『ハンズ・オブ・ザ・リッパー』(1971) - Hands of the Ripper –

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“切り裂きジャック”のお話かと思ったら、ジャックの娘さんの可哀想なお話でした。その可哀想な話にオカルトとスプラッター、老いらくの恋を足してなお破綻しないストーリーに感心。古さもあまり感じないオカルト・ホラー。

ハンズ・オブ・ザ・リッパー - Hands of the Ripper –

Hands of the Ripper

1971年/イギリス/85分
監督:ピーター・サスディ
脚本:L・W・デヴィッドソン
原案:エドワード・スペンサー・シュー
製作:アイダ・ヤング
撮影:ケネス・タルボット
音楽:クリストファー・ガニング

出演:
エリック・ポーター
アンガラッド・リース
ジェーン・メロウ
キース・ベル
デレク・ゴッドフリー
ドーラ・ブライアン
マーガレット・ローリングス

解説:
怪奇映画の名門ハマー・フィルムが製作したホラー映画。正体を知られて妻を惨殺した殺人鬼“切り裂きジャック”と、それを目撃したひとり娘アンナの過酷な運命を描く。
(イマジカBS)

あらすじ:
19世紀末。ロンドンの街を恐怖に陥れていた“切り裂きジャック”。実は彼には妻子がおり、ある夜、自身の正体を知られたために娘の前で妻を惨殺、そのまま姿を消す。当時の記憶を無くしたまま成長した娘アンナだったが、彼女の周りで不審な殺人事件が起き始める。たまたま現場に居合わせたプリチャード医師は彼女が怪しいと見立て、精神分析の研究のため彼女を自宅に引き取るが ―


オープニングはいかにも怪しい降霊会の場。亡くなった娘を呼び出してもらって嬉し涙を流す夫妻に話しかける霊媒師のアップを見た時、「あ、これ面白い!好きだ」と。
ツボなんですよねー 『ワイルド・アット・ハート』の魔女母さんや、殺し屋のアップが。

Hands of the Ripper

こんな顔で映る女性がいい人なわけもなく、この霊媒師も95%がインチキ。あとの5%は何かというと、ある女の子が時たま出せる力を借りてバッチリ降霊出来るだろう確率(MAX値)。その女の子というのがこのおばさんの遠縁の娘で、誰も知らないけれど“切り裂きジャック”の残された娘アンナ。母親は夫である“ジャック”に殺された。ベビーサークルに入っていた娘の目の前で。アンナに当時の記憶は無い。

Hands of the Ripper

この降霊会に参加していたのが精神分析を研究するプリチャード医師で、霊媒師のインチキを確かめに来ていたのだった。確かにそれは確認できたが、問題はこの後。会が終わった後、外に出て馬車を待っていたプリチャードの耳に大きな悲鳴が。慌てて霊媒師宅に駆け上がると、彼女は大きなナイフで惨殺されていたのだった。そして、その場には茫然自失の少女アンナが大きな目を見開いたまま怯えるように座っていた。

Hands of the Ripper

色々な状況から犯人はこの娘だと分かっていたプリチャードは、身寄りの無い娘を預かる体で彼女を自宅に引き取るが、それは精神分析の立場から彼女に興味を持ったため(加えて、彼女自身にも興味を持ったため、と見た)。身の回りの世話をして実の娘のように可愛がるプリチャード。と、同時に催眠術などを使って彼女の心の中を探っていく。

が、次々とアンナの周りで起きる殺人事件。彼は彼女を守り、なんとか次の殺人を阻止しようとするが ―


Hands of the Ripper

アンナにある2つの事柄が同時に起きた時、それは起こる。少女が殺人鬼に豹変するのでは無く、少女に父親が憑依する。実の父親“切り裂きジャック”の悪霊が。

殺され方は“切り裂きジャック”らしく刃物が使われる事がほとんどで、19世紀のロンドンの街を背景に殺しの場面もきちんと映され、ミステリーな話が続く中に突然スプラッターが挿入されてメリハリが利いている。

何より降霊など頭から信じていなかったプリチャードがアンナに起きている事を目の前にして、どんどんと人間らしく変わっていく様子が面白い。堅苦しい医師でアンナを研究対象としてしか見ていなかった最初から、アンナを見る目が優しくなっていき、ラストの悲劇を引き起こしたのは彼の行動だったことも興味深い。ラストは悲恋のようでもあった。
たくさんの要素を盛り込みながら悲恋で終わらせるとは。

ハマー・フィルム製作の映画についてはあまり知らなかったんだけど、これからちょっと観ていこうと思ってます。

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