なんかふざけたタイトルからサンタ殺人鬼みたいなモノを想像していたら、全く違いましたよ、お客さん(また)。この作品は不遇な取り扱いをされていたらしくて、傷だらけのフィルムをとにかく助けるためにDVD化されたサスペンス・ホラー作品。もの悲しい内容にフィルムの傷が似合っているとも言えて、独特の雰囲気を醸し出している。物語も面白くてこのままでは勿体ない。雰囲気を損なわないようにしつつ誰かリメイクしてくれないかなー
■ ブラッディナイト 聖し血の夜 - Silent Night, Bloody Night – ■
1974年/アメリカ/87分
監督:セオドア・ガーシュニー
脚本:セオドア・ガーシュニー 他
原案:ジェフリー・コンヴィッツ 他
製作:ジェフリー・コンヴィッツ 他
撮影:アダム・ギファード
音楽:ガーション・キングズリー
出演:
パトリック・オニール
ジョン・キャラダイン
ジェームズ・パターソン
メアリー・ウォロノフ
ウォルター・エイブル
アストリッド・ヒーリン
■解説:
マサチューセッツの小さな町にたたずむ謎の屋敷“バトラー・ハウス”。この屋敷を巡って繰り広げられる血で血を洗う惨劇を描いたオカルト・ホラー。共同で原作・脚本・製作を担当しているのは「センチネル」の原作者ジェフリー・コンヴィッツ。オリジナルは90分。(allcinema)
■あらすじ:
マサチューセッツ州の小さな町で、前の主であるバトラー氏が焼死した大きな屋敷バトラー邸が20年の時を経て売りに出された。売り主である孫のジェフリーに変わり、この地を訪れた弁護士は話を前に進め、市への売却が決定する。その夜、バトラー邸に愛人と共に宿泊した弁護士。だが、その家には斧を持ち、待ち構えている謎の人物が隠れていた ―
ホントにこんな感じのサンタ大暴れモノかと思いきや、冒頭「作品を損なわないようにしたため傷だらけですが、許してね」と、まず作品を後生に遺すための涙ぐましい努力の文言が。(画像は『悪魔のサンタクロース 惨殺の斧(1984)』)
そして始まったのはまるで『マトリックス』のマトリックスのような傷が縦に流れる古いフィルム。そして綺麗なお姉さんのナレーション。
綺麗なお姉さんは言う。
“とうとう、この屋敷は取り壊される。悲しい過去の物語と一緒に”
この屋敷とは通称“バトラー・ハウス”。
20年前のクリスマス・イヴの日に焼死した主人ウィルフレッド・バトラーは屋敷をそのまま保存するよう遺書を遺しており、相続したのは唯一の家族である孫ジェフリー。ジェフリーの母親メリーアンは彼を産み落としたと同時に亡くなったと聞かされていて、彼は生まれた時からカリフォルニア住まい。一度もバトラー・ハウスを訪れた事が無いまま、祖父の死後、20年経ってようやく屋敷を売却することにしたのだった。
購入を決定したのはこの屋敷の建っている市で、市長自らジェフリーの代理人と最終調整に。代理人である弁護士はその夜、一緒にこの町を訪れた愛人とバトラー・ハウスに宿泊する。そして惨劇が幕を開けるのだ。
犯人は誰なのか?この日、町に向かっていた男なのか、それとも州立医療刑務所を脱走した精神病患者なのか。
この殺人鬼は屋敷内に隠れ、弁護士と彼女を惨殺した後、保安官や市長に電話をかける。「久し振りに戻って来たの。1人で寂しいから来てくれないかしら?私はメリーアンよ。」
彼女の目的とは・・・
・・・と、こんな感じで始まるんだけど、結局、弁護士を追ってこの町を初めて訪れたジェフリーと市長の娘ダイアン(冒頭の綺麗なお姉さん)が、この屋敷に纏わる秘密を解き明かしていく、というお話。その間にも、姿の見えない性別不明の殺人鬼は次々と町の人を襲っていく。ターゲットを絞っているあたり、旧知の間柄であるらしく、どうやら何かの復讐ということが分かってくる。
そしてジェフリーとダイアンが突き止めた真実とは。
これが非常に哀しい物語で、過去の回想シーンはセピア色に彩られ、フィルムの傷がわざとなのか、たまたまなのか、よく似合っている。過去の登場人物達も実に奇妙で狂気の世界を盛り上げていく。特筆すべきは、ぞろぞろ出てくる精神病患者。彼らの顔は墨で黒く塗りつぶされたように描写されていて、個性も人間性も消し去られている。ほとんど顔の無い幽霊のような感じだ。
バックにはイ短調なクリスマスソングが流れて雰囲気満点。このセピアシーンは必見。
殺人鬼の正体はラストに分かる。それまでは彼目線での登場で、息づかいと共に殺戮を犯す手袋をはめた手だけが映る。使われる凶器はほとんど斧で、想像以上にはスプラッターだった。
同じ年の『暗闇にベルが鳴る』的な殺人鬼、狂気の患者達、町を訪れる謎の人物とその正体のミスリード手法、バトラー家の秘密、バトラー屋敷で起きたおぞましい真実、、とサスペンス部分もたっぷりで、ただのホラーでは無い良く出来たお話だった。
DVDを入れて4:3で始まった時はガッカリしたけど、途中からというよりほとんど全編、そんな事は気にならない。傷だらけなのも味があるこの作品はオススメデスよ。