「わたしは生きている」
■アフターライフ -After.Life-■
2009年/アメリカ/104分
監督:アグニェシュカ・ヴォイトヴィッチ=ヴォスルー
脚本:アグニェシュカ・ヴォイトヴィッチ=ヴォスルー、ポール・ヴォスルー
音楽:ポール・ハスリンジャー
撮影:アナスタス・N・ミコス
製作:ビル・パーキンス他
出演:
クリスティーナ・リッチ(アンナ・タイラー)
リーアム・ニーソン(エリオット・ディーコン)
ジャスティン・ロング(ポール・コールマン)
チャンドラー・カンタベリー(ジャック)
アリス・ドラモンド(ハットン夫人)
■あらすじ
最近ギクシャクしている恋人同士の教師アンナと弁護士ポール。
ポールはシカゴへの栄転を機にアンナにプロポーズしようとするが切り出し方が悪く、別れ話と勘違いしたアンナは嵐の中レストランを飛び出し、車で事故を起こしてしまう。
目を覚ましたアンナに話しかけてきたのは葬儀屋ディーコン。
「あなたは事故で死んだので今から葬儀の準備を始める」と伝えられる-
優しくて愛を充分に伝えてくれる恋人がいるのに、心にぽっかりと穴が開いたような目をしたアンナに起こった出来事のお話。
愛していることを上手く伝えられない母親に育てられたアンナ。
子供時代に深く傷つき、親密になればなるほど裏切られ傷つくことを恐れ、恋人に心を開ききることが出来ない。
そんなアンナに クリスティーナ・リッチ
無表情な顔で心情を表すことができる女優さん。
『アダムス・ファミリー』(1991)に出演時は11才。その2年後に両親が離婚し自傷行為に走ったこともあったそうだ。
『バッファロー’66』(1998)、『スリーピー・ホロウ』(1999)、『モンスター』(2003)などに出演し、ただの子役あがりでは無いことを見せつけた。
葬儀屋ディーコン リーアム・ニーソン
数々の出演作があり総じて正義感の強い「いい人」役が多いので、今作では最後まで‘ディーコン’をどう自分で判断すればいいか迷いました。落ちが分かった今でも色々と理由をつけてまだ考えてます。
恋人ポール ジャスティン・ロング
『スペル』(2009)でも同じような不運な恋人役と言われているけど、あまりいじめないでやってください。ジェイク・ジレンホールにもシャイア・ラブーフにもジェシー・アイゼンバーグにもなれずに立ち位置が中途半端になってしまったんでしょう。
自分は大好きなホラー映画『ジーパーズ・クリーパーズ』(2001)の弟役を思い出すことにしています。
こんな人も出ています。
ハットン婦人 アリス・ドラモンド
この人が分かる人はかなりの映画通と太鼓判を押しましょう。
『3人のエンジェル』(1995)に出ていたたくさんのレコードを所蔵しているちょっとおかしなおばあさんです。1929年生まれで『アフターライフ』出演時は80才。お元気そうでなによりです。
この作品の落ちはDVD特典で監督があっさりと暴露されているそうなので、製作側の見解ははっきりしているんだけど、それをすんなり鵜呑みにしないのがあまのじゃくの自分であります。
これは受取り側である観客の自由な権利とも言えるかと。
はたしてアンナは生きているのか、死んでいるのか、生きてるやんやっぱり、あぁ違うやっぱり死んでる、と観ている間のほとんどずっと右往左往。
じゃあ葬儀屋ディーコンとは何者?
天使か、悪魔か、死に神なのか、やっぱりただの「見える」葬儀屋か?
一つ言えるのは、ディーコンが死者に対して愛と敬意を持って接しているということ。
この後はネタバレ入ります。
アンナが子供時代、無償で享受することが出来なかった愛と敬意。
アンナと母親
うまく心を通わすことが出来ない母親と娘が痛々しい。
車椅子の母親にとって自分は「面倒を見る道具」でしかないと感じているアンナ。
本当にそうかな?アンナ。
母親はいつもむっつりして怒ってばかり。
・嵐の夜、アンナを一人で運転させたとしてポールに激高
・娘の亡骸に合わせろと葬儀屋に突撃
・そのうえ「これから誰が自分の面倒を見るのか?死ぬ前にちょっとは考えたのか」と暴言
どうして車椅子に乗ることになったのかは説明されていないけど、それに対しての怒りがふつふつと常に表情にへばりついてる。夫もアンナ以外の子供もいないようなので、アンナだけが頼りなのだろうけど弱々しさは感じられない。強い女性にも思われる。
葬儀屋に娘の髪の色を元に戻すように伝えたり、葬儀での一筋の涙から娘への愛を感じ取ることができる。が、娘には全く伝わっていない。この母親の性格がアンナを死に導いたともいえる。。
もっと他の生き方も出来たのでは?と残念だ。
でもわかるな。人前で女々しいことが言えなかったり、泣くことが出来ないとか。
車椅子の母親にとって自分は「面倒を見る道具」でしかないと感じているアンナ。
本当にそうかな?アンナ。
母親はいつもむっつりして怒ってばかり。
・嵐の夜、アンナを一人で運転させたとしてポールに激高
・娘の亡骸に合わせろと葬儀屋に突撃
・そのうえ「これから誰が自分の面倒を見るのか?死ぬ前にちょっとは考えたのか」と暴言
どうして車椅子に乗ることになったのかは説明されていないけど、それに対しての怒りがふつふつと常に表情にへばりついてる。夫もアンナ以外の子供もいないようなので、アンナだけが頼りなのだろうけど弱々しさは感じられない。強い女性にも思われる。
葬儀屋に娘の髪の色を元に戻すように伝えたり、葬儀での一筋の涙から娘への愛を感じ取ることができる。が、娘には全く伝わっていない。この母親の性格がアンナを死に導いたともいえる。。
もっと他の生き方も出来たのでは?と残念だ。
でもわかるな。人前で女々しいことが言えなかったり、泣くことが出来ないとか。
アンナとポール
付き合い始めの頃は笑顔の可愛い恋人だったのに、最近幸せそうに感じられないと気付いているポール。そこをきちんと話し合わないままプロポーズになだれ込もうとしたのはいいが、切り出し方があまりに不器用。アンナも唐突に想像だけで怒りだしすぎ。そのあたりの短気な子供っぽさがディーコンに目を付けられた理由だな。
幸せはすぐそこのようだが、この二人がこのままではうまく続けられそうにない。
幸せはすぐそこのようだが、この二人がこのままではうまく続けられそうにない。
アンナとディーコン
人に話しかけられても素直に聞く耳を持たないアンナ。癖になっちゃってるんだな。でもアンナが何を言おうが暴れまくろうが、きちんと話をして諭していく大人のディーコン。違う場所で出会えればよかったのに。
ディーコンの教えにアンナはやっと自分と平安を取り戻す。
暴れて言い返して逃げようと画策している時に「生きている」と観客に見せ、大人しくディーコンの話を聞いている時は「死んでいる」と見せる。なんという皮肉。
ディーコンの教えにアンナはやっと自分と平安を取り戻す。
暴れて言い返して逃げようと画策している時に「生きている」と観客に見せ、大人しくディーコンの話を聞いている時は「死んでいる」と見せる。なんという皮肉。
アンナとジャック
アンナにとってのジャックの存在がいまいち分からない。
物語の間に立って助けてくれるかと思いきや、あまりにひどい正体が明かされる。でもひどいのはジャックだけか?学校が終わって母親を一人待つジャックを残して車で去るアンナ。恩師の葬儀に出る時間が迫っているから仕方がないのかと思いきや、美容院で髪を染める時間はあるとか。誘拐事件多発のアメリカでは許されないことなんじゃ?
分からないと言えばジャックの母親も??あれは精神を病んだ母親なのか、それともジャックの正体を知っていてジャックを恐れている人なのか?分からないまま出番は無くなりました。
物語の間に立って助けてくれるかと思いきや、あまりにひどい正体が明かされる。でもひどいのはジャックだけか?学校が終わって母親を一人待つジャックを残して車で去るアンナ。恩師の葬儀に出る時間が迫っているから仕方がないのかと思いきや、美容院で髪を染める時間はあるとか。誘拐事件多発のアメリカでは許されないことなんじゃ?
分からないと言えばジャックの母親も??あれは精神を病んだ母親なのか、それともジャックの正体を知っていてジャックを恐れている人なのか?分からないまま出番は無くなりました。
葬儀屋ディーコンの正体
葬儀屋を兼ねた連続殺人鬼ということだそうだが、
・前もって自らの選択基準に沿った被害者を選ぶ
・被害者の精神状態を観察
・被害者を事故に導き
・いち早くかけつけ仮死状態になる薬を注射
・その後、自宅を兼ねる葬儀社地下室で被害者と対話、そして処置
・自ら墓穴を掘る
・被害者を公明正大に生き埋めに
という、かなりな手間暇をかけて日々過ごしている。
連続殺人鬼にも「秩序型」「無秩序型」として2種類あるが、ディーコンの場合は前者になる。
連続殺人鬼(シリアルキラー)とは!?
シリアルキラー(英:Serial killer serial=連続の、順列の)とは殺害行為を主目的に行う、単独の連続殺人犯(連続殺人事件の犯人)に対して使われる言葉である。
シリアルキラーという単語は、アメリカの連続殺人犯テッド・バンディを表現するために考え出されたものである。元FBI捜査官のロバート・K・レスラーが1984年9月に提唱した。
重度の精神汚染に陥っている連続殺人者はサイコキラーと呼ばれ区別されることもある。また、快楽殺人犯は早期に発覚・逮捕されなかった場合、その性向から連続殺人になりやすい。金銭目的で犯行に及んだ連続殺人犯はシリアルキラーから除外されることもあるが、被害金額が少なかったり拷問殺人が発覚した場合などでは明らかに殺害に主眼が置かれているため、シリアルキラーに含まれる。Wikiより
秩序型とは 事前に犯行計画を練っており、自分の空想を現実にする。その空想は、何年も前から犯人の頭の中で徐々に形作られている。被害者を自分の思うままにするため、謀略によって相手を騙すという手段を取ることが多く、口が達者で人好きがし、被害者を上手に誘い込むだけの高い知能を持っている。
無秩序型とは 被害者を気まぐれに選ぶ。殺す標的が自分にとって殺すのに危険を伴う、状況を思いのままに支配できない相手を選ぶ。被害者の人格には一切の関心を示さない。会話をかわさず、すぐに相手の意識を失わせたり傷を付けたりして人格を抹殺し、人間扱いをしないことが多い。ロバート・K・レスラー著「FBI心理分析官」より
同じ人間なのにどうして自分の快楽(または趣味)のために人を殺し続けられるのか?
これに対しては前述のロバート・K・レスラー他多くの学者、捜査官によって逮捕された連続殺人犯達を調査することで学術的に解明されてきている。
またこれらの研究によって犯人像を分析、推論するプロファイリング技術も確立された。
プロファイリングは映画やドラマにも取り上げられていて今では有名ですね。
この映画のディーコンの怖さは、秩序型連続殺人鬼にありがちな「金髪ですらりとしている」とか「ブルネットでぽっちゃり」とかの外見や性別で被害者を選ぶのではなく、生きている事を楽しんでいない、生ける屍同然の人を選んでいる事。ディーコンが生きる価値なしと判断するや、さくさくと事を起こし被害者を言葉巧みに自ら死んでいると思わせるあたり、ほとんど何かの宗教のよう。
また同類とみるや年齢関係なく後継者としてさっさと確保、教育するのに余念が無いのは、余程重要で無くてはならない仕事だと考えているからだろう。
このことから自分はディーコンを連続殺人鬼というより「死神」と感じたのでした。
そしてエンドロールで流れるのはRadioHeadのExit Music。
『ロミオ&ジュリエット』(1996)と同じエンドロールの曲。
好きな曲だけどここではちょっと違うんでは?
ではまた
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コメント
コメント一覧 (2件)
しろくろShowさん、こんばんは。
TSUTAYAで確認してきたんですけど、この映画、TSUTAYA独占レンタルらしいです。
(未公開ものなんかでは、割とあるみたいです。)
私もTSUTAYAでレンタルしたんですけど、実店舗じゃなくてTSUTAYA DISCASの方です。
最新作、旧作関係なく月980円で4枚レンタルできて返却期限無し、4枚レンタルできない分は翌月に繰り越せるので結構オススメです。(決して回し者じゃないですよ。)
ホラーモノがわんさかあるので、私のレンタル候補はホラーがずらりと何ページも載ってます。へへ
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この映画みたいな色々に解釈出来る系好きなんです。一粒で何回も美味しいみたいな。
賛否両論あるみたいですけど、私は面白かったです。
出演者もいいですよね。ぜひ観られてブログに感想をアップしてくださいね。楽しみにしています。
あ、それと『ジーパーズ・クリーパーズ』のお姉ちゃんはご指摘通り『アリー・myラブ』のサンディーだそうです。
こんばんは。思いっきり未見の映画ですがコレ見たいなあ・・・ぼくはどちらかというとテレビ(だいたいBSで)>レンタル派の人なので人が見ている映画になかなか辿り着けない傾向が強いんですけど、久しぶりにショップに行こうかなと思いました(ド田舎の店なのでたぶん置いてないと思うんですけど・・・ちなみにこの近隣にTSUTAYAはありません(×_×))
これネタも好きだし出てる人もみんな好きな役者だし(ジャスティン・ロングはなぜかこちらが見ているモノに勝手に出てくる(?)ヤツだと思っているウチに憶えてしまった兄ちゃんでした。最初は「エド/ボーリング弁護士」でそのあと僕も「ジーパーズ・クリーパーズ」で(^_^;) 確かあのお姉ちゃん役のコは「アリー」に出てた人でしたっけ??)
ともかくショップ行ったら眼を皿のようにして探してきます。