2014年度のシッチェスは厄介ものが多いですねぇ。でもこれは嫌いじゃない。雰囲気は知っている中で例えるならギリシャのヨルゴス・ランティモス監督作『籠の中の乙女』(2009)。すっごく変わったことが繰り広げられているというのに、ごくごく当たり前な事として認識している登場人物たち。これはきっとどこか他所の星の物語なんだと思う。
■ ボーグマン - Borgman – ■
2013年/オランダ・ベルギー・デンマーク/113分
監督・脚本:アレックス・ファン・ヴァーメルダム
製作:マルク・ファン・ヴァーメルダム
撮影:トム・エリスマン
音楽:ヴィンセント・ファン・ヴァーメルダム
出演:
ヤン・ベイヴート
ハデヴィック・ミニス
イェロン・ペルセヴァル
エヴァ・ファンデ・ウェイデーヴェン
アレックス・ファン・ヴァーメルダム
2013年/オランダ・ベルギー・デンマーク/113分
監督・脚本:アレックス・ファン・ヴァーメルダム
製作:マルク・ファン・ヴァーメルダム
撮影:トム・エリスマン
音楽:ヴィンセント・ファン・ヴァーメルダム
出演:
ヤン・ベイヴート
ハデヴィック・ミニス
イェロン・ペルセヴァル
エヴァ・ファンデ・ウェイデーヴェン
アレックス・ファン・ヴァーメルダム
■解説:
謎の集団ボーグマンの奇想天外な物語で映画の開始直後から観客の度肝を抜くアレックス・ファン・ヴァーメルダム監督は、シュールな描写とダークなユーモアで現代人(主としてブルジョワ)の欲望や原罪を描くことを得意とする、オランダきっての個性派監督である。オランダ映画が38年振りにカンヌ映画祭のコンペティション部門に選出されたことでも話題を呼んだ本作は、その究極的な悪の描き方にハネケを重ねて論じる向きもあり、正統派の作品が並んだカンヌで個性的な異彩を放った。第26回(2013年)東京国際映画祭上映作品。2014年10月25日よりシッチェス・ファンタスティック2014の1作として上映された。■あらすじ:
裕福な家庭のドアを叩く謎の男。言葉巧みに家に住みつくと、やがて仲間も呼び寄せ、住人のマインドをコントロールしながら徐々に家を支配していく。彼らははたして犯罪者なのか、悪魔なのか、それとも宇宙人なのか? ―
(Movie Walker)
ある村の、どこにでもいる普通の農夫が、若者が、神父さんまでもが、手に手に武器を持って示し合わせ、森の中を怒りの足取りで真っ直ぐ歩いて行く。ある場所で地面を棒で思いっきり刺すと空洞になっている場所が見つかる。その空洞には男が一人。この地中に作られた空間が彼のねぐらになっている。神父達は彼に挨拶に来たのでは無い。3人の顔は怒りに震え、無言で他人の家を破壊して男を見つけると、銃を撃ち、斧を空高く振り上げ男に向かってたたき落とす。
が、この小男は地中に作ったトンネルを使って上手く逃げおおせた。森を走って逃げる男は不潔そうではあるが衣服を纏い鞄などを持ったりして、よくいる普通の中年男にしか見えない。だが彼は地中に暮らす変わった一人の変人では無かった。彼には仲間がいたのだ ―
ここまで、ほとんど台詞は無く、男とその仲間が何故、地中で寝ているのか、何故、村人達に殺されそうになっているのかは分からない。だがこの男カミエル・ボーグマン(一応、きちんとした名前がある)と仲間の逃げ足の速さを見る限りとても慣れているようで、あちこちでとんでもない事を起こしては逃げているのだろう、ということが想像できる。
ここまでかなり?なオープニングとなっているが、?はここでは終わらない。ここからもなお、トンデモな展開は続いていく。だが一つ。ここから奇妙な行動を見せるのは、このボーグマン達というよりも、ある一人の奥さんだ。
ボーグマンはこの後、周辺に点在する金持ち風の屋敷を訪れては「とても身体が汚れているので風呂を貸して貰えないか?」と尋ねるのだが、大体どの家の家主も「とんでもないっ」とドアを閉める。だが色々あって、ボーグマンを家に入れ風呂を使わせたのが、この奥さんマリナであった。
ここで、ふと思い出す。
何かのお伽噺で汚い老人が実は神様だかで、親切にしれくれた人間だけに幸を与えるみたいなのがあったな、と。ともあれ、ボーグマンの上の名前が“カミエル”で、奥さんの名前は“マリナ”。一文字違いがどうなるのか、俄然この物語に引き込まれていく展開になってきた。?状態にも既に慣れている。
稼ぎのいいい夫と3人の愛らしい子供たちに恵まれた主婦マリナ。大きな家に子守まで雇うことが出来、なんの苦労も無いはずなのに、どこかに空いている心の隙間。そこにスポンっと入って来たのがボーグマンだったのだ。何故かは分からないがマリナは彼を一目見て恋しい人になってしまった。“愛しい”人ではないところがポイントで、とにかく肉欲の対象として恋してしまうのだ。
この辺りから、これがキリストとマリアの話では無いことに気が付いていく。やっぱり最初に想像した通り、一文字違いが大違いのトンデモな展開に。
ここからは是非観て欲しい。
コメディタッチではあるが決して笑い話にはなっていない。ボーグマンと仲間はただひたすら目的のために複雑な行動を淡々と進めていく。邪魔なものは機械的に無駄なくそつなくどんどん排除していく。その様はまるで魔法を使っているかのようだ。被害者達は酷い目に遭っているのだが、本人達は気が付いていない。犯行があまりに素早く鮮やかだからだ。チームワークも素晴らしい。
そしてラストはオープニングにならい、また地中に帰っていくボーグマン達。一体彼らは何者なのか?どうしてそれだけは生かし、連れて行くのか。彼らこそがそれらを育てるにふさわしい存在なのか?思えば、マリナは良い母親であったが世話の一切は子守に任せっきりだった。
でもそれも関係無いのかも。どうもボーグマンの正体は分からない。地底人?もしかしたら宇宙人だったり、くらいにしか・・・
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