entry-image_421
本作『8mm』は初めて観た時に衝撃を受けた作品で、「スナッフ・フィルム」なる物の存在を初めて知った作品でもある。公平で清く正しく生きてきた私立探偵ニコラス・ケイジがどんどんアブノーマルな裏世界に足を踏み入れ変わっていく様子、一見ふざけた遊び人風のポルノショップ店員ホアキン・フェニックスの真面目さ、富豪と関わる悪人役ジェームズ・ガンドルフィーニ、ピーター・ストーメアのえげつなさなど見どころが多い社会派サスペンスだ。

■8mm - 8mm -■

8mm

1999年/アメリカ/123分
監督:ジョエル・シュマッカー
脚本:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー
製作:ギャヴィン・ポローン 他
製作総指揮:ジョセフ・M・カラチオロ
撮影:ロバート・エルスウィット
音楽:マイケル・ダナ

出演:
ニコラス・ケイジ(トム・ウェルズ)
ホアキン・フェニックス(マックス・カリフォルニア)
ジェームズ・ガンドルフィーニ(エディ・プール)
ピーター・ストーメア(ディーノ・ベルベット)
アンソニー・ヒールド(ダニエル・ロングデール)
キャサリン・キーナー(エイミー・ウェルズ)
ジェニー・パウエル(メリー・アン・マシューズ)
エイミー・モートン(ジャネット・マシューズ)

解説:
「セブン」のアンドリュー・ケビン・ウォーカーの脚本を「評決のとき」のジョエル・シューマーカー監督が映画化した、センセーショナルなショッキング・サスペンス。(Oricon)

あらすじ:
ペンシルバニアで妻子と暮らす、真面目で丁寧な仕事が自慢の私立探偵ウェルズ。ある日、亡くなった富豪の金庫から少女が殺される場面を撮った8ミリフィルムが見つかり、富豪の未亡人から調査を依頼される。早速、手がかりを追ってロサンゼルスへ発ったウェルズだったが、調べる内にハリウッドの危険なアブノーマルな世界に足を踏み入れることになっていく ―


ニコラス・ケイジ出演作の中で私的TOP3に入る1本。
親切、丁寧、真面目(で上品)が売りの私立探偵が、思いもよらず社会の裏側、掃き溜めに接して精神崩壊寸前になるお話。“精神崩壊”はニコラス・ケイジお得意のカテゴリー。けれどもこの映画の彼は家族を愛するとても真面目で几帳面ないい人なものだから、すごく同情するとともに、こんな裏社会があったとは!という驚きと、金持ちがそれこそ札束を使ってたかが趣味のために可哀想な少女を嬲り殺しにする様に怒りを感じてしまうほど、入り込んでしまえる作品なのだ。

8mm_24この嬲り殺し映像(スナッフ・フィルム)を豪華な屋敷にある亡くなった夫の書斎で見つけたのが妻の老婦人であるところも面白い。一体、これは何なのか。どうして主人が所蔵していたのか。本物なのか?本物の殺人なのか?だとすればこの少女は誰なのか?
この調査全般を上流階級の奥様御用達のケイジ演じる私立探偵ウェルズに依頼。お金に糸目は付けないから全て明らかにして頂戴、と。
大富豪で社会的にも経済的にもその名を知らない者はいなかっただろう夫の隠された危険な秘密を知ってしまったわけだから、この奥様としても相当、色んな意味で苦しかっただろうと推測される。またこのフィルムを全編通して確認しているウェルズの表情は少女の痛みや苦しみ、相手の男への怒りがよく出ていてとてもいい。
こうして始まりは「善人たちによる悪事の解明」であるところも、この作品の魅力なのである。

8mm_23では、この「善人」からどういう風に話が展開していくか。
それはウェルズがロサンゼルスに到着した途端に映し出される、安っぽく下品な街並みから早々に始まる。“アート”と言えば聞こえはいいが、原色に彩られた壁や若者の安っぽさ。さっきまでの富豪のお屋敷の雰囲気とはあまりに違う。
けれどもウェルズが調査を進める内に、フィルムの少女がこの街で一生懸命生きようとしていた事や、一見いい加減な若者に見えるポルノショップ店員マックスの真面目な正体が明かされていく。夢や希望を持って集まってきたこの街の若者は一生懸命生きている。
だがその若者を甘言で釣り上げ、搾取し、果ては命を奪うような事をやらかす悪者もこの街には蠢いていた。

8mm_11さて、ここからウェルズはマックスの手を借り、どんどんと手がかりを追ってハリウッドのアンダーグラウンドへ。知っている人しか知らないような地下の薄暗い場所には、普通の人が見たことも無いような世界が広がっている。そこには表では売っていないようなポルノに関する物が並べられ、それを手に取ったウェルズが店員に説明を聞いた後、おぞましいような顔つきで手を拭う場面が印象的だ。それほどに不潔で想像したくないような物が売られている。
嫌悪と蔑みの表情を浮かべながらも、調査を続けるウェルズにマックスが問いかける。
「こういう物は好きじゃない?」
当然だと頷くウェルズにさらに問いかけるマックス。
「でも嫌いじゃない?」

8mm_20人の心は計り知れない。それは自分自身でさえ、全てを把握する事は難しい。
この吐き気のするような調査が終わった時、ウェルズにはいくつもの選択肢があったはずだ。けれども彼が選んだ行動は今までの彼自身が持つ公序良俗の精神に大きく反するものだった。けれども心が叫ぶ。決して許せない、と。それは、富豪の未亡人が自殺したと聞いた時に芽生えたものだったのだろう。

8mm_16全てを終わらせたウェルズは、だがしかし、何かを成し遂げ得たという満足感も達成感も持てないまま、自らが行った取り返しのつかない行動に苦しめられる。人として、何が必要で何が正しかったのか?あのアンダーグランドに住む輩の1人や2人を退治したところで何も変わらないのだ。彼らに取って代わる者は山ほどいる。

あれほど自信に満ちていた“出来る”探偵は、鬱々とした日々を過ごしていた。けれども最後に救われる瞬間がくる。
そうじゃないとあまりに不公平だ。

 

vampires_kiss

さて、数多いニコラス・ケイジ主演作の中でずっとDVD化されていなかった『バンパイア・キッス』がとうとう今年2014/11/5に発売予定に。かなーり前にレンタルビデオで見たきりでどうしてももう一度観たいと思っていたから、嬉しいったらありゃしません。実はこの作品もニコラスTOP3に入ってるんですよね。
もうこのキレっぷりで、かつての私はニコラスファンになったのでした。早く観たい

観ました↓

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

コメント

コメント一覧 (3件)

  • 8mm 【映画】

    ニコラス・ケイジの探偵物語。
     
    うんうん。
     
    いい味だしているよねぇ、相変わらず。
     
    とっても探偵らしいし。
     
    まぁ、本物の探偵を知っているわけではないので、
    らしいといってもなんの信憑性もないんだけどね。
     
    まぁ、よーするに雰囲気がいいのよ。
     
    楽しいねぇ。
     
    なんと言っても、ラストが悲惨じゃないところがいいね。
     
    この映画は、たぶんまだ観ていない人は、

  • 何度も話題に出しながら温存していました^^
    今回知ったのですが『セブン』と同じ脚本家なんですねー。だから後味悪いったらないですね。
    仰る通り『ファーゴ』『ドラゴン・タトゥーの女』と同じ路線ですよね。どれも好きな映画です。
     
    『バンパイア・キッス』いいですよ!
    再見をすごく楽しみにしてるんですが、記憶通りならいいですけど・・・
     
    ブログテンプレートは今回、自分でぼちぼち作ったんですが、大変でした・・構想から始めて2ヶ月くらいかかりました。
    一から作ったと言っても、グーグルさんで検索、情報を公開して頂いている数え切れない位の方々に助けてもらったんですが..
    ありがたい時代です。

  • おや、これって記事にされてなかったんですね。
    ホンマ後味爽やかでないというか、後引くというか、
    の作品筆頭候補でございますね。
    『ファーゴ』なんかにも似た殺伐さを感じますな。
    そういや、『ドラゴン・タトゥーの女』っって、本作に
    似た流れですねえ。
     
    遅ればせながら、ブログデザイン変更されたんですね。
    相変わらずクールでヨイです~。
     
    『バンパイア・キッス』知りませんでした。
    気になるわあ…。

Contents