『ステイク・ランド 戦いの旅路』(2010) - Stake Land –

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蔓延るヴァンパイア達を逃れて北を目指すロード・ムービー。地味なタイトルが付いているからなのか、この映画全然知らなかった。「ウォーキング・デッド」ヴァンパイア版といった内容だけど、主人公の2人があまり感情的にならないため、何か事が起きた時にはそれが浮き彫りにされて分かりやすく、その世界に入り込みやすい。こんな世界になってしまったら、ギャーギャー叫んでも何も変わらないものねー

■ステイク・ランド 戦いの旅路 - Stake Land -■

Stake Land

2010年/アメリカ/98分
監督:ジム・ミックル
脚本:ニック・ダミチ 他
製作:デレク・カール 他
製作総指揮:マリク・B・アリ 他
撮影:ライアン・サマル
音楽:ジェフ・グレイス

出演:
ニック・ダミチ(ミスター)
コナー・パオロ(マーティン)
ケリー・マクギリス(シスター)
マイケル・セルヴェリス(邪教集団リーダー)
グレゴリー・ジョーンズ(マーティンの父親)
ダニエル・ハリス(ベル)

解説:
監督は「ネズミゾンビ」のジム・ミックル。ヴァンパイアと戦いながら旅を続ける人々を描くホラー作品。出演は「ワールド・トレード・センター」のニック・ダミチ、テレビシリーズ「ゴシップガール」のコナー・パオロ、「ダレン・シャン」のマイケル・セルヴェリス、「ハロウィン」のダニエル・ハリス。 (allcinema)

あらすじ:
近未来、爆発的に増えたヴァンパイアにより崩壊した人間社会。目の前で家族を殺された少年マーティンは、助けてくれたミスターと北を目指す旅に出る。北にはヴァンパイアのいない“ニュー・エデン”があると信じられていた ―


Stake Land

最初はゾンビものだと思い込んで観ていたら、ヴァンパイア。
それも、優雅なパターンのヴァンパイアじゃなくて、凶悪、凶暴、無知性で、人を見つければとにかく襲って食らう。血を飲むなんてまどろっこしい事はしない。
見てくれは、あの『死霊のはらわた(1981)』で悪霊に取り憑かれた人に似ていて、ほとんどが非常に小汚い

Stake Land

彼らがどうして“始まった”のかの説明は無い。とにかく、それは始まり、どんどん広がり世界中が汚染され、都市は壊滅、政府は崩壊、政治家は逃げ、軍は解体されたも一緒。残された人間は少しずつが集まって隠れるように暮らしている。

ヴァンパイア達の習性は、ほとんどがよく知られているものになる。動作が速く怪力、尖った歯で人を噛み砕く。噛まれた人間も同じ状態に。倒すためには尖ったもので心臓か脳を突く。陽の光を浴びると焼け死ぬため、括り付けて朝を迎えるのも有効だ。

こんな時代になれば必ず出てくるのが、狂信者の集まり、カルト集団だ。
秩序の無くなった、ここアメリカでもカルト集団が出来はじめた。中でも「ブラザーフッド」と呼ばれる団体はヴァンパイア達は神からの贈り物として、捕らえたヴァンパイアを人々の集団に放り込んで襲わせては人を集めて縄張りを拡大し、その狂信的な教義をラジオを使って垂れ流し、普通の人々の脅威になっていた。

Stake Land

そんな中を北を目指して進むミスターとマーティン。
ミスターの本名は分からないが、世間では「ハンター」と呼ばれていた。マーティンはミスターに武術を習いながら鍛えられていく。途中で仲間が増え、または減る。けれども彼らの足は北へと真っ直ぐに向けられたまま。

果たして、ヴァンパイアが生息するためには気温が低すぎる「北」=ニュー・エデンはあるのだろうか。


ハンターと呼ばれるミスターは人類の良心と希望の存在であり、マーティンはそれを継ぐ者だ。
よくあるお話ではあるのだけれど、この2人の言動が静かで大げさではないところが、とてもいい。いちいち台詞で説明させなくても2人がとても理解でき、この殺伐とした異世界に容易に入っていくことが出来る。
ラスト近くのミスターのとった行動は、たまたま引き受けることになったマーティンを鍛え信頼し、その後手放すことによって人類の存続という未来への道に繋げようとしている事が見て取れる。

この作品には狂信者のカルト集団が出てくるが、彼らが「神、神」と目に見えないものを安っぽく叫ぶのに対して、ミスターの行動こそが「神は自分の心の中に」という人の良心を表わしているようで、とても安心できる。他の登場人物にも善悪をはっきりと位置づけさせて、途中で裏切るような妙な小手先のサスペンスを挟まないところも、本作を安心して観ていられる点だ。
この人、こう見えてもうすぐあんなことするんじゃないの?とつい考えてしまう自分がちょっと恥ずかしくなってしまった… ヤダヤダ

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