王道西部劇。ただし今回の悪者はエイリアン
■カウボーイ & エイリアン -Cowboys & Aliens-■
2011年/アメリカ/118分
監督:ジョン・ファヴロー
脚本:アレックス・カーツマン、デイモン・リンデロフ、ロベルト・オーチー
原案:ホーク・オストビー他
原作:スコット・ミッチェル・ローゼンバーグ
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影:マシュー・リバティーク
製作:ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード、スティーヴン・スピルバーグ他
出演:
ダニエル・クレイグ(ジェイク・ロネガン)
ハリソン・フォード(ダラーハイド大佐)
オリヴィア・ワイルド(エラ)
サム・ロックウェル(ドク)
アダム・ビーチ(ナット・コロラド)
ポール・ダノ(パーシー・ダラーハイド)
■あらすじ
1873年アリゾナ。荒野で一人目を覚ました男。
記憶は失われ、武器も無く、腹部には大けが。腕には奇妙な腕輪が嵌められていた。
たどりついた小さな町で自分はアウトローとして指名手配されている事を知る。
男のことを知っているような女、「奪った金(きん)を返せ」と詰め寄る町の支配者ダラーハイド。
そしてその夜、突如空に現れた未知なる敵が攻撃を開始した-
実はすごく楽しみにしていたこの映画。
世間での評価はあまりよろしくないみたいだけど、今の時代、珍しいほど単純明快な勧善懲悪ウェスタンとしてみれば最高の出来。
- 男前で銃の腕前ばっちりの主人公
- 謎めいた美女
- 町の実効支配者である南北戦争元大佐
- 支配者に頭の上がらない保安官
- 大佐の一人息子は父親の傘を着た厄介者
- 酒場の主人でもある医者
- 発砲することも厭わない戦う牧師
- 大佐に拾われ育てられたネイティブ・アメリカン
- 徒党を組む無法者たち、列車強盗
- ゴールドラッシュ
とくればわくわくしませんか!?
Contents
監督はジョン・ファヴロー
端役で役者として出発。自分の体験を下に脚本を書き、主演もした『スウィンガーズ』(1996)で成功した。テレビシリーズ(『となりのサインフェルド』、『フレンズ』、『シカゴホープ』、『名探偵モンク』など)、映画作品(『ディープ・インパクト』『リプレイスメント』『デアデビル』など)に出演後、監督した『アイアンマン』(2008)が大ヒット。続編『アイアンマン2』(210)の監督も務め、更に両作で主人公スタークの運転手ハッピー・ホーガン役で出演している。 製作総指揮を務めた『アベンジャーズ』の公開が今年2012年夏に控えている。
アイアンマン、ハルク、マイティ・ソー、キャプテン・アメリカ、ホークアイ、ブラックウィドウ-そうそうたるアメリカンヒーローが一堂に会すスーパーヒーロー映画『アベンジャーズ』の紹介はこちら
記憶を無くした男ジェイク ダニエル・クレイグ
イングランド・チェシャー出身、第6代ジェームズ・ボンドの彼は1992年に『パワー・オブ・ワン』で映画デビュー。『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』(1998)のジョージ・ダイアー役でエディンバラ国際映画祭最優秀演技賞を受賞。その後、アメリカに進出し『トゥームレイダー』(2001)、『ロード・トゥ・パーディション』(2002)に出演。『007』シリーズに出演後も数々の作品に出演し、キャリアを磨き続けている。
今年2012年12月に『007』シリーズ23作目、自身主演3作目『007 スカイフォール』(原題:Skyfall)が公開。
ハリウッド大作出演の合間に名無しの麻薬ディーラーXXXX役で主演したイギリス映画『レイヤー・ケーキ』(2004)。小気味の良いスタイリッシュな犯罪劇が面白い。お勧めです。
町の実力者ダラーハイド大佐 ハリソン・フォード
町の実力者ダラーハイド大佐 ハリソン・フォード
有名すぎて書くことが反対に難しい
出演作はほとんど観てるのに、あまり知らなかった経歴を確認するとたたき上げですね、この人は。
数々の出演作の中でも好きな作品の一つ『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985)。作中でアーミッシュのお手伝いをして家を建てるシーンがあるんです。経歴を見ると「無名時代は、ハリウッド界隈でも腕の良い大工として知られていた」とあり意外な一面を知った。
ハン・ソロ(スター・ウォーズ3作)、インディ・ジョーンズ(インディ・ジョーンズ4作)、ジャック・ライアン(パトリオット・ゲーム、今そこにある危機)と3つもの当たり役を持っている人も珍しいのではないかな。
『ブレードランナー』(1982)も大好きで出たと同時にBlu-rayを買ったものだ。
そんな彼も今年70歳。月日のたつのは早い。
他にもこんな人が
出演者の紹介だけではなんなんで、今回はこれについて調査。
西部劇とは!?
西部劇(せいぶげき)とは Western(ウェスタン)の訳語であり、主にアメリカの西部開拓時代(19世紀、特に後半の1860年代から1890年代にかけて)を舞台にした小説や映画のこと。日本で言えば、時代劇に相当する。
Wikipedia
サイレント映画の登場とともに、アクションを売り物に盛んに製作された。その後、トーキーが普及するとジョン・フォード監督の『駅馬車』(1939)など、アクション映画としての「傑作」と呼ばれる作品が次々と発表された。基本的に主人公は白人で、馬による追跡劇が盛り込まれ、「勧善懲悪」をストーリーの骨子とし、騎兵隊を「善役」、インディアン民族を「悪役」としたものが多い。
15世紀にコロンブスによって新たな大陸として発見。ヨーロッパ諸国による入植が始まる。先住民であるネイティブ・アメリカンと協調・交易したこともあったが、同時に虐殺、追放して彼らの土地を奪うことも伴っていた。
1775年に独立戦争勃発。1783年に「アメリカ合衆国」として正式に独立。
北西インディアン戦争勝利により、1795年に北西部を手に入れる。未開の地であった西部の勢力拡大を目指し、入植時から続いていた先住民との戦争は終わらなかった。
1861年南北戦争勃発。1862年にエイブラハム・リンカーン大統領によって奴隷解放宣言が発表され、1865年に南北戦争は合衆国(北部)の勝利で終結(負けた南部連合国は奴隷制廃止に異を唱えた側)。だが、法の上でのアフリカ系アメリカ人や先住民など、その他の少数民族に対する人種差別はその後も続くことになる。
南北戦争後、鉄道網の発達と共に本格的な西部開拓時代に突入した。
以上が簡単なアメリカの歴史の一部であるが、南北戦争後の「先住民との争い」の時代を軸に描いたものが西部劇だ。本作『カウボーイ & エイリアン』のダラーハイド大佐も南北戦争の英雄として描かれている。
上記の概略を読むにつけ、先住民との争いは虐殺の歴史であるととれる。
しかしアメリカ人にとっては、歴史の浅い国で生きていくための道であり、西部劇で「先住民」を悪として描くことで大義名分を得、アイデンティティーの確立を助けたとも言える。
が、長くは続かない。
娯楽映画の定番だった「西部劇」だが、1960年代に入ると、人権意識の高揚とともにインディアンや黒人の描き方が糾弾されるようになって露骨な「勧善懲悪」な作劇は控えられるようになり、「異民族間の衝突」をテーマにしたものが増えていった。きっかけとなったのは1950年の『折れた矢』の公開からだったが、この動きは、黒人問題を扱ったエリア・カザン監督の『ピンキー』(1949年)がヒットしたことで「人種問題が金になる」と踏んだハリウッド資本の思惑によるものだった。当時、きな臭い黒人問題よりもインディアン問題のほうが映画のネタとしては扱いやすかったのである。
Wikipedia
現在においても西部劇は制作されているが、アクション作品としては過去作品と肩を並べるような傑作を世に送り出していない。黒人やインディアンの描写は、腫れ物にでも触るような扱いとなっている。その一方で、時代考証や衣装設定、ガン・アクションは過去の作品とは比較できないほどの正確さで表現されており、『トゥームストーン』のような娯楽性に富んだアクション映画も作られている。
こうして徐々にすたれていったアメリカの「西部劇」を一時的に救ったのが「マカロニ・ウェスタン」だ。アメリカで客の入りがいいのを見てドイツ、イタリアなどでも製作。
1965年の『荒野の用心棒』が大ヒットすると、アメリカでの仕事が減少していた中堅の西部劇スターが大挙して出演し、盛んにマカロニ・ウェスタンが製作され、一時的に大ブームを引き起こした。しかし、ブームに便乗しただけの駄作も多く、客の支持を失い衰退に向かった。
ということだそうだ。
楽しいことが書ける予定だったのに、こんな事になってしまいました。
「ズキューン、ズキューン」「アワワワワ」の後ろにこんな歴史が隠されていたとは。
主な西部劇一覧
1903
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大列車強盗 (The Great Train Robbery)
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1923
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幌馬車 (The Covered Wagon)
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サイレント映画
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1926
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三悪人 (3 Bad Men)
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ジョン・フォード監督
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1939
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駅馬車 (Stagecoach)
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〃
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1946
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荒野の決闘 (My Darling Clementine)
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〃
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1948
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赤い河 (Red River)
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ハワード・ホークス
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1949
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黄色いリボン (The Wore a Yellow Ribbon)
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ジョン・フォード
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1953
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シェーン(Shane)
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ジョージ・スティーヴンス
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1957
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OK牧場の決闘 (Gunfight at the O.K. Corral)
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ジョン・スタージェス
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1960
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荒野の七人 (The Magnificent Seven)
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〃
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1964
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荒野の用心棒 (A Fistful of Dollars)
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セルジオ・レオーネ
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1971
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レッド・サン (Red Sun)
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テレンス・ヤング
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1990
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ダンス・ウィズ・ウルブズ (Dance with Wolves)
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ケビン・コスナー
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1992
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許されざる者 (Unforgiven)
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クリント・イーストウッド
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2004
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アラモ (The Alamo)
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ジョン・リー・ハンコック
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2007
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3時10分、決断のとき (3:10 to Yuma)
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ジェームズ・マンゴールド
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以上のことを踏まえ、本作『カウボーイ & エイリアン』をもう一度振り返ってみると、敵はエイリアン、先住民は一緒に戦う仲間に描かれており、今の時代に沿った内容と言える。
(これならUSJのアトラクションに出来そうだしね。)
本作を観て「つまら~ん」と評価する人も多いようだが、本作のプロジェクトは1997年から動いていて、色々と大人の事情が見え隠れするあたり、思った以上に重い作品なのかもしれない。
ではまた
「エイリアン」についての考察はこちらの記事で少し書かせてもらっています。
『フォーリング スカイズ』 -Falling Skies-
エイリアンに侵略され軍隊もほぼ壊滅状態になったボストン郊外の町が舞台。わずかに残った軍人、市民達が力を合わせ戦い、生き残る道を模索する-
コメント
コメント一覧 (5件)
カウボーイ&エイリアン
西部開拓時代にエイリアンが攻めてきたら、
と言う内容のSF映画です。
どっかで聞いたことのあるような話だなぁ、
と言う事で、
「カウボーイ&エイリアン」です。
スティーヴン
このスペクタクル活劇をぜひ楽しんでください。
かっこいいカウボーイとエイリアン両方一度にみられますよ!
ご訪問ありがとうございます!
カウボーイ&エイリアン面白そうですね。
今度DVD借りて見てみようかな。
ご訪問ありがとうございます。
>人間同士で争ってる場合じゃねえぞ
そうかもしれませんね。人間の敵はエイリアンじゃなくとも色々あるのに、ってところでしょうか?
(放射能とか、新種ウィルスとか)
この作品自体は何も考えずに単純に楽しめるものなので、ぜひ楽しんでください!
つまんなかったら、、すみません。
まだ観てないですが、観たいと思っていました。
西部劇のバックグラウンドを踏まえると、この映画の企画の出発点は人間同士で争ってる場合じゃねえぞ的なことでしょうかね?
みてみます!