグロというほどでもない描写に抑えられている。そんなグロ描写よりも本作で訴えたいのは、呪われた血族の悲しい物語なのである。
加えて、そんな一家のジョンを愛することになったキャスリーンの一途な愛情にも涙をそそられる。

キャスリーンのお腹にはジョンの子が宿っている。かといって、よくあるような続編ありきのわざとらしい結末にしていない所にも好感が持てる。観終わった後、「あー、呪われた血族は、続いていくんだな。だから呪われているんだ・・・」と溜息交じりの感想が思わず口を出た。ジョンの最後も哀れだし…。

それでも一つはっきりしなかった点は、ジョンは75歳だったのか?という点。だとすれば、とっくに自分で人と違う事が分かっていたはずだよね。それともあのレクシー婆さんが勘違いしたのか?とも思ったけれど、身体の傷を見ていたし
この呪われた血族は「老いない」という特徴も持っているんだろうか。

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コメント

コメント一覧 (3件)

  • 「暗い地下」
    カタカナにするだけで、こんなに違うものなんですね^^
     
    イヴァは綺麗でしたねー。でもやってることがえげつない・・
    確かにお姉さん、太ってた。たっぷり食べているってことでしょうか?あまりにジョンと違いすぎますよね。思えば、どうしてこうしたのかな。なんか気になってきました(._.)

  • ふえ~
    クライチカって暗い地下だったんですか!
    なんだこの邦題!
     
    本作のイヴァ・ヴァン・ダムが美しく魅力的に描かれていたので(ほとんど一瞬ですけど、絵画とかで)
    ラストの双子の姉の太って醜い様にはガックリきましたわい。
    てっきり、双子の姉弟の再来みたいな感じかと思ってたのデ…

  • ブレーダーズ クライチカ

    【概略】
    敗血症の治療法を求めてある孤島へやって来たジョンとキャスリーン夫婦。医師・マーロウの診断により、ジョンの症状は島に伝わる忌まわしきヴァン・ダム一族と同じものだと分かるが…。
    ホラー
     
     
     
    ラブクラフトものだったんですね。
    近親相姦を繰り返したある一族の末裔達が、遺伝子の突然変異を起こして人間を捕食しないと死んでしまうというある種のモンスター映画ですね。
    かつて、イ…

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