The Mist_04s
久しぶりに観たけれど、これは面白い。救いのないラストも(かわいそうだけど)最高。それと今回新たな発見があった。なんとあのアメリカドラマに・・・
 
The Mist_00
■ミスト – The Mist -■
2007年/アメリカ/125分
監督・脚本:フランク・ダラボン
原作:スティーヴン・キング「霧」
製作:フランク・ダラボン 他
制作総指揮:リチャード・サパースタイン 他
撮影:ロン・シュミット
音楽:マーク・アイシャム
出演:
トーマス・ジェーン(デヴィッド・ドレイトン)
ネイサン・ギャンブル(ビリー・ドレイトン)
マーシャ・ゲイ・ハーデン(ミセス・カーモディ)
ローリー・ホールデン(アマンダ・ダンフリー)
アンドレ・ブラウアー(ブレント・ノートン)
トビー・ジョーンズ(オリー・ウィークス)
ジェフリー・デマン(ダン・ミラー)
フランシス・スターンハーゲン(アイリーン・レプラー)
ウィリアム・サドラー(ジム・グロンディン)
アレクサ・ダヴァロス(サリー)
メリッサ・マクブライド(家に子供を残してきた女性)
   
解説:
原作者スティーヴン・キングとフランク・ダラボン監督が「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」に続いてコンビを組んだ驚愕のホラー・ミステリー。人々が突然町を包み込んだ濃い霧とその中にうごめく不気味な生物たちの恐怖でパニックに陥っていくさまを描く。主演は「パニッシャー」のトーマス・ジェーン。
 (allcinema)
 
あらすじ:
ひどい嵐の翌日、湖畔に建つ自宅の補修材料を買いにスーパーマーケットへ出かけたデヴィッドと息子ビリー。スーパーに着いてほどなく湖に出ていた霧は次第に町を覆い始める。濃い霧の中、けたたましいサイレンを鳴らしながら猛スピードで一方向に走って行くパトカーや軍車両に、不安を隠せなくなっていくスーパーの客達。そしてデヴィッドは霧の中に得体の知れない生物の存在を発見する-

 


ジョン・カーペンター監督の『ザ・フォッグ(1980)』というホラー映画があるけれど、こちらはスティーヴン・キング原作「」の映画化。同じく濃い霧に隠れて得体の知れない人間の敵がじわ~っとやって来る。ある意味どちらも人災ではあるのだけれど。
 
The Mist_21主人公は郊外に住むデヴィッド。映画作品のポスターなどを手がける画家である。冒頭、彼はアトリエで西部劇作品のポスターを絵筆で描いている。外はひどい嵐で、思わず家族と一緒にその様子を呆然と眺めるが、この時の外の景色が、窓枠を額縁に見立てたキャンパスの絵のようで目を引く。
ひどい嵐も収まり、翌朝には空は晴れ渡ったが、自宅裏の湖にやけに分厚い霧が立ちこめていた。自宅に被害が出たデヴィッドは補修材料を買うため息子を連れてスーパーに。道中、たくさんの軍関係車両と出くわした彼。そして物語が始まる。
 
The Mist_05-2スーパーは同じく補修材料や備蓄食糧の買い出しをする人々でごった返していた。その頃には湖の霧が町全体を覆っていたが彼らは何も気付かない。そして前の道をけたたましいサイレンを鳴らしながら猛スピードで一方向に走って行くパトカーや軍車両。ここに来て、人々はこの町で何かが起きているのではないかと思い始める。軍のMP(憲兵)がやって来てスーパーを出るなと指示を出され、不安は確信になるが、まだ何が起きているのか情報はない。霧は重く立ちこめスーパーの外は真っ白で10cm先も見えないほどだ。
そこに何かに襲われたと血を流して走り込んできた町の住人ダン。そしてデヴィッドは売り場裏にある倉庫で奇妙なうなり声と、外からシャッターがたわむほどの力で全体を押している「何か」の存在に気がつく。
そして第一の犠牲者が―。
 
ミステリーな感じで始まる冒頭。
まだ何も情報がない状態で、どうしていいか分からず同じ方向を見ている人々。が、すぐにそれぞれの考え方や環境から自然とグループが出来てくる。
 1.家に幼い子供を置いてきたからすぐに帰りたいと訴える母親
 2.外に危険な生き物がいるからと防衛手段をとる現実的なグループ
 3.バカなことは信じられないと、救援を求めにスーパーを出ようとするグループ
 4.これらは神が与えた罰だと言い出す狂信者
 5.どのグループに所属するかを迷う人々
 
The Mist_15普通なら1や3のグループがまともだと思えるが、これはキング原作。霧の中には恐ろしい怪物がうごめいていた。
それは1と3のグループがスーパーを出てすぐに姿を現した。最初は巨大なイナゴのような昆虫。ここで4の狂信者は自分の考えが正しかったと確信する(※悪魔は大量のイナゴと共に現れるという話がある)。
巨大な触手も目撃している2のグループはとにかく安全に立てこもれる防衛手段をとる。迷っていた人々もここに。
観ているこちらも、何やら軍の秘密計画が関係しているぐらいの情報しかないから、もしかして生物実験の結果、ある種の生物の巨大化が成功して、それが逃げ出したのか?くらいに思っていた。
しかし、次に現れた謎の生き物を見て、これは一体どういうことか?と考えはじめる。
 
その生き物とは・・・
The Mist_23
 
The Mist_28イナゴを補食しに現れたこの生き物は、最初は巨大コウモリかと思ったが、ようく見ると醜悪でいやらしい小さな悪魔の姿をしている。窓ガラスを割って入ってきたイナゴとこの小悪魔に人々は逃げ惑い、あるいは戦う。そんな中、震えながらも喜んでいる女が一人。狂信者だ。
この女カーモディさんは聖書の言葉を唱え、人々を厄災から助けるようなことを言っているように聞こえるが、その実は他人のことなどどうでもよくて、自分のその行いで自分だけが神の元へ幸福に召されることを望んでいる。そんな彼女に一人、また一人と加わって巨大なグループになっていく。最後にはデヴィッド達のグループ2がマイノリティに。カーモディさんのグループ4は生け贄さえ求めるようになって、それはまるで『サイレントヒル(2006)』のあのおばさんのよう。
この小さなスーパーの外に命をおびやかす謎の生物が跋扈しているというのに、中では人間同士が争う。スーパーの従業員オリーが冷静に言っていた。
「人間が2人いれば最後には殺し合いになる。だから政治と宗教がある」と。
そんなはずがない、と訴えていた善意の人アマンダも最後には信じざるを得なくなった。
 
極限状態の中で対立する2つのグループ。しかし本当の敵は外にいる。スーパーだから豊富にある食糧もやがてそこを付くだろう。助かるためには一体どうすればいいのか―


 
異次元の世界から突如現れた謎の怪物。・・あれ?
そうなんですよ。最近観てどっぷりハマっている『パシフィック・リム』と設定が同じだー!こちらでは人類はすぐに諍いや争いはやめて世界が一つになり巨大ロボットを建設し戦うことを決めたが、それはあくまでも軍もしくは組織視点のお話。反対に本作は普通の人々が警察にも軍にも連絡が取れない孤立した状況で、人はどういう風に対処していくか、というストーリー。
The Mist_22どのグループにもそれぞれ言い分があり、間違ってはいないのかもしれない。初めての事態なのだから結果を予測するのも難しい。狂信者が唱える呪文にかかってしまう人々もいるだろう。自分がその場にいたとして、狂信者グループには入らないモン!という絶対的な自信はない..
それにしても悲しいのは、行動を起こせば起こすほど悪い方向に向かっていってしまったグループのあること。これはもう運としか言えない結果であって、自分であっても一番に付いていくとすればこのグループになるだろうと思う。
それにしても痛ましいラストだ。
このラストは原作者キングが絶賛したということらしいが、原作「霧」では終わり方がかなり違う。というより途中で終わっていて、人々が結局どうなったのかは書かれていない。
 
The Walking Dead_1そして今回久しぶりに観て発見し、一人おぉーっと喜んでいたのは何人かの役者さんがあの「ウォーキング・デッド(TV/2010-)」にも出演していること。役柄まで同じような感じなので調べてみると、本作の監督フランク・ダラボンが企画したドラマではないか!(とは言え途中からゾンビものと言うよりも、うだうだした人間ドラマになってきたので、シーズン2の途中までしか観ていないんだけども)
 
そんな中でも本作アマンダ役ローリー・ホールデンは、これもまた大好きな『サイレントヒル』の時の面影が強い。かっこよかったですよねー、警官役が。

The Mist_24
スティーヴン・キング原作の映画化はものすごい数があるけれど、本作は自分の中でTOP5に入るほど好きですねー。
ではまた
 

■主なスティーヴン・キング原作の映画化作品
 ・キャリー Carrie (1976年)
 ・シャイニング The Shining (1980年)
 ・クリープショー Creepshow (1982年)
 ・クジョー Cujo (1983年)
 ・デッドゾーン The Dead Zone (1983年)
 ・クリスティーン Christine (1983年)
 ・チルドレン・オブ・ザ・コーン Children of the Corn (1984年)
 ・炎の少女チャーリー Firestarter (1984年)
 ・死霊の牙 Silver Bullet (1985年)
 ・スタンド・バイ・ミー Stand by Me (1986年)
 ・クリープショー2/怨霊 Creepshow 2 (1987年)
 ・ペット・セメタリー Pet Sematary (1989年)
 ・フロム・ザ・ダークサイド/3つの闇の物語 Tales from the Darkside: The Movie (1990年)
 ・地下室の悪夢 Graveyard Shift (1990年)
 ・ミザリー Misery (1990年)
 ・スリープウォーカーズ Sleepwalkers (1992年)
 ・ダーク・ハーフ The Dark Half (1993年)
 ・ニードフル・シングス Needful Things (1994年)
 ・ショーシャンクの空に The Shawshank Redemption (1994年)
 ・マングラー The Mangler (1995年)
 ・黙秘 Dolores Claiborne (1995年)
 ・スティーヴン・キング/痩せゆく男 Thinner (1996年)
 ・ゴールデンボーイ Apt Pupil (1998年)
 ・グリーンマイル The Green Mile (1999年)
 ・ドリームキャッチャー Dreamcatcher (2003年)
 ・シークレット ウインドウ Secret Window (2004年)
 ・ライディング・ザ・ブレット Riding the Bullet (2004年)
 ・1408号室 1408 (2007年)
 ・ミスト The Mist (2007年)
 ・ドランのキャデラック Dolan’s Cadillac (2009年)
 ・キャリー Carrie (2013年)
(Wiki:スティーヴン・キング)

 

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コメント

コメント一覧 (12件)

  • そうですよね!悪い彼はこれが初めてだったかも。
    最近は迷走しているようにも見えるモーガン・フリーマンですが、とても楽しそうではありますねー。
     
    >可変グリッドのレイアウト
    私はMysticDiaryさんが作られたものをお借りしているんですが、いつか自分で一から作りたい..と妄想中です^^;

  • こんちゃ、momorexさん。
    そーそー、巨大な玉っていうかクリッター(86年の映画)みたいなのが出てくるやつです。
     
    ドリームキャッチャー、これも結構楽しい映画でしたね。この映画に出るまではあまり観れなかったモーガン・フリーマンの冷酷さにドキッとしましたね。
     
    話変わりますけど、可変グリッドのレイアウトっていいですね。ジャケットが沢山表示できていい雰囲気です。ただ自分で導入するのがチト難しいけど・・・。でわでわー。

  • それにしても酷い結末。「絶望」とはこのラストのためにある言葉のようです。
     
    改めて、キングの映画化作品の多さに驚きますねー。皆さんのオススメが少しずつ違うところも面白いです。
    『ランゴリアーズ』って、空港で巨大な玉が飛び交うやつですよね?あれも面白かったですねー。私はあまり評判のよろしくない『ドリームキャッチャー』も案外好きです。

  • こんばんは、momorex さん。
    原作を読んでから観ましたけど、キング特有の話を謎のまま終わらせる締まりのなさが解消されていたラストが印象的でした。なんともいえない失望感と喪失感があって。
     
    個人的にキング原作で面白かったのはコレとミザリー、黙秘、ニードフルシングス、ランゴリアーズかなぁ。ダラボンにはまたキング原作を映画化して欲しいですね。でわでわー。

  • これでもか、というほどの緊張状態をずっと続けて、それでも最後はそれなりにハッピーエンドになるんだろうと思いきや、あのラストです。一緒に観ていた全員が「ぅ、わぁ~~~~[絵文字:i-182]」と声をあげたのは言うまでもありません。
    確かに霧は晴れていきましたが、、あの人は死ぬまで霧の中ですね、きっと。悲惨で壮絶です。
     
    あっ、「クジョー」が入ってますね。
    観たのは随分前で記憶が曖昧ですが、ふじつぼだんきさんオススメなんですね。メモメモ

  • コレはいい出来でしたねえ。シーン的にも人間関係的にも
    ずーっと重苦しくて、最後はどうやって晴れ渡らせるのか
    と思ってたら、さらに衝撃のラストが待っていたとは…。
    いやー、結構後引きましたよ。あと何分か早ければ…。
     
    キング原作もの、『キャリー』、『ミザリー』、『クジョー』、
    『痩せゆく男』辺りが良かったかなあ。というか、考えて
    みれば原作どうこうより、映画として良かったんですね。

  • 映画『ミスト』は人気ある作品ですね。
    皆さんオススメの『デッドゾーン』まだ観たことがないんです。
    (一度レンタルしたんですけど時間が取れなくて、観ずに返したことが..)
     
    キングの映画化作品は結構酷評されている事が多いですが、こうしてみると全体的にはそう悪くないんじゃ、、と思っています。
    makiさんがお好きな『黙秘』もいい映画だったと記憶しています。
    最近CSでキング映画の放送が多いのは2013年版『キャリー』があるからかな。

  • 原作は読んでいないのですが、それほど違ったんですねぇ…
     
    映画のこのラストは衝撃的でかつ、
    激しい悔しさと絶望感が襲ってきますよね
    小さい世界の縮図というのもあっていると思います
    また救済を求める信者たちの一団は実にアメリカらしいと思います
     
    わたしは
    「ミザリー」「キャリー」「痩せゆく男」
    「デッドゾーン」「黙秘」あたりが好きですかねー

  • 私はこの原作は映画を観てから読んだんです。ショッキングなラストが頭にこびり付いた状態だったので、読んでから観ればよかったと思ったことを覚えています。
    仕事の都合で映画館に足を運ぶことが出来なかった時代は、観たい映画の原作をよく読んだものですが、読んだものは愛着がわくし、いざ映画になった時の楽しみもひとしおですね。
     
    全部観たわけではないのですが、「シャイニング」「キャリー」「グリーンマイル」「ミザリー」「1408号室」「スタンド・バイ・ミー」あたりが好きです。放送していたら観てしまいます。
    あっ、5本以上ありますね[絵文字:i-179]

  • ミスト

    これはなかなか凄い。SFミステリーと思いきや人間心理ものでした
    襲ってきた怪物は物語の中心ではなく、観客である私たちは、1つのこの事件におけるバッドエンドの部分を見せら

  • ミスト 【映画】

    原作スティーヴン・キングの映画です。
     
    観た印象から言うと、SFホラーって感じですか。
     
    原作の小説ではラストが違うらしいのですが、
    アチキは小説を読んでいないので分かりませ…

  • こんばんは、キング大好きなしろくろです。
     
    考えてみたら「霧」の翻訳版出たのってかなり前でしたよね。早川の「闇の展覧会」に収録されたのが先だったか、サンケイ文庫の方が先だったかもはや覚えてないくらいですけど(ーー;) この遅れてきた映画版は意外なビジュアルになってて面白かったなって記憶がありますし、momorexさんが書いておられるとおり最後全然原作と違ってたんで驚きました(@@;)
     
    基本キング原作の映画化に当たりはほぼナシと思っていますが、ワタシの場合は「シャイニング」「デッドゾーン」「キャリー」「ショーシャンク」「グリーンマイル」と来てその次くらいにコレはマイベストキング映画化に入ります。で、次点が「クリープショー」かなと。
     
    マイワーストはキング自らが監督した「地獄のデビルトラック」ですね(__;)

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