『ブルー・マインド』(2017) -Blue My Mind-

これも好きな作品で何度か観ている。15歳の多感な少女が成長していく自分の身体と心を把握できなくて自分自身に振り回される。何が正しいのか何が悪いのか、そんなことはどうでもいい。とにかく毎日を楽しみたいだけ。でも彼女に起きた変化は普通の思春期に起きる普通のものだけではなかった ─

■ ブルー・マインド  – Blue My Mind – ■

Blue-My-Mind

2017年/スイス/101分
監督:リーザ・ブリュールマン
脚本:リーザ・ブリュールマン他
製作:シュテファン・イェガー他
撮影:ガブリエル・ロボス
音楽:トーマス・クラトリ

出演:
ルナ・ヴェドラー(ミア)
ゾーイ・パステル・ホルトゥイツェン(ジアンナ)
レグラ・グラウヴィラー(ガブリエラ)
ゲオルク・シャーレック(ミカエル)
ルー・ハルティナー(ネリー)

■解説:
大人へと成長していく15歳の少女の身に起きた奇妙な出来事を描いたスイス製の新感覚ホラー。スイス映画賞では7部門にノミネートされ、作品賞、主演女優賞、脚本賞の主要3部門を受賞した。

映画.com


あらすじは上に書いた通りで、思春期の身勝手で多感な時期に親の都合で引越し、転校を余儀なくされた15歳のミア。一人っ子の彼女は元々がとんがった性格ではあるのだが、親しく慣れあう友人が不要なわけではない。そこで転校先で選んだ友人は、学校でも目立った不良たちグループ。そこで、親への反抗、授業のさぼり、煙草、酒、ドラッグ、万引き、パーティ、出会い系、初体験…と羽目を外せることは何でもやった。

Blue-My-Mind

そうやって日頃のいらいら、どこからか湧いてくるモヤモヤを発散するのだ。両親にあまり似ていないと感じるミアは、子ども時代なら誰しも一度は想像したことがある「自分は養子で、実の両親は他にいる」と考え、母親のアルバムで何かヒントはないかを探しもした。

もてあます自分の身体と心。
自分が思うよりも重く、自分が感じるよりも複雑。あの子の方がきっと楽しく楽にやっているに違いない。同じようにすれば、同じ経験をすればもっと気が晴れるに違いない。けれどミアの身体に起きた変化は、そういった普通の女の子に起きるものだけではなかった。それは、とても説明のつくものではなかったのだ。

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それは、ある日バスタブで見つけた、繋がりかけている足の指。
親には言わない。病院で相談しても後天性なのであれば珍しいと言われ、その医者の目つきに耐えられず病院を飛び出した。親も大人も信用できない。そうしている間にも指の繋がりは徐々に増していく。同時に足に妙なあざが現れ始める。あざは広がり、殴られ続けた足のようになってきた。そのうえ皮膚まで剥がれ落ち始め、まるで何かの悪い病気のようだ。

服で隠していたものの、やがて皆に知られることになり居場所を失ったミア。もう誰も信用できない。

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本作は、そのほとんどの間、ミアの鬱屈した閉塞感がミア自身とそれを見守る者をずっと息苦しく苦しめる。時々はさまる水の中に閉じ込められ上を見上げるミアの後ろ姿。見上げる水上には明るい光が射して見える。けれど自分のいる場所は暗く周りには何も見えない。
腕を上げることも手を差し出すこともしないミア。だがそこは学校や自分の部屋にいる時ほど苦しくないのだ。真っ暗な孤独が広がるというのに。

人のいる場所、いたい場所、落ち着く場所、いるべき場所というものは人それぞれ。手探りで探し続けたミアが見つけたもの、否応なしに見つけさせられたものは、とても普通の常識では考えられないものだったが、「普通の常識」とは?

ラストを観ていて両親は悲しむだろうと思ったが、親の子どもへの思いは「子どもが幸せになること」のみ。社会に迷惑さえかけなければ、それがどんなものであろうと応援するだろう。幸せになれるのなら、と自身を納得させられるだろう。

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